貧乏だけど、ハイスペックです!

上川 竜也

4話 と思ったけど、やっぱり運命?

あの子にかっこつけてああは言ってみたものの、


実際のところ、今日が借金の返済期限なんだよね。


これ、過ぎたらどうなるんだろうか。


「はぁ〜……」


不安だけを募らせながら、僕はまた、


寒空の下、路上を歩く。


「君が神崎 誠也君、だよね?」


そんな時、


目の前に現れたのは黒いスーツを


身にまとっている巨漢だった。


僕は彼が借金取りだなんて露知らず、


「はい、そうですけど?あの、何か?」


我ながらまあバカだと思う。


巨漢は僕が標的ターゲットだとわかるとすぐに、


「えー、私は黒田くろだ正規せいき


賭博社ギャンブルカンパニーから派遣され、


借金5億100万円を頂戴しに参りました」


不気味な営業スマイルで、見た目とは裏腹に


うやうやしい礼をする。


「へ、へえ。そうでしたか。因みに、


もし、仮にその借金を今返済できないとなると


僕ってどうなっちゃうんでしょうか〜?」


巨漢の彼がバカなのかあるいは


人を信じて疑わないタチなのかはさておき、


こちらの真意に気づくことなく、


「ほう、仮にそのようなことがございましたら、


責任を持って我ら賭博社ギャンブルカンパニー


が……」


固唾を飲んで次の言葉を待つ。


一体、賭博社ギャンブルカンパニー


何だと言うのだろうか。


「抹殺致したます。」


刹那、意味がわからなかった。


刹那、考えるよりも先に体が動いた。


それはまさに本能。


下手をすると、


反射よりも早かったのではないだろうか。


ぼくは、全速力で足を回していた。


そうではあったのだが……


「お客様?どちらへ行かれるので?」


なんと目の前にはついさっきまで後ろにいたはずの、


巨漢が鬼のような形相で立っていた。


先ほどの不気味な営業スマイルも


身が震えるほどのものだったが、


そんなものとは比べものにならない。


ただひたすらに恐怖した。


全身の毛穴という毛穴から汗が噴き出しそうだ。


それくらい暑かった。


イヴの寒空の下だというのにもかかわらず、


ただただ暑かった。いや、熱かった。


そう、その巨漢の男がまるで炎でも

まとっているかのように。


「……まさかとは思いますが……借金を返済できない、


なんてことは、ございませんよね?」


まずいまずいまずい……どうする。


どうすればこの状況を打開できる。


いや、もうむしろ正直に打ち明けて事情を説明して、


情に垂れるか?


否、それは不可能だろう。


そんなことで許されるほどの額ではない。


ならばこの場でこの巨漢を倒すか。


いや、とてもじゃないが敵いそうもない。


そもそも、それでは向こうも応援を呼び、


とうとう絶体絶命だろう。


では、どうするか。ひとまず、


応えなければ話にならない。返答を最優先しよう。


「い、嫌だなあ。そんなわけないじゃないですか〜。


きちんとお返ししますよ〜。


5億100万円……僕を捕まえられたら、


の話ですけどね!」


やはりこれしかない。


全力でダッシュだ。足を回せ。地を駆けろ。


僕は馬だ。


僕は馬だ。


いや、僕はこの地球上で今、最も速い!


思い込む力とはこんなにもありえない効果を


生むのであろうか。


気がつけばそこには巨漢の姿はない。


どころか……どこだここ。まるで知らない。


すると、


「ん?おお!お前はこの前の!えーと……ドアホウ!」


相変わらず、はっちゃけてるなあ……と思いつつ、


僕はクスリと笑う。


「そういえば、お互いまだ名乗ってなかったよね。


僕は神崎かんざき誠也せいや


ついさっきまで借金取りに追われてた


身寄りのないただの貧乏人さ」


ってなんで僕はついさっきまでのありえない境遇の話を


してるんだよ!うわぁ、すごくカッコわるー……。


「えっ!そうなのか!それは大変だったであろう?


あっ、私の名だな!


私は、さくら風子ふうこという!


母が風の子のように元気に、


という意味を込めて名付けたらしいのだ」


うわあ、なんだか名前の通りの子だなあ……。


「そうなんだ!それはそれは、


さぞ聡明なお母様なんだろうね」


一瞬、時が止まったかのように静かに思えた。


「……あぁ、そうだな……」


彼女、さくら風子ふうこのその笑顔は、


どこか悲しげで、


しかし僕の知ってる彼女の笑顔そのものにも見えた。


それは、本当に、美しかった。






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コメント

  • 上川 竜也

    unknown @がんばらないさん。
    こんな自分の作品を読んでくださった上に、面白いと言う評価をしてくださり、心より感謝いたします。
    ありがとうございます。

    行間に関しては、投稿後に自分でも違和感を感じたので、5話からは行間が少しは改善されているかと思いますので、ぜひご期待下さいませ。

    最後に、本当に読んでくださりありがとうございます。
    これからも面白い、と言われ続けるような作品にしていくよう日々精進いたしますので、どうぞよろしくお願いします。

    長文失礼しました。

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  • unknown@がんばらない

    面白い。しかし句読点で行をあけるのは分かりますが、句読点がないところで行を空けられると、すごくおかしな話し方になってしまっていると感じました。これからも頑張ってください。応援してます

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