異世界で美少女吸血鬼になったので”魅了”で女の子を堕とし、国を滅ぼします ~洗脳と吸血に変えられていく乙女たち~
Ex2-3 アンサー
ゴーレムを運んで村に戻った私は、その日の夜のうちに全員を引き連れて集落を潰すことにしました。
ただし、全員を連れて行ったのは戦力欲しさにではありません。
潰したあとを考えてのことです。
例えどれだけ人間がたむろしていようとも、どれだけの天才魔法使いがいようとも、制圧には私一人居れば十分ですから。
まずは洞窟前に配置されていた新たなゴーレム2体の撃破。
性能は以前の4体と同じようで、影を突き刺し内側から魔力の循環を止めてやれば、容易く活動停止しました。
「私たちの時はあんなに苦労したのに……」
一緒に来ていた女性は何やら唖然としていましたが、まあ確かに普通に戦っていたのでは苦戦する相手かもしれませんね。
そのまま洞窟に侵入します。
おそらく罠なのでしょう、地面を踏むと光の魔法が発動する仕掛けが施してあり、幾度となく私たちを襲いました。
幸い、さほど威力は高く無さそうなので、迫る光球は一つ一つ手のひらで握り潰していきます。
少し手が焼けてしまいますが、問題ありません、すぐに再生しますから。
そして洞窟を抜けると、木槍を持った男たちが集落の入り口を塞ぐように並んでいました。
槍には魔法が施してあるのか、淡く光を放っています。
しかし、そこは割とどうでもいいのです、どうとでもなりますから。
最大の問題は――男たちが、自分たちの前に女性を並べ、まるで盾のように使っていることでした。
「へ、へへへ……どうだ、手が出せねえだろ?」
下品な笑いと、下品な声と、下品な表情と。
総じて汚物未満の価値しか無い彼らは、私たちに向けてそう言いました。
ゴーレムに女性の皮を被せていたことと言い、彼らはどうも、私たちのことを”女性に手を出さない性質を持った動物”程度にしか思っていないようです。
「ひょっとして、先導している君が半吸血鬼どもの長かい?」
囲む男たちのさらに向こう、小高い丘で偉そうに立っている男が言いました。
ですが、答える義理はありません。
「まあ、そういうことなんだろうな。つまり人形を撃破したのも、罠だらけの洞窟を無傷で切り抜けたのも、君の力と言うわけだ。大したものだな、賞賛に値する」
男は余裕を見せたつもりなのでしょうか、パチパチと拍手をはじめました。
そういえば、学校でもこういうのいましたね。
普段はそんなキャラじゃ無いくせに、相手よりも自分の立場が上と見るやいなや、急に偉そうになってくる人。
懐かしくもあり、そして今の私からすると滑稽でもあります。
「そこで聡明な君に提案なんだが、どうだろう、ここは退いてくれないだろうか。私としても無駄な命の浪費は避けたくてね、今、君たちに槍を向けている男性たちは重要な労働力なんだよ」
「……」
「返事は無し、か。クレバーな話し合いを期待していたんだが、残念だ……いいぞ、やれ」
偉そうな男が何やら指示を出すと、私たちの目の前に居る槍を持った男性が動き――盾にしていた女性の足に、槍を突き刺しました。
「あぁぁぁああっ!」
女性の悲痛な叫び声が夜空に響き渡ります。
突然のことに、リーナ含む仲間たちにも動揺が走りました。
「やはりだ、やはりそうだ。半吸血鬼はどういうわけだが同性を愛す。理由は知らぬが、目の前で女が傷つけられるとポーカーフェイスでは居られないらしい」
「人質のつもりですか?」
「ははははっ! そら見ろ、さっきまで無視を決め込んでいたくせに今は自分から話しかけて来たじゃないか! くはははははっ! は……ああ、すまないね、質問に答えよう。答えはイエスだ、人質だよ。君たちがここで退けば彼女たちは殺さない」
「彼女たちも労働力では?」
「生憎、手先も不器用で男の欲情も誘えない穀潰しを置いておくほどこの集落に余裕は無いものでね。それでも利用手段が無いわけではないが、それ以上に、今の使い方の方が有効的かつ効率的だったわけだ」
つまりは、失われても良い命だったと。
男たちからも反論は出てきません。
満場一致ですか。
「これは優しい警告だよ、半吸血鬼。ひょっとすると、ゴーレムや洞窟の罠を突破したことで、このアレクサンダーに勝てる気で居るのかもしれない。あるいは、君の後ろに居るレイア・ハーシグの力を借りる気で居るのかもしれない」
そう言いながら、彼の視線がレイアの方を向く。
「……レイアのこと、知ってるみたいですよ」
「うん、そうみたい。気持ち悪い。たぶん……あの男はアレクサンダー・オミクロンじゃ、ないかな。私も、見るのは初めてだけど」
「どういう男なんですか?」
「一応、天才魔法使いってことになってるみたいだけど……直接会ったことは無いから、実力は、よくわからない」
見た感じ、今のレイアよりも強いってことは無さそうですけどね。
「しかしだ、仮にレイア・ハーシグの力があったとしても。私には勝てないんだよ、残念だけどね」
「それは、どういう理屈ですか?」
「はははっ、そんなの決まってるじゃないか。力の差だよ、力の差。どれ、見せてやるか。君たちなど一瞬で消し飛ばせる、私の光魔法を!」
アレクサンダーが手を天にかざすと、手のひらの上でバチバチと雷光が走り、光の球体が生まれます。
それは少しずつ大きくなっていき、やがて20メートルほどのサイズにまで膨張して、集落全体を照らします。
「見よ! これが私のまほ――」
私は手を開き、そしてすぐにきゅっと閉じました。
すると光球は一瞬にして、握りつぶされたように消滅します。
「……は?」
「そろそろあなたの声を聞いているのも苦痛になってきたので、終わりにしますね」
「ま、待てっ、そんな馬鹿なことがあるものか! 私の魔法がっ! 光属性だぞ? 吸血鬼が最も苦手とする属性だというのに――こんな、こんな簡単にっ!」
焦るアレクサンダー。
そんな彼の姿を見て、女を人質に余裕をかましていた男たちにも動揺が広がっています。
いいざまです。
でしたらその動揺に沈んだ状態のまま、寝てもらいましょうか。
私は頭上に意識を集中させ、夜の空に満ちる影たちを束ねて、こねて、きれいな球形を作りました。
意趣返しのようなものです。
「空が――」
男のうちの1人が、天を見上げながら呟きました。
その声に反応して、彼らは一斉に空を仰ぎます。
「何だ……これは。空が、近づいてきてるのか?」
そう見えるのも仕方ありません。
集落よりも大きな球体が、空から降ってきているのですから。
ここから見ると、視界を埋め尽くする漆黒が、じわじわとこちらに近づいてきているようにしか見えないのです。
それを見て、アレクサンダーは声を震わせながら言いました。
「こ、こんな巨大な魔力の塊……わかっているのか、こっちには人質だっているんだぞ!? こんなものを落とせば無事でいられるわけがっ!」
「安心してください、この影は――あなたたちしか、傷つけませんから」
私が女性を傷つけるなんて酷いこと、するわけないじゃないですか。
――そして、黒は集落に降り注ぎ。
何もかもを、塗りつぶしていったのでした。
◇◇◇
ダンッ! ダンッ! ダンッ!
リズミカルに、木の板に何かが叩きつけられる音が響きました。
女性は半吸血鬼に後ろから抱きしめられながら、頬を赤らめ、何度も何度も手に握る刃物を