部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

はぁ……

僕が七海と同棲し始めて数日……

「森、そっちはどうだ?」

「こっちはもう少しで終わりそうっす〜
司馬は大丈夫か?」

「は、はい、先輩達の助けもあって終わりそうです」

僕は森と司馬の後輩2人と大学の部室にいた。
では、何故僕らは部室にいるのかというと年度末に提出予定の部活の収支報告書の作成である。
1年間で部員から集めた部費の合計や部費を使って購入したものなどを全て掲載して収支報告書にまとめて、それを大学に提出しないと来年度部活に入ってくる補助金がかなり減らされてしまうので会計としてとても重要な仕事の1つである。

「ふぅ……全ての計算終わり……僕の分おしまい!!
司馬、手伝おうか?」

「いえ、こっちも丁度終わりました。
ありがとうございます国木田先輩」

「いや終わったらなら大丈夫かな。
……ちなみに森は?」

「しゃぁーー!! 終わったーー!!」

僕が声をかけた瞬間、森は両手を空に突き上げ全身で会計の仕事から解放された喜びを表現していた。

「終わったみたいだね……みんなお疲れ」

「先輩もお疲れっす〜司馬もお疲れ」

本来なら司馬はいなくても大丈夫なのだが来年度から森の会計の手伝いをしてもらうために今回呼んでみた。
ちなみに来年度の会計は森であり、僕はもう関係ないのだがこの作業に関しては毎年元会計も手伝う事になっているのである。

「いえ先輩方の方こそお疲れ様です。
自分はただ領収書をまとめていただけなんで……」

「いやいや司馬がいてくれて助かったよ。
……どっかの森は昨年、領収書を1枚無くしたせいで夜まで仕事伸びたからね?」

「……昨年は本当にすみません。
ですが!! 今年は挽回しましたぜ!! 多分……」

「まぁ後は合宿のお金を整理すれば提出出来るね。
さて終わったけど……意外と時間余ったね」

僕が時計を見ると予想以上に早く終わっていた。昨年のアクシデントを省いてももう少しかかると踏んでいたのだがどうやら僕の杞憂みたいだった。

「おぉ〜確かに早く終わったすね。何しますか?」

「そうだね……ちなみにこの後予定のある人は?」

「俺は無いっす〜というか暇っす」

「自分も無いですね」

「かと言う僕も七海との晩御飯の買い物以外今日の予定は入っていないかな……」

その時、ふと司馬が

「あれ、そういえば国木田先輩って平塚と一緒に暮らし始めたって聞いたんですけど本当ですか?」

と聞いてきた。

「うん、本当だよ。というかそれ誰が言っていた?」

僕個人そこまで言う必要が無いと思い、あまり部員や周りの人に言っていないので気になった。

「えっ? 平塚本人ですが……」

噂の発信源はとても近くにいた。

「あの子は……全く」

「羨ましいっすよ〜彼女と同棲なんて〜
よっ、流石国木田大先輩!! 手が早いです!!」

「……一発やるかコラ?」

「すみません……調子に乗りました」

「相変わらずですね先輩達は」

司馬が僕らを見て苦笑いを浮かべていた。

「ハハッ、これが俺と先輩との仲だ!!
大先輩だから許してくれんだからな!!」

「いや普通許すかバカ。お前が異常なんだよ」

「……辛辣っす」

「事実を言ったまでだ。特にお前の場合はな」

「またまた〜そう言って実は嬉しいーー」

「司馬、来年度会計頼んだ。会計がいなくなったからさ」

「え、えっ? あの森先輩は……」

「ちょっと先輩!? 俺いますよ!? 」

「はっ、君は一体誰だい? 見ない顔だね」

「まさかのこの2年間忘れられた!?」

「2年間だって? 僕、君と初めて会うんだけど」

……無論冗談である。
森との2年間は色々と思い出が強くて忘れたくても忘れられないぐらいインパクトが強い。

「またまた〜そんな冗談言っちゃって〜本当は覚えてーー」

「ーー本当に色々と消すぞ、コラ?」

「誠に申し訳ありません。どうかどうかご慈悲を……
この哀れなわたくしめに……」

「はぁ……ったく。少しは学べって」

「というか森先輩も少しは学習しましようよ……」

「後輩に言われると結構刺さる……」

……というか先輩の僕に言われても本来は刺さるはずだが?こいつは完全に僕を舐めているのだろう。

「そう言えば先輩達」

「「ん?」」

「先輩方って出会った時からこんな感じだったんですか?」

「そうなんーー」

「そんなわ訳ないでしょ? 超絶コミュ症の森がさ」

「ですよね」

「……今日一番刺さるっす」

「じゃあどうやって今の様な関係になったんですか?
自分凄く気になります」

「おぉ〜それって“私気になります!!”ってやつか!!」

「……えぇ〜話すの面倒」

「まぁまぁ先輩、話しても減るもんじゃないですから可愛い後輩に話してあげましょうよ」

「可愛いのは七海だ」

「……そこは絶対変わらないんですね。
ある意味尊敬するっす」

「まぁ、いいか。
そんな面白いもんじゃないけど話すよ」

と僕はこの愉快な後輩、森との出逢いを話す事にした。

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