華のJK1なんだが受験に失敗したので高校に行くのが極めて憂鬱である

霧雨 蘭

出会い

「え〜皆さんはこの春から晴れてこの桜峰(おうほう)女学院の生徒となりーーーーー」

入学式が始まり、学校生活の定番商品である校長先生の長いお話の押し売り真っ最中である。

どいつもこいつも高校入学がめでたいものだと思いやがって、なんて捻くれた自分を端に追いやる。

「新入生が退場します」
入学式が終わりそんな掛け声と保護者の大きな拍手を背に体育館から抜け出す。

ここは桜峰女学院。私はこの春からこの女子校に通う。

なんとなく小洒落た名前をしているが、ここから若者の街渋谷まで電車で2時間弱。大都会東京から少しだけ離れた中途半端な立地の学校である。

なんて田舎者の私が学校の立地を評価してみる。

まぁ横浜は割と近くにあり海の目の前ということもあり立地的にこの界隈ではそこそこ人気のある学校だそうだ。

偏差値もそれなりに高い私立女子校とあって民度もそれなりである、らしい。

如何せん私には似合わない学校だなとますます気が滅入る。

教室へ戻る途中、廊下の窓の外を見ると静かな海と港が見える。

なんでこんな学校に私が通わなきゃならないんだろう。

こんなことなら滑り止めの学校をもっとしっかり選んでおくべきだった。

なんだか聞き覚えのある声が耳に入り私の思考は止まる。

「おはよー!おめでとう!おめでとう!」

声のする方に顔を向けると件の暑苦しい先生が視界に入る。

先生の頭上を見ると[1-1]と書かれたプレートがだるそうにぶら下がっている。

そういえば担任紹介の時にあの先生はいなかった。

あの熱血教師はどこにでも現れるらしい。

皆が教室に入り担任の先生が戻ってくるのを待つ。
後はSHR( ショートホームルーム )で先生のお話を少しだけ聞いて今日はお終いだ。

何やら横から指でつつかれた感覚がして首を回す。

「 私、紅雨 蝶(コウウ アゲハ)っていうの。隣の霧雨?さんだよね。よろしくね 」
「 よ、よろしく。 」

名前を言い当てられ自己紹介の隙も与えてくれないのか、と戸惑いつつもアタマをフル回転させて返答する。
「 わ、私、霧雨 蘭(キリサメ ラン)。名前、よく覚えてるね。ありがと。 」
「 いやいや、苗字に同じ雨って字が入ってて、つい 。朝も話しかけたんだけど」

なんと。まさかこの人だったとは。コミュ力おばけめ。

「 あっそういえば霧雨さんの前の人も 」
「 確か... 喜雨さん、だったよね 」
「 喜雨さーん 」

怒涛のマシンガントークに怖気づきながらもそんな紅雨さんの声が小さく震えていることが気に掛かる。

「 あ、私、喜雨 胡々音(キウ ココネ)です。」
「あのね、私気づいたんだよねー」
「割と下らない話なんだけどさー。私たち3人の名前ってさ」

ガラッ

「はいはい静かに」
担任の小松の登場で紅雨の話は遮られる。
「それでは、初めてのホームルーム、始めるぞ」
私達の名前がなんとかと言っていたか。途中で終わってしまっただけに気になる話ではある。まあ大した事ではないだろう。

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