死に溢れるこの世界で

時宮時空

第十一話 真犯人

「おい、沖田。どうする?」
石原は犯人と思わしき男を確保し言った。

「いつもどおり確保でいいと思います」
沖田がはっきり言った。

「署まで連行する。付いて来い」
石原は男を立たせ車まで向かう。

 爆発が起きた。窓がわれガラスが石原達めがけ降り注ぐ。
「やべッ!!逃げるぞ!!」
石原は男を前方に押し出し走る。

「わわ分かりました!!」
沖田の声は裏返った。走り出したかと思えば、転んだ。

「何してる!!」
石原は男を押しながら走った。

「い、いい、いいい石原警部ぅう!!」
沖田が情けない声で叫ぶ。

「なんだ!走れ!」

「違います!違いますって言うかそのー....とにかく、学校が崩壊しています!!」

「何ッ!?」
石原は学校を見上げる。それにつられて男も見上げる。

「やべえな.....」
校舎がどんどん崩れていく。

 石原たちは校舎のがれきを受けないところまで逃げた。
「なんとか、逃げ切れたな」
息を切らしながら言う。

「石原警部、はぁ、はぁ、どうしますか?はぁ、はぁ、」

「まずは署まで....だが車がねえな....まさか!」

「そのまさかだよ。車は校舎の瓦礫で潰されたさ、刑事さん」
男がにやりと笑っていった。
石原も沖田もその場で立っていることしかできなかった。



 校舎内は地獄のような光景だった。叫び声、泣き声、爆発音.....逃げる場所を失いその場で呆然と立ち尽くしている人、諦めてしゃがんでいる人....
 校舎は爆発の衝撃で二階、三階が崩壊した。だるま落としのように四階も落ちて崩壊する。

「爆発源を探せ!!」
SMUの隊長らしき男が言う。それに続けて隊員が「はいっ!!」と返事を返す。
 爆発によって割れたガラスの破片や、爆発によって誘い出された火災。階段は逃げる人で埋め尽くされていた。何よりも恐ろしいのは爆発よりも逃げる際に転んでしまった人も気にせずに"道"として通ることだった。

「二階職員室の破損がひどいです!」

「分かった!」
SMUは職員室へ行く。
その破壊用はひどいものであった。職員室は跡形も無く消えている。<職員室>と言う看板だけが残っていた。

「おそらく爆破もとはここだな....」
瓦礫の下に足が見えた。

「人がいるのか!?大丈夫か!?いるなら返事をしろ!今助ける!!」
瓦礫をどかす。そこには、瓦礫によって潰された死体があった。

「くっ....遅かったか....」
気持ちを切り替え身元判定のため救出しようとするが再度爆発が起きる。

「ぐわぁああ!!」
SMUの隊員たちが爆風に煽られ吹き飛ぶ。

「くそぉおお!」
隊員たちの声は爆音でかき消されてしまった。



「貴様ッ....なぜだ?なぜ読めない...?」
え?心を読めない...?

「何、俺の正体を知ることもいらんだろう」

「まさかお前...倭界の人間ではないな...?」

「さすがだな、倭界の者は。俺は倭界じゃないからな。君には読めんだろう」

「倭界じゃないんなら...どこだ...?」

「分からないのか?倭界でなかったらあとはどこだ?」
こいつらはさっきから何を話しているんだ?

「すまないヒロト君。何はなしてるか分からなかったな。これは君には関係ないことだ」
倭界だの違うだのなんなんだ?一体?

「簡単には神の領域に入った話だ。君は神ではないだろう?だから話しても分からないんだ」

「つまり、黒男は神だってことか・・・?」

「一般的には―だ。まあ、俺は特殊能力を持ってるということを見れば只者では無いとは分かったろう。今は明かさないがこの心を読むこいつは倭界の神だ」

「そんな......黒男が神だったなんて.....そんなことより、大和は!?」

「もう、手遅れだ。見ろ、この敵の数」
黒男はそう言って周りを見渡した。
いつの間にか四方八方を敵に囲まれていた。まさに、四面楚歌だ。
この状況をどう切り抜けるか.....

「残念だが、大和は諦めろ。時空間術で現世に戻る」

「嫌だ!!絶対に大和を助けたいんだ!!だって....だってまだ、もっと遊びたいし未来もあるじゃないか!!」

「俺はお前を手術した理由はそれではない。別の目的があっての手術だったのに、いまや黄泉路にいる。もう、ここまで来たら引き返せなぇな。現世で本当のことを伝える」
黒男はそういうと時空を歪めた。
黄泉路にいる者たちは驚きで目を丸くしている。
 ヒロトは、その歪みに飲み込まれ、一瞬で現世に戻った。

「ヒロト、君には彼女がいただろう?彼女との時間を優先させるのか、それとももう"死んだ"大和を助けようと―絶対に助けられるわけではないのに―するのか?」
もう、"死んだ"なんて.....

「俺は.....彼女との時間も....大和との時間も....どっちも、同じくらいに大切なんだ!!」

「じゃあ、彼女を助けるほうを優先しろ!!」
黒男の眼は見えないが、なぜか悲しみの感情が受け取れた。

「ああして黄泉にいる時間も、現世の時間は進んでいる。多少なりとも時差はあるが今生きている彼女を助けるほうがいいんじゃないのか?」
黒男は優しく、そう言った。
するとそこに、3人の男が来た。

「お前、こいつに何をした!」
なんだか誤解されてそう



あとがき
すごい長くなってしまいました。久しぶりの更新です。はい。
このお話の次はちょっとグロテスクな表現が入ってきますのでお気をつけを。
まだ、この学校のお話は続きます。

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