朝起きたら女の子になってた。
ビキニは着ないと言ったところ。
ゲームを終えてジュースを飲みながら10分ほどのんびりしていると、リムジンが止まった。
「お嬢様方、目的地に到着致しました」
渋めの執事がリムジンのドアを開けて外に促した。
俺はリムジンから出ると、体を伸ばした。
ゲームをして肩を凝ったからだ。
(というか肩凝ったの久し振りだわ)
「はぁ〜やっぱり若さって良いな」
「んん〜おっさん臭いよ?」
俺の呟きにリムジンから出てきた紗香も体を伸ばしながら反応してきた。
「まぁ、20過ぎたらおっさんだしな。それを体験している俺は稀だ」
「中学生で沙雪みたいな体験してる人なんていないからね?」
「なぁ、どうしてそこでフラグを立てるんだよ……」
「こんなんでフラグが立ったら、世の中物騒になってると思うんだよね」
「出てきてはいるが、裏の世界で生活してるんだろ」
そんな俺と紗香の会話を少し距離を置いて見ていた3人は……
「あの姉妹、本当仲良いわね」
「そうですわね。少し羨ましいですわ」
「うちもあの輪の中に入ってお姉ちゃんとして扱われたい」
「「お、応援しているわ」」
何だかんだ楽しそうであった。
*****
「アウトレットみたいにでかいな」
現在、俺の目の前にはアウトレットパークみたいに大きな店が見える。
「さ、皆さん、こちらですわ」
天童院さんが先行して店の出入り口を通って中に入る。
すると、
「「「「いらっしゃいませ、本日はご来店頂き誠にありがとうございます」」」」
綺麗な女性の方達に歓待を受けた。そんな中、店内を見回してみると奥行きはかなり広い。品揃えも豊富で回るだけでも大変そうだ。それに、他のお客さんの姿は見えないので、どうやら貸切のようだ。
そのことに関心していると、ビジネススーツを着た、如何にも出来る雰囲気の女性の方がこちらに歩いてきた。
「本日はどう言った要件でしょうか?」
「水着が欲しいですわ」
「畏まりました。案内させて頂きます」
出来る雰囲気の女性の方が後ろを向いて歩きだしたので俺達もそれに続く。
(てか、奥行きが果てしないわ。1キロはあるな……)
そんなこんなで5分ほど歩き続けると、今度は右に曲がって直進する。もうこの時点で俺は疲れだしていた。だから、俺はパシリを使うことにする。
「お姉ちゃん、俺疲れちゃったよ」
「分かった! お姉ちゃんに任せて!」
俺の言葉に反応したお姉ちゃんーー蓮は俺の後ろに回り込んで後ろから押してくれる。
(あぁ〜楽だわ〜。今度、お菓子でも餌付け……じゃなくて恵んであげよう)
蓮に押されながら3分ほど歩いたところで、ようやく出来る雰囲気の女性の方が止まった。
「ご足労おかけしまして誠に申し訳ありませんでした。麗華様から『水着』と伺いましたので、水着関連の品揃えが豊富なエリアに案内させて頂きました。ご用件がありましたら、お近くのスタッフにまでお知らせ下さい。……それでは、ごゆっくりお過ごし下さいませ」
律儀にお辞儀をして出来る雰囲気……いや、出来る女性の方は去って行った。
「じゃあ沙雪、一緒に水着選ぼうね」
当然のように紗香は、腕を組んできて歩こうとする。蓮は俺の後ろにくっ付いていたので一緒に連れて行かれる。
だが……
「待ちなさい、沙雪ちゃんを独り占……じゃなくて、5人で一緒に回った方が楽しいと思うんだよね?」
「そうですわ、皆さんと一緒に……良い響きですわ」
学級委員は欲望を隠し、天童院さんはキラキラしていた。学級委員は置いといて、天童院さんは本心で言ってきたので紗香も思わず立ち止まった。
「じゃあ、結衣は置いていく。天童院さんは一緒に……」
「ちょっと待って? 幾ら何でもそれは酷くない?」
「何処が酷いの?どうせ沙雪と2人きりになったら、あんなことやそんなことを嫌がる沙雪に強いるんでしょ? それを沙雪のお姉ちゃんである私が許すと思っているの?」
「し、しないわ! そんな破廉恥なこと!」
学級委員は顔を真っ赤にして反論する。
「私は具体的なことなんて言ってないけど? ……むっつり学級委員。生徒の代表が聞いて呆れる」
「うぐっ……」
紗香の完勝だ。
しかし、学級委員が居た堪れないので、俺は紗香に学級委員も連れて行こうと言う。だが、嫌だと言ってきたので俺は紗香に耳打ちする。
「……俺のズボンとパンツ返せ。じゃないと、学級委員に」
「あぁ〜〜急に私、結衣とも一緒に回りたいと思っちゃった〜」
すごい棒読みだった。
*****
その後、5人で回るのだが……
「沙雪さん、これなんてどうでしょう?」
「沙雪ちゃん、こ、これを着てみて!」
「沙雪はお姉ちゃんと同じのにしようね」
紗香以外から着せ替え人形にされそうになっている。
「なぁ、1つ聞く。競泳水着が目的なのに、なんでビキニ持ってくんだよ。絶対着ないからな」
(俺は思うんだ。ビキニは純粋の女の子が身に付けるものだ。穢れた俺が身に付けるべきではない)
「「「そう言うこと言わずに」」」
「紗香さん。こいつらになんとか言っちゃって……?」
俺は紗香に視線を向けると手に何かを持っていた。
その〝何か〟とは水玉模様のビキニであった。
「沙雪、これ着る?」
「それは紗香さんが試着するものでは?」
「何言ってるの? 私にはどうみても小さいじゃん」
うん、知ってた。
紗香のお胸様を隠すにはちょっとではなく、かなり布部分が足りなさ過ぎる。万が一にも、紗香があのビキニを身に付けたら大変なことになるだろう。
「それで……着るの?」
「着ないです」
「そっか、なら今日は一緒に寝てあげる」
「嫌です」
「なら、あの3人の中でならどのビキニ着る?」
「No, I can't!(できない!)」
「お願い!」
「I'm afraid I can't.(残念ながら、致しかねます)」
「どうして着ないの?」
「俺は純粋じゃない」
「じゃあ、純粋にしてあげる」
「嫌じゃ! 虐めないで!く、くるなぁぁぁぁ」
紗香が1人の時は抵抗出来ていたが、いつの間にか回り込んでいた3人が来て4対1になった瞬間、抵抗も虚しく俺は蹂躙された。
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