お嬢様は軍師様!
お嬢様 平穏に過ごす 7 イーゼスside
とりあえず、クロームと執務室から誰もいない所まで移動をした。
もし討伐での出来事であれば、執務室で話をすると、とても危険だからだ。
下手をしてヴィクトリア領の軍事力が国にバレる可能性がある。
『用件はなんだ。事と次第によっては容赦はしない。』
『・・・これを見せれば会えると聞いて。』
そう言って見せられたのは、銀製で作られた鈴。
しかし、ただの鈴ではない。
クロームが手にしているのは、鳥が描かれている。
(これはフェイの・・。)
『この鈴をイーゼス様に見せれば、そちら側に行けるとフェイさんが言っていました。』
『フェイが・・・。』 
『お願いします!軍師様に会いたいのです!』
クロームはそう言って勢いよく頭を下げた。
 相手の声を聞くだけで、彼が必死であることが、よくわかる。
それに、名だたる騎士貴族が頭を下げるなんて、よほどのことだなぁと思った。
セイント王国の騎士は、自分のプライドが高く、頭を下げるのは王族や自分の師など目上の人にしか、頭を下げないからだ。
例え助けてもらっても、相手が平民などであれば頭を下げることなどしない。
現に討伐の時、ハロルド隊長達はロンに対して頭を下げなかった。
しかし今、目の前にいるクロームは、軍師様に会いたいが為に、誇りやプライドを捨てるとは。
そうまでして、うちの軍師・・いやリアに会いたいのか?
もしそうだとしたら、その理由は・・・。
だめだ、ここで考えても何もわからない。
一度、フェイに会わせる必要があるな。
『すまないが、一緒に着いてきてもらえるか?』
『わかりました。』
もしかしフェイなら何か知っているかもしれない。 
とりあえず、クロームを連れて商会へ行こう。
******
「最初は気になっただけでした。でも再び会った時、私の手を見て微笑んだ彼女の顔。」
「「・・・・。」」
商会の地下にある訓練場で休憩をとっている間、クロームに何故軍師に会いたいか理由を聞いてみた。
予想としては、純粋に強くなりたい。
もしくは、傘下になる。
そんな感じかなと思っていたが・・・。
「多分、私はあの瞬間から軍師様の事が好きになったのかなと思います。」
聞いた事を後悔した。
まさか、野郎の恋愛話を聞くとは思わなかった。
しかも、その相手は、我が妹(アメリア)。
クロームは軍師=リアだとは気付いていないが、兄として、このような話を聞くと複雑な気持ちになる。
喜ぶべきなのか、それとも寂しい気持ちになるのか。
ちらりと他の2人を見るとロンは何も言うこともなく、ただニッコリと見守っているような顔でいるし、あのフェイだって笑顔が張り付いたような顔をしていた。
「イーゼス様の身内を片っ端から会えば、誰が軍師様なのか分かるかと思うのですが、ダメですか?」
「はぁ??」
急に何を言い出すんだこいつは。
質問の意味を理解できずポカンとするしかなかった。
「ダメ・・・ですか?」
「イヤイヤイヤ。ダメとかじゃなくてだなぁ・・・。」
「では、会わせてくれますか?」
「それは・・・。」
正直、どう言えばいいのか分からない。
クロームがリアに会いたい気持ちは、嫌と言うほど理解は出来た。
ただ、会わせていいものか。
いや、俺からリアに会わせたくはない。
と言うよりも関わりたくもない。
人の恋愛に首を突っ込むと、絶対に録な事がないからだ。
学園でも嫌と見たのではないか。
そして、巻き込まれたことも。
「・・・学園にいるから自分で捜してくれ。」 
「はい、頑張ります!ロンさん、稽古をお願いします!」
「あ・・・はい。」
(リア、すまない・・・。俺はどうしても人の恋愛には関わりたくはないのだ!!)
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