朝起きたら女の子になってた。

スライム3世

妹とG退治 Last



しがないゴキブリのゴキこと俺は、右足を引き摺りながら、母さんとリーブの元へと帰って来た。

「どうしたの、ゴキ!」
「人間に見つかった。親父は俺を助けるために……」
「う、嘘よね……? パパは殺られてなんて……」

母さんは親父の死に否定の言葉を呟き出す。
しかし、俺は親父の仇を取らなければならない。だから、俺は折れてはいけない。

「母さん、俺が親父の仇を」
「やめて! ゴキにも死なれたら私は……」

母さんは精一杯、俺に擦り寄ってくる。

「大丈夫だ、母さん。俺は……」

ーー兄さん?

その時、リーブが病気で痩せ細った体を引き摺りながら、俺と母さんがいる所まで来た。

「リーブ! どうして動いて……」
「えっとね、もう、私ダメみたい……」
「何を……」

ドサッ!

「「リーブ!」」

俺と母さんが倒れたリーブの元に駆け寄る。

「しっかりしてリーブ!」

母さんがリーブを抱き起す。

「ねぇ、お母さん、兄さん……。私ね、人間に憧れてるんだ……。お洒落したり、可愛くなったり、楽しんだり……。でもね、今の生活はすごく辛いの」
「リーブ……」
「人間は私達が嫌い。姿を現わすだけで嫌悪感を感じさせちゃうの。私はそんなことさせたくないのに……。こんなところでコソコソと暮らさないでもっと大きな……」
「リーブ?」
「ごめん、もう最後みたい……。お母さん、目閉じてて貰ってもいい?」
「わ、わかったわ」

母さんはリーブに言われた通り、目を閉じる。

「兄さん、もっと寄って……」
「あ、あぁ」

俺はリーブと触れ合えるほどの距離に移動する。

そして、

ーー兄さん、大好き

小さな甘い声と共に襲ってくるリーブの唇。

「な……」

俺はあまりの出来事に言葉を失う。

「……私ね? 寝込んでる時に好きな人は何だろうって考えていた時があったの。こんなご時世だから、男の人は兄さんとお父さんしか知らなかった。お父さんが好きかって言われると好きだって言える。でも兄さんが好きかって言われると、大好きだって言えるの」
「ッ!」

俺はその事を聞いて胸が高鳴るのを感じた。

「兄さんは私が病気になった時、すごく悲しそうな顔をしてた」
「当たり前だろ……」
「そして私も兄さんにすごく心配されてるのを感じて、すごく嬉しかった。この時はまだこの気持ちには気付いてなかったの」
「じゃあ、いつなんだ」
「さっき」
「え?」

(リーブはさっき気付いて俺に告白を?)

「兄さんが傷だらけで帰ってきたのを見た時、すごく心が締め付けられた。でも、生きてて良かったって安堵した。その時に気づいたの……」

リーブは言い終えると恥ずかしそうにもじもじとする。

(お、俺はどうしたら? 正直、リーブに大好きと言われて嬉しいと思った。だから……)

俺はリーブの顔を見据える。

「俺もリーブのことが大……」

ザザザザ〜〜〜

俺が妹に思いを伝えようとした時、俺達が隠れているビニール袋の場所を動かされた。


*****


「お、いたいた……って3匹おる」
「さ、3匹! は、早く殺して! 生き埋めにして!」
「生き埋めって……」

紗香が後ろで物騒な言葉を連呼する中、俺はG退治に掛かる。

「悪いな、別に俺はG嫌いな訳じゃないが、ズボンの為だ」

何故か動かない2匹を俺は近くにあったビニール袋に入れる。そして、残りの1匹はどうしてかビニール袋に自ら入って行った。

(こんなこともあるんだな)

俺はG3匹がビニール袋に入っているのを確認して袋を閉じる。

「はぁ、終わっ……「貸して!」うおっ」

紗香はGが入った袋を俺から奪い、ダッシュで階段を降りて玄関まで行き、靴を履いて外に出て行った。

(ん? 何か忘れて……あ)

俺はそのある事・・・に気付いた瞬間、ハンガーに掛けられている紗香のコートを掻っ攫って、紗香を追いかける。

靴を履いて外に出ると、紗香は家から50メートルほど離れた場所にある川付近にいた。

遠目から見て紗香は俺から奪ったビニール袋を持っていない。おそらく、川に流したのだろう。

(って、そんなことは置いといて……)

俺は紗香の元までガチダッシュする。
音に気付いてこちらを振り返った紗香は俺に問いかけてくる。

「あ、どうしたの、沙雪?」
「とりゃぁぁぁ」

俺はそれを無視して持ってきたコートを紗香の頭に被せた。

「何するの」
下着姿・・・で50メートル離れた所にある川でGを捨てた妹を連れ戻しにきた」
「あ……」

紗香はその事実に気付いて、俺が頭に被せたコートを素早く着る。

その後家に帰った後、紗香は思い出しては頬を真っ赤にする日々が続いた。

これは自業自得の結果なのだろう。


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