脇役転生の筈だった
清水
私は清水 梨菜。
咲夜様の専属メイドであり、ドライバーだ。
そしてもう一人、真城 洋平。
咲夜様の専属使用人であり、情報屋として活動している。
洋平と私は咲夜様に救われた。
それは11年前の事。
私と洋平は物心つく前から孤児院にいた。
生まれてすぐの私達は孤児院の前に毛布に包まれ籠に、名前の書いた紙と共に置いてあったらしい。
つまり、捨てられたのだ。
貧しく、食料さえ満足に行き渡ることのないこの孤児院の生活は不満はあれど捨てようとは思わなかった。
行くあての無かった事もあったのかもしれない。
だが、私達にとって孤児院の皆は家族だった事が一番の理由だろう。
そして、いつしか小さな子達まで満足に食べれない程窮困していった。
そんな孤児院と守るべき皆を見て、私と洋平はある計画を立てた。
その計画は近くの豪邸、海野家に金目のものを盗みに入るというものだった。
後から思うと穴だらけの計画だが、その頃の私達にとっては完璧と思えたものだ。
そして、当日。
私達の計画はいとも容易く崩れ去った。
失敗だ。
そこで一人の少女と会ってしまったから。
雪の様な白い肌に輝く金色の髪、そして海のように深く、吸い込まれるように綺麗な蒼の瞳。
月夜の光が少女を更に輝かせる。
その蒼い瞳に私達の姿を映す少女は私と洋平の手が持っている宝石を見てコテンと首を傾げた後、私達の手を引いてどこかへと連れて行く。
ただ呆然としている私達を少女は一室へと押し込んだ。
そしてその少女はそのまま鍵を閉めるとポフンとベットに座り、私達も座るように促した。
「私は海野咲夜。
2人は?」
「……洋平。
苗字は、無い……」
「ちょっと、洋平!」
洋平が名前を言ってしまい私は慌てるが少女…咲夜は微笑んだ。
「………梨菜」
「苗字は無いの……?」
「……孤児だから」
咲夜はふぅーん……と何処か腑に落ちない様な表情をして少し考えた後、笑顔になった。
「じゃあ、洋平は真城!
真城洋平で、梨菜は……。
うーん……あ、清水はどうかな?
清水梨菜。
嫌だったら変えてもいいんだけど……」
私と洋平は顔を見合わせると不安そうに見つめる咲夜を見た。
今までビクビクしていたのが馬鹿に思える程小さな存在の様に感じた。
『お嬢様!!
お嬢様、いらっしゃいますか!?』
そのドアの向こうから聞こえる声に咲夜は残念そうに顔を歪めた。
「……もう、時間切れみたい……。
2人共、こっち」
「え……?」
「は?」
まだ咲夜は私達を助けてくれる気らしく本棚の方へと手招きする。
私達は他に手も残されていないこともあり、咲夜に従い本棚の近くへと寄った。
「少し待ってて。
えーと……確かこれを…こっちにやって……これはここで……あとは…ここを……えい!」
咲夜が何冊かの本を順番に動かしていくと本棚の下に扉が出てきた。
そこにはパスワードを打ち込むようなところがあり、咲夜は迷わずに6桁の数字を打ち込んでいく。
すると、ガタッと音がして下が開くと咲夜は「行って」と笑顔で見送ってくれる。
「この先、真っ直ぐ行くとね近くの山に出るんだ。
祠が近くにあると思うからその近くの階段から降りればいいよ。
それと…その宝石、あげる。
今日の記念にして。
もう、こんな事しないようにね。
またね、洋平、梨菜」
咲夜は少し寂しそうにしながらも懐中電灯を渡してくれ、そして扉を占めた。
その後すぐにまた先程の声が聞こえてきた。
『咲夜様!
ここを開けてください!』
『…先程からどうしたのです?』
『い、いえ……。
先程、盗みに入った者がいると……』
『この海野家にですの?
