双子の大神

緋想山 黒乃

序章 紅の過去と黒髪

終始無言であった紅は話が終わる時を見計らい、漆に声を掛けた。
「そろそろ、行くか?」
あぁ、と云おうとした漆の言葉を遮りら緋想丸は、どうぞ御泊り下さい、と云った。一度断ったが、是非ぜひ、と云われて仕舞い申し訳無さそうに、ではお願いします、と頼んだ。


『お前等が重要な言伝人ことづてにん?笑わせんな。』
 煩い
無理々々むりむり ふみを失くして終わりさ。』
 五月蝿い
『龍王様に残念がられるだけだよ。碧都みと様に泣き付きに、云って来な、ヤッパリ無理ですゥ、ってな。』
 うるさい

俺が悪いンだ。漆は悪くねェ。俺が要領が悪ィから...

うるさいネぇ。これは龍神王様からの命令サ。アの方は何か考えが有ったンだヨ。お前達よりも、此の子達の方が適任なのサ。さ、こんな所に固まってないデ、仕事しナ。』
ばつが少し悪い様に、他の遣い達は持場もちばへ戻って行った。
『すみません、有難う御座いました。』
『良いンだヨ。今度からはちゃんト、反抗なりしなヨ。何時いつも護れる訳が無いかラ。』
そう云うと碧都様は戻って行って仕舞った。


ねェ、と話掛けられた紅は、ハッ、と我に返った。笑顔で振向くと、黒髪の少年が立って居た。
「如何したの?」
何時もの調子に戻りながらに、云うと少年は答えた。
「僕は黒夜こくよ。お兄さん、剣遣ってる?」
黒夜と云った子は、淡々と質問した。表情が無い子だな、と思いながら返した。
「一応、ね。其れが如何かしたかい?」
瞬きした後に、一呼吸して云った。
「僕に剣を教えて?」

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