華のJK1なんだが受験に失敗したので高校に行くのが極めて憂鬱である

霧雨 蘭

万策

「これより全新入生挨拶会を始めます。」

司会の声が大きなホールに響き、瞬く間に静寂が訪れる。

「引き続き司会の私、橘 蜜華(タチバナ ミケ)が開会の挨拶をさせて頂きます。皆さんごご存知かとは思いますが、この挨拶会では新入生と教職員がこの桜峰堂に一堂に会し、それぞれ舞台上で自己紹介をして頂く会であります。」

始まった。

「生徒諸君には狭い集団にとらわれず、クラスを越えた交流をして欲しいという思いがあります。実際問題としてこの学園の寮での部屋割りはクラスを問いません。生徒の半数以上は寮生です。関係の無いという生徒も多くは無いはずです。是非今日の自己紹介を話の種にして頂ければと思います。」

長い開会の挨拶とやらを白目を剥きながら耳から耳へ流し通す。

「それでは先ず生徒の自己紹介に移りたいと思います。順番が決まっているはずですので、えーそれでは1番目の方は舞台上へ。」

橘蜜華と言ったか。不慣れな敬語と強張った声からいかにも新人教師といった具合だ。

喜雨「あの先生、可愛いね」

舞台端の演題に立つ姿は若くて華奢だ。ストレートの黒髪が肩まで伸びている。
綺麗にアイロンのかかったスーツを纏ってやはりいかにも新入社員、新人教師を体現したような容姿だ。

霧雨「そうね」

喜雨さんには申し訳ないが適当な返事を返しておく。

しかし、生徒に対しても頑なに敬語を使う気取らなない雰囲気には私も好感が持てた。確かに可愛い、かも。
舞台上にはトップバッターが登って今に自己紹介を始めようという所だ。

あれこれ考えている間に会は着々と進んでいた。
生徒が順繰りに自己紹介を済ませ座席に戻っている。ぼうっとしている間にどうやら1クラス目が終わっているようだった。

いかん。いかん。しかし、うーむ。突然自己紹介と言われても、である。
ここは後発組のアドバンテージを存分に生かそうと決める。自分の前の発表をいくつか聞いて入ればある程度の内容は思いつく。
私も流石にそこまでの能無しでは無い。

ふむ。ふむ。ふむ。

私が集中し始めてから数十人が舞台上で入れ替わっただろうか。

私は私が能無しではないと言ったな。あれはウソだ。

予想以上に何も思いつかないどころか予想以上にこの学校、人数が少ない。
既に私の順番まで両手で数えられるまでになっている。

万事休す。万策尽きた感じですか?
次回、私死す?

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