……分かりましたわ。
私も何か気付いたならば誰か呼びますわ。
少し休ませていただいてもよろしいかしら?』
そんな会話が微かに聞こえてくる。
……あの人は、咲夜は私達を助けてくれた。
少し離れたところで私はある決意を洋平に話した。
「私、将来咲夜の…ううん、咲夜様の使用人になりたい……。
それで、咲夜様の助けになりたい……。
だからね、私……。
咲夜様の付けてくれたこの清水って苗字大切にする……。
私は今日から清水梨菜になる」
「……そうかよ。
俺もあいつに恩返しをしてぇ。
俺等を助けたあいつを……お嬢を助けてやりてぇ……。
だから…俺と梨菜の2人で支えてやろうぜ!」
それを決めたのは私と洋平が15の時のことだった。
その後、咲夜様からいただいた物は1部を金銭に変え、食料をいくつか購入し混ぜ、残りは大切にしまっておいた。
何故なら…咲夜様と出会った証であり、私達の罪であり、夢でもあるのだから。
あの、愛らしく、美しい方の瞳と同じ色の宝石だったから。
それから私と洋平は必死に勉強し、それまでにはありえない程の成績を残し中学を卒業した。
そこから、私と洋平の道は一旦別れた。
私は、高校では資格を取るために必要な事を学びながらも首席を維持し、そのまま専門の大学へと進んだ。
洋平はどうしていたのかは知らないが私の様に咲夜様のお役に立てるよう学んでいるに違いない。
そう思いながら、私は咲夜様のお役に立てるような知識を片っ端から頭に入れていた。
そして…私は最後、車の免許を取得した。
勿論、学校は首席で卒業。
それは当然の事だ。
そうでなければ私はあの方に仕える資格はない。
そのために私は15の時からずっと学んできたのだから。
ただ1人のためだけに。
あの方に仕えるために。
そして就職先を決める時、私に進められた家は海外が多かった。
そして日本では…天野家が1番良いだろうと言われた。
ここで学んだ者にとって天野家はこの国で働くのなら1番良い就職先だという事を私は知っていた。
だが、私はそれを全て蹴った。
そして、私は1人海野家へと面接に向かった。
勿論、先生方や同級生には反対された。
だが、諦められるわけが無かった。
私はずっとあの方に仕える事を夢見ていたのだから。
「清水、お前ならばあの天野家だって…!」
「勿体無い!
天野家なら将来だって安泰じゃない!」
そう言われても私は意思を変える事は無かった。
そして、私はある一言にキレた。
「海野家なんて清水さんには合わないわよ」
海野家なんて……その一言は私の恩人でいる咲夜様の侮辱だ。
あの方は海野家の1人ということに誇りを持って行動していらっしゃる。
そんな咲夜様の誇りを踏みにじるような言葉だった。
「あなたなんかに何が分かるのです?
私の主は咲夜様ただ1人……。
あの方のお役に立てるのであれば私は何だって致します。
あの方は私と私のいた孤児院を救ってくださったお優しい方です。
白い雪のような肌に金色の髪。
そして海のように深く、澄んだ蒼の瞳…。
あの鈴の音のような凛と澄んだ声。
咲夜様以外に相応しい主はいません。
何より、あなたのような方に私の主を侮辱される覚えはありませんし、あの方の誇りを踏みにじられるなど……。
考えただけでも不愉快です。
私は咲夜様のためであれば命さえも差し出します。
いいえ……私の命は既に6年前から咲夜様のものです。
それと…私は誰に何を言われようと海野家に、咲夜様に仕えます。
最後に、私を清水と呼んでいいのは海野家の方々と真城洋平のみです」
私はまくし立てると彼女達は何も言わなくなる。
それに満足すると私は学校を後にしようとした。
だが……アナウンスが入る。
『清水梨菜、清水梨菜は至急、面会室へと来るように』
私はまた家の事かと溜息をつくと面会室へ向かった。
面会室には意外な事に馴染みのある奴がいた。
「よっ!
俺は#真城洋平__・__#だ。
ここにいるって事は、そーゆーことだとは思うが、聞いておくぜ。
お前の名は?」
「私の名は、清水梨菜です。
……分かりきっているでしょう?
真城洋平」
私達はその名の意味する事に笑を浮かべると向かい合わせで座った。
「洋平…いえ、真城と呼びましょうか。
真城、あなた一体今まで何をしていたのですか?」
「俺はお前と同じだ。
清水の様に、お嬢の力になれるように最善を尽くしていただけだ。
あぁ、今は情報屋をやっている」
つまりはこういうことだろう。
真城は自分で考えた結果、咲夜様の目となり耳となるよう、各地の情報を得て情報屋となった。
