部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

親ではない


今回から同棲編に入っていきます。
と言っても2、3回は引越しの話ですが。







「ただいま〜!! 今日のご飯何〜?」

とまるで小学生の様な発言をしながら僕の家に入ってくる
我が彼女、平塚七海。

「お帰り、今日のご飯は唐揚げだよ」

「おぉ〜美味しそうに出来ているね!! いただきーー」

「つまみ食いする前に手を洗いなさい」

「はぁ〜い……」

「……ったく僕は七海の親なのか?」

さっきの発言もあるが僕は七海のこっちでの生活の大半を
しているというか世話をしている。
……一応僕は親じゃなくて彼氏なんだけどなぁ。
まぁ1人でボヤいても仕方ないのだが。

「手洗ったよ〜食べていい? 食べていい?」

「はいはい、どうぞ」

「わぁ〜い!! じゃあいただきーー
ーー熱っ!!」

「……そりゃ出来たてなんだから熱いのが当たり前でしょ」

「熱っ熱っ!! でも美味しい〜!!」

「なら良かった。ほらご飯の準備手伝って」

「何すればいい?」

「食事を皿に分けていってもらえる?」

「ふふん、任せてくださいよ〜。この私のカッコいいところ
見せてあげましょう」

「はいはい、じゃあやってくださいな」

「むぅ……センパイのいけず」

となんか不満気に食器棚から皿を取り出すとテーブルに
持っていき既に置いてあったご飯とサラダをそれぞれの皿に
分け始めた。

「よし、大丈夫そうだね……」

七海も料理を皿に取り分けるぐらいは出来るので、そっちは
彼女に任せて、僕は唐揚げを美味しく揚げる事に集中する
のであった。






「「いただきます」」

といつもの様に2人で手を合わしてから食事を始めた。

「うん美味しい〜!!」

「良かった、一応多めに作ったから食べて」

「わぁ〜い!!」

「ーー無論野菜も食べてね?」

「……くっ、バレたか。流石センパイですね……!!」

「だって君、さりげなく野菜食べないじゃん」

七海は好き嫌いはあまり無いが、肉と野菜があると
肉を優先的に食べてしまう。
そのため僕はどうにかして野菜を食べさせないといけない。
……七海のとして。

「あ、あとで食べますよ」

「その“あと”はいつくるのか教えてもらえるかな?」

「それはですね……その……その……」

「その?」

「うわぁ〜ん!! センパイがイジワルしてくる〜!!」

「……君が食べれば全て丸く収まるんだけどね」

「センパイはこんな可愛い彼女をイジメるんですか!?」

「イジメては無いけどね」

というか僕はただ“野菜を食べろ”としか言ってないが。

「私がイジメられたと思えばそれは“イジメ”なんですよ」

「凄い理論だな……」

「彼女特権」

「……うわ、来たよ七海の特技」

来ました我が彼女の伝家の宝刀“彼女特権”。
彼女曰く、それを使えば僕は従うしかないだとか。
ーーならば僕も対抗措置をとるしかなくなる。

えっ? 何をするかって? 

それはとっても簡単だよ。


「じゃあ彼氏特権」

僕がそう言うと彼女の前から唐揚げが入った大皿を
取り上げた。

「あぁーー!! 私の唐揚げがーー!!
酷いですよセンパイ!!」

「君が言うな。ほら野菜食べれば戻すから」

「……くっ、覚えておいてくださいね」

「ーー明日から自炊してね?」

「それは勘弁してください〜〜!!」

……本当、僕って彼女の彼氏なのか親なのか
どっちなんだか分からないよ。


食事中に一悶着? あった僕らはその後も食事を続けていた。

「ところで七海」

「何ですか?」

「もう大学のテストは終わった?」

「はい、終わりました〜。センパイは?」

「僕は昨日で終わっているよ」

「……早く終わって羨ましい」

「そりゃ1年から単位を真面目に取ってましたから」

「よし私も1年から頑張って単位を取るぞ〜!!」

「と、言いながらもう1年終わりますが単位の方は?」

「そりゃほぼ取ってますよ〜
ーー満点近くで」

「……やってらんない」

僕はついそうボヤいた。
七海は家事は壊滅的だが大学の成績はほぼ満点であり
総合成績もまぁ凄いのである。

「どうだ〜? 凄いでしょ〜!!」

とドヤ顔をしてくる七海。
可愛いからギリギリ許すが森なんかがやってきたら
渾身の右ストレートを決めているかもしれない。

「そして七海よ」

「何ですか? この頭が良くて可愛い彼女にまだなにーー」

「ーー引越しの準備はしている?」

「あっ」

「……」

「……」

「ねぇ七海」

「な、何でしょうかカッコいいセンパイ……?」

「まさかさ」

「はい」

「ーー準備してないとかはないよね?」

「……」

「……」

「……えへっ、忘れてた!!」

ガシッ

僕は七海の頭を掴んだ。

「き〜み〜は〜な〜に〜を〜し〜て〜い〜る〜の?」

「痛い痛い!! ちょっと本当に痛いって!!」

「引越しいつするか分かってるの!?」

「え、えっと……3日後?」

「正解かな」

僕は更に強く掴んだ。

「痛たたたたたたたた!! 正解したのに何で掴む力
強まっているの!? 理不尽だよね!?」

「日にちを覚えているなら何故準備してないのかな?」

「テストの準備で忙しかったというか……」

「嘘おっしゃい!! 君テスト前にあまり勉強しないよね?
というか前に僕に言っていたよね
“今回のテスト簡単ですよ〜”って」

「今のって私の真似?」

「お黙りっ!!」

「ひっ!! 今日のセンパイは理不尽だ!!」

「とりあえず今日はご飯食べたら早く準備しなさい!!」

「えぇ〜!! センパイとイチャイチャしたーー」

「あぁ?」

「早くやりま〜す!!」

……僕は七海の彼氏であるはずだ。
であると信じたい。
断じて親ではないと思う。






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