お嬢様は軍師様!

葉月 飛鳥

お嬢様 幼少期に攻略対象と出会う6

「すまない・・・。」 

クロームが頭を下げる。
(はぁぁっっっ??何で謝ってくる??てっきり『無礼者!』とか言ってくると思ってたのにーーー!!)

突然の謝罪にアメリアは頭を抱えてしまいそうになる。
予想では、アメリアの言葉に対して、クロームが反論、そしてさっさとセイント王国に帰って、こっちもこの場から去って終了だと思ってたはずなのに・・・。

「貴方の言葉に目が覚めました。」

予想外の事が起こりました。
まさか謝ってくるとは、誰も思っていないらしく、クロームの後ろにいたオーガスタとセバスは、クロームを止めようとてを出したまま固まっていて、アメリア側もバエイとロン同じように固まっていた。
フェイは、顔を真っ青になり後退りしている。

「貴方は国民の為に戦ってくれたと言うのに、私は貴方を侮辱をしました。現実を見ていない愚か者です。自分自身を恥じています。」

クロームはそう言って顔を上げると、皆の顔が何故か青くなっている。
しかも一名、若干後退りをしていた。

(何かあったのだろうか・・・。)

目の前の少年も、周りの皆も何も言ってこないので、一瞬不思議に思う。
だが、思っただけで気にしないことにした。
・・・この空気になったのは原因は、自分だと気付くはずもない。

その空気のまま、今度は跪く。
今、口にしなければ後悔をするだろう。
軽く息を吸った後、相手や周りに聞こえるようにはっきりと口にだした。

「もしよろしければ、貴方の側にいたいのですがお願い出来ませんか?」

バキッッッッ!!

そう伝えた瞬間、視界は一瞬で地面となり、そのまま倒れこんだ。

(しまった・・・)
やってしまったのが後の祭り。
アメリアはクロームをおもいっきり殴ってしまった。
周りはあんなセリフをぶっ混んできたクロームに対してなのか、私がおもいっきり殴ってしまったことなのがどうかわからないが、皆どのように切り出せばいいのかシーンとしている。
この空気を作ってしまった当事者としては早くこの場から去りたいのが、本音。
右手グーパンチを振り下ろしたポーズのまま固まってしまう。

(つい・・・殴ってしまった。いや・・・・でも、あんなことを言われたら殴りたくもなるでしょ!)

ゲームの攻略対象キャラで、黒髪短髪のイケメン騎士。おまけに真面目の性格だからセリフも直球でくる。
イベントの告白シーンなんて顔が度アップでくるもんだから、胸をドキドキしながらやったもんだ。
それが!それがですよ!
今!私の目の前でひざまづき、真顔で言ってきたのですよ!
し・か・も!皆様がいる前で!
殴りたくもなるでしょ!
殴ってしまった私がいうのもなんですが。

「セバス殿。早く城に戻らねばならぬと思いますので、失礼と思いますが、我らはここでおいとまいたす。」
「はっ・・・わかりもうした。助力して頂きありがとうございます。」

アメリアがどうようにして去ろうかと考えている中、バエイが切りだしてきた。
セバスもバエイの言葉に同意する。
(流石バエイ!ちゃっちゃとまとめてくれて助かったわぁー。)
アメリアは心の中でガッツポーズをしながらこの場から去ろうと、体をくるっと翻し歩き進めた。
フェイやロンもアメリアに続き、後で待機をしているであろう部下の兵士達のところまで向かい歩き始めた。

「せめて、お名前だけでもお聞かせ頂きませんか?」

倒れたクロームを肩に担ぎ上げ、セバスがアメリアに向かって聞いてきた。
セバスにとっては自分の命だけでなく、王太子であるオーガスタの命を助けた恩人であるため是非とも名前を聞き出したいと言う。
しかしここでアメリアの名をだせば、せっかく婚約をしないようにとセバス達を助けたのに、逆に助けた恩の為婚約者になりそうだと思うから断固として名を伝えるつもりもない。
でも、言わないのであれば言わないで、セバスが、はいサヨナラとこの場からさることなどしないと思う。

「私は・・・。」

バエイ達もじっとアメリアを見る。
セバスの問いにどう答えるか気になっているよう。

「私は、軍師様です。」

そう言うとアメリア達はセバスの視界から消え去った。

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