「清水、お前はどうなんだ?」
「私は咲夜様の手足となり動くためにドライバーとしての資格からメイドとしての資格まで…咲夜様のお役に立ちそうなものを片っ端から詰め込んできただけです」
それぞれの事を話すと次はどうやって海野家に雇用してもらうかの話へと移行した。
「そういやぁ、来週に面接と試験があったはずだ。
そこからどうやってお嬢の専属にしてもらうかは後で考えればいいだろう」
「えぇ、そうですね。
まずは信頼を得るところから…。
詳しい時間が分かったら伝えてください」
「あぁ、分かっている。
んじゃ、またな」
「えぇ、また今度」
まさか真城が情報屋になっているとは思っていなかったが咲夜様のお役に立ちそうなので良かった。
あれで使えないようならばどうしようかと思っていた。
そして、面接の日。
私と真城は合格し、晴れて海野家の使用人となった。
ただ、私と真城が咲夜様の専属になったのはそれから2ヶ月後の事だった。
咲夜様の専属メイドであり、ドライバーだ。
そしてもう一人、真城 洋平。
咲夜様の専属使用人であり、情報屋として活動している。
洋平と私は咲夜様に救われた。
それは11年前の事。
私と洋平は物心つく前から孤児院にいた。
生まれてすぐの私達は孤児院の前に毛布に包まれ籠に、名前の書いた紙と共に置いてあったらしい。
つまり、捨てられたのだ。
貧しく、食料さえ満足に行き渡ることのないこの孤児院の生活は不満はあれど捨てようとは思わなかった。
行くあての無かった事もあったのかもしれない。
だが、私達にとって孤児院の皆は家族だった事が一番の理由だろう。
そして、いつしか小さな子達まで満足に食べれない程窮困していった。
そんな孤児院と守るべき皆を見て、私と洋平はある計画を立てた。
その計画は近くの豪邸、海野家に金目のものを盗みに入るというものだった。
後から思うと穴だらけの計画だが、その頃の私達にとっては完璧と思えたものだ。
そして、当日。
私達の計画はいとも容易く崩れ去った。
失敗だ。
そこで一人の少女と会ってしまったから。
雪の様な白い肌に輝く金色の髪、そして海のように深く、吸い込まれるように綺麗な蒼の瞳。
月夜の光が少女を更に輝かせる。
その蒼い瞳に私達の姿を映す少女は私と洋平の手が持っている宝石を見てコテンと首を傾げた後、私達の手を引いてどこかへと連れて行く。
ただ呆然としている私達を少女は一室へと押し込んだ。
そしてその少女はそのまま鍵を閉めるとポフンとベットに座り、私達も座るように促した。
「私は海野咲夜。
2人は?」
「……洋平。
苗字は、無い……」
「ちょっと、洋平!」
洋平が名前を言ってしまい私は慌てるが少女…咲夜は微笑んだ。
「………梨菜」
「苗字は無いの……?」
「……孤児だから」
咲夜はふぅーん……と何処か腑に落ちない様な表情をして少し考えた後、笑顔になった。
「じゃあ、洋平は真城!
真城洋平で、梨菜は……。
うーん……あ、清水はどうかな?
清水梨菜。
嫌だったら変えてもいいんだけど……」
私と洋平は顔を見合わせると不安そうに見つめる咲夜を見た。
今までビクビクしていたのが馬鹿に思える程小さな存在の様に感じた。
『お嬢様!!
お嬢様、いらっしゃいますか!?』
そのドアの向こうから聞こえる声に咲夜は残念そうに顔を歪めた。
「……もう、時間切れみたい……。
2人共、こっち」
「え……?」
「は?」
まだ咲夜は私達を助けてくれる気らしく本棚の方へと手招きする。
私達は他に手も残されていないこともあり、咲夜に従い本棚の近くへと寄った。
「少し待ってて。
えーと……確かこれを…こっちにやって……これはここで……あとは…ここを……えい!」
咲夜が何冊かの本を順番に動かしていくと本棚の下に扉が出てきた。
そこにはパスワードを打ち込むようなところがあり、咲夜は迷わずに6桁の数字を打ち込んでいく。
すると、ガタッと音がして下が開くと咲夜は「行って」と笑顔で見送ってくれる。
「この先、真っ直ぐ行くとね近くの山に出るんだ。
祠が近くにあると思うからその近くの階段から降りればいいよ。
それと…その宝石、あげる。
今日の記念にして。
もう、こんな事しないようにね。
またね、洋平、梨菜」
咲夜は少し寂しそうにしながらも懐中電灯を渡してくれ、そして扉を占めた。
その後すぐにまた先程の声が聞こえてきた。
『咲夜様!
ここを開けてください!』
『…先程からどうしたのです?』
『い、いえ……。
先程、盗みに入った者がいると……』
『この海野家にですの?
