華のJK1なんだが受験に失敗したので高校に行くのが極めて憂鬱である

霧雨 蘭

日向

日向さんはくらい栗毛のセミロングと大きな茶色の瞳で笑顔も大きくていかにも元気そうな感じだ。

公園はほんとうに学校の横、真横にあった。公園といっても遊具等はなくて噴水を中心に芝生が広がっている。公園というより広場といった雰囲気だ。

霧雨「こんなとこがあるなんて知らなかった。」

日向「一応校外らしいけど、休み時間とかに来ていいんだって。あっちに見晴らしのいいベンチがあるから、そこにしよう」

霧雨「詳しいね。」

日向「お姉ちゃんがこの学校の先生なの。うちの学年主任だよ。まだ若いのになんでーって愚痴ってるよ。」

へぇ。そうかお姉ちゃんがいるんだ。同じ学校とはまたまた。

ベンチに腰掛けて弁当を取り出す。

日向「私の学年の担任で日程知ってるはずなのに私のお弁当つくったんだよ。ほんとにドジだよね。外じゃあんなにちゃんとした人っぽいのに」

へぇお姉ちゃんがお弁当を。

霧雨「え、いいね。えっと、そのお弁当」

微笑ましい姉妹関係にふと羨望の言葉が飛び出てしまい慌てて誤魔化したが実際にお弁当も実に色とりどりでご飯がくまのキャラクターになっている。うーん、隣で私のお弁当を広げる気にはなれないって感じ。

日向「えへへ、高校生にもなってキャラ弁ってのも考えものだけどね。霧雨さんのくらいがいいよ」

台詞自体は皮肉っぽいがそうは聞こえないのはその人の人柄や喋り方がそうするんだろうか。

日向「霧雨さん、下の名前はなんだっけ」

霧雨「蘭、です」

日向「お姉ちゃんが間違えてお弁当作ってくれたから蘭ちゃんとこうやって一緒にご飯食べられたんだね」

そういって無邪気に微笑む。目が合ってどきっとする。

ちょっと高なった自分の心臓をごまかすために話題を探す。

霧雨「この学校に来たのは、その、お姉ちゃんがいるからとか?」

初めて話す人との話題としてはやや踏み込み過ぎた感はあるか。

日向「えぇー。まぁそれも、若干あるかな~」

そういっていたずらっぽく笑う。

日向「蘭ちゃんは?」

えっと、私は。私は。

咄嗟に良さそうな嘘も思いつかないので正直に答えることにする。

霧雨「失礼かもだけどごめんね、実は滑り止めっていうか...」

日向「えっ。この学校が滑り止め?すーごいね。ここ県で一番だよ。」

霧雨「えっ」

日向「私らが言うと自慢みたいだけど全国でもトップクラスの進学校だよ。どうりで蘭ちゃんテスト早かったわけだ。」

滑り止め選びに頭を使っている暇がなかったが故に通っていた塾の先生と中学の担任に全てを投げていたのだが、まさかそんなとこを受けさせられていたとは。というかなぜそんな学校に受かったのか。混乱は収まらない。

日向「私がテストしてる時、蘭ちゃんがテスト終わってすごいそわそわしてるのわかったよ。だからすぐ終わらせて見直ししないで立っちゃった。私が立ったらすぐ蘭ちゃん立って。ああやっぱりーみたいな」

そう言ってお腹を抱えて笑う日向さん。よく笑う人だ。あとその話、イケメンすぎる。

そう笑う横でもくもくとお弁当を食べる。
笑いが落ち着いた日向さんもお弁当に手をつけた。
そこからは高台からの景色を眺めながら静かにご飯を食べた。

目前には海が広がっていて潮風が心地いい。街並みもよく見下ろせ登校時に登る坂道への恨みもこの一時では忘れられそうだ。

第一志望は?そう聞かれなかった事が意外だったし嬉しかった。

中学卒業の時にはあらゆる人に散々聞かれた。

この学校が県内でトップなら私の第一志望の学校について強い興味を持ってもおかしくない。むしろ自然だ。でも彼女は聞かなかった。

あぁ、こういう人も、ちゃんといるんだ。

今まで感じていた人間関係、人間そのものに対する黒い感情を、そうだな、晴れた休日のお昼にカーテンの隙間から差し込む日の光。そんな強いけど少ない光が照らしたような気がする。

いつかきれいに一面、日の光に包まれてさらに明るく照り返すようになれるだろうか。


私はまだ真っ黒だ。



日向が眩しい。



日向「暑くなってきたね。そろそろ帰ろうか。」
霧雨「うん、そうだね。」

不思議と体力は減らなかった。

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