部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

だって幼馴染ですから

僕らは近くにあるファーストフードの店に入った。


「で、この人が私の彼氏のセンパイだよ〜」
隣の七海に紹介される僕。
「……せめて名前を紹介してもらえるかな?」
というか僕の名前は“センパイ”では無い。
「では初めまして先輩。
私はななみんの幼馴染の有川ありかわ明里あかりと言います」
と言うと礼儀正しく挨拶をする有川さん。
「君まで先輩か……一応、自己紹介させてもらうと
僕は国木田拓海って言うんだ。
有川さんだっけ? よろしくね」
「国木田さんと言うんですね〜
難しいので先輩と呼ばせていただきます!!」
「おい、今のどこに難しい要素があったんだ?」
というか人の名前呼ぶのに難しいってるのか?
「センパイ、明里ちゃんの言う通りだよ〜
地味に“国木田”って言いづらいんですよ」
「僕はまず君から“国木田”と呼ばれた事が記憶上
無いんだが……」
七海からは会った時から“センパイ”と呼ばれているから
名字で呼ばれた記憶が無い。
「もぉ〜そんな細かい事気にしていたらハゲるって〜」
「そうですよ、ハゲますよ?」
「君達って思考回路同じなのか!?」
というか七海はいつも通りなので気にしないが
有川さんに関しては初対面なのにここまで言われる
僕ってなんなのだろうか。
……威厳無いかな僕。
「「だって幼馴染ですから」」
「答えになってない!!」
「それで明里ちゃん、私とセンパイの馴れ初め……」
「僕の話は無視か!?」
「うんうん、聞かせて〜〜!!」
「……はぁ帰りたい」
僕はお決まりの頭に手を当てるポーズをした。
「おっ、来ましたセンパイのお決まりのポーズ。
この時のセンパイって本当に疲れている時なんだ〜」
ガシッ
僕は七海の顔を手で掴んで力を入れた。
「痛い痛いセンパイ痛い〜!!」
「七海〜? 分かっているなら行動に移せ〜?」
「ヤベッ、センパイがキレてる!!
明里ちゃんヘルプ!!」
「おぉ〜流石ななみん彼氏の事しっかり見ているね。
で、どんな風に出会ったの?」
「今度は私の話を無視!?」
「……君はもう少し自分の行動を見直せ〜?」
「分かった、分かったから手を離してよ〜!?」




「痛い……もうセンパイは私のこの可愛い顔に
もしもの事があったらどうするんですか!!
ーーあっ、でもそれを使ってセンパイの奥さんに
なるっていう作戦もあるよね?」
「……作戦内容ダダ漏れなんだけどね七海」
「それが七海クオリティ〜。
で、どこまで話したっけ?」
と七海は目の前にいる有川さんに聞いた。
「うん? まだ何も話は始まってないよ?
だっていきなり2人でイチャイチャし始めたからね」
「あっ、そうだね。で、私とセンパイが出会ったのは
部活の新入生勧誘の時だよ〜」
「そうなんだ〜じゃあ2人は同じ部活?」
「うん、そうだね。僕が七海の2つ上の先輩かな」
「おお〜新入生に手を出したんですね先輩?」
「……君って無意識で人を怒らせるの得意なの?」
多分この子は無意識でやっているだろう。
だからこそタチが悪い。
「明里ちゃん、違うよ〜。手を出したのは私の方だよ」
「あれ、そうなの?」
「うん、私のあざとさを使ったり、他の先輩の力を
借りたりして何とかゲットしたよ!!」
「おお〜流石ななみん。
ーーところで料理は?」
「……ナンノコトヤラ」
と露骨に目を逸らした。
「あれ? ってなると先輩が毎日ご飯を?」
「うん、そうだね。ご飯どころか家事全般を
担当しているかな。
ーー七海は寝ているだけ」
「……これも予想通りですね」
「わ、私は悪くないもん!!
センパイの料理が美味しいのは悪いだもん!!
そもそもセンパイが私をキッチンに近づけさせて
くれないじゃないですか!!」
「だってな……」
誰も大惨事の後始末はしたくないだろう。
漫画とかでよくある描写で鍋を一瞬で暗黒物質に
変える錬金術とかあるがあれに近い事を七海は
前に一度やらかしたから近づけさせない。
「先輩のその決断だけで私の中での先輩の評価は
かなり上がりました。
ーー流石ななみんの彼氏を務めるだけありますね」
「ありがとう……?」
なんか全然褒められている気がしないんだけど。
「ちょっとーー!!
私を出来ない子扱いしないでよーー!!
私だってやれば出来るもん!!」
「七海……君は」
それって出来ない人の発言ではないだろうか?
なんて言ったら七海がまた暴れかねないので
あえて言わないでおく。

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