……分かりましたわ。
私も何か気付いたならば誰か呼びますわ。
少し休ませていただいてもよろしいかしら?』
そんな会話が微かに聞こえてくる。
……あの人は、咲夜は私達を助けてくれた。
少し離れたところで私はある決意を洋平に話した。
「私、将来咲夜の…ううん、咲夜様の使用人になりたい……。
それで、咲夜様の助けになりたい……。
だからね、私……。
咲夜様の付けてくれたこの清水って苗字大切にする……。
私は今日から清水梨菜になる」
「……そうかよ。
俺もあいつに恩返しをしてぇ。
俺等を助けたあいつを……お嬢を助けてやりてぇ……。
だから…俺と梨菜の2人で支えてやろうぜ!」
それを決めたのは私と洋平が15の時のことだった。
その後、咲夜様からいただいた物は1部を金銭に変え、食料をいくつか購入し混ぜ、残りは大切にしまっておいた。
何故なら…咲夜様と出会った証であり、私達の罪であり、夢でもあるのだから。
あの、愛らしく、美しい方の瞳と同じ色の宝石だったから。
それから私と洋平は必死に勉強し、それまでにはありえない程の成績を残し中学を卒業した。
そこから、私と洋平の道は一旦別れた。
私は、高校では資格を取るために必要な事を学びながらも首席を維持し、そのまま専門の大学へと進んだ。
洋平はどうしていたのかは知らないが私の様に咲夜様のお役に立てるよう学んでいるに違いない。
そう思いながら、私は咲夜様のお役に立てるような知識を片っ端から頭に入れていた。
そして…私は最後、車の免許を取得した。
勿論、学校は首席で卒業。
それは当然の事だ。
そうでなければ私はあの方に仕える資格はない。
そのために私は15の時からずっと学んできたのだから。
ただ1人のためだけに。
あの方に仕えるために。
そして就職先を決める時、私に進められた家は海外が多かった。
そして日本では…天野家が1番良いだろうと言われた。
ここで学んだ者にとって天野家はこの国で働くのなら1番良い就職先だという事を私は知っていた。
だが、私はそれを全て蹴った。
そして、私は1人海野家へと面接に向かった。
勿論、先生方や同級生には反対された。
だが、諦められるわけが無かった。
私はずっとあの方に仕える事を夢見ていたのだから。
「清水、お前ならばあの天野家だって…!」
「勿体無い!
天野家なら将来だって安泰じゃない!」
そう言われても私は意思を変える事は無かった。
そして、私はある一言にキレた。
「海野家なんて清水さんには合わないわよ」
海野家なんて……その一言は私の恩人でいる咲夜様の侮辱だ。
あの方は海野家の1人ということに誇りを持って行動していらっしゃる。
そんな咲夜様の誇りを踏みにじるような言葉だった。
「あなたなんかに何が分かるのです?
私の主は咲夜様ただ1人……。
あの方のお役に立てるのであれば私は何だって致します。
あの方は私と私のいた孤児院を救ってくださったお優しい方です。
白い雪のような肌に金色の髪。
そして海のように深く、澄んだ蒼の瞳…。
あの鈴の音のような凛と澄んだ声。
咲夜様以外に相応しい主はいません。
何より、あなたのような方に私の主を侮辱される覚えはありませんし、あの方の誇りを踏みにじられるなど……。
考えただけでも不愉快です。
私は咲夜様のためであれば命さえも差し出します。
いいえ……私の命は既に6年前から咲夜様のものです。
それと…私は誰に何を言われようと海野家に、咲夜様に仕えます。
最後に、私を清水と呼んでいいのは海野家の方々と真城洋平のみです」
私はまくし立てると彼女達は何も言わなくなる。
それに満足すると私は学校を後にしようとした。
だが……アナウンスが入る。
『清水梨菜、清水梨菜は至急、面会室へと来るように』
私はまた家の事かと溜息をつくと面会室へ向かった。
面会室には意外な事に馴染みのある奴がいた。
「よっ!
俺は#真城洋平__・__#だ。
ここにいるって事は、そーゆーことだとは思うが、聞いておくぜ。
お前の名は?」
「私の名は、清水梨菜です。
……分かりきっているでしょう?
真城洋平」
私達はその名の意味する事に笑を浮かべると向かい合わせで座った。
「洋平…いえ、真城と呼びましょうか。
真城、あなた一体今まで何をしていたのですか?」
「俺はお前と同じだ。
清水の様に、お嬢の力になれるように最善を尽くしていただけだ。
あぁ、今は情報屋をやっている」
つまりはこういうことだろう。
真城は自分で考えた結果、咲夜様の目となり耳となるよう、各地の情報を得て情報屋となった。
「清水、お前はどうなんだ?」
「私は咲夜様の手足となり動くためにドライバーとしての資格からメイドとしての資格まで…咲夜様のお役に立ちそうなものを片っ端から詰め込んできただけです」
それぞれの事を話すと次はどうやって海野家に雇用してもらうかの話へと移行した。
「そういやぁ、来週に面接と試験があったはずだ。
そこからどうやってお嬢の専属にしてもらうかは後で考えればいいだろう」
「えぇ、そうですね。
まずは信頼を得るところから…。
詳しい時間が分かったら伝えてください」
「あぁ、分かっている。
んじゃ、またな」
「えぇ、また今度」
まさか真城が情報屋になっているとは思っていなかったが咲夜様のお役に立ちそうなので良かった。
あれで使えないようならばどうしようかと思っていた。
そして、面接の日。
私と真城は合格し、晴れて海野家の使用人となった。
ただ、私と真城が咲夜様の専属になったのはそれから2ヶ月後の事だった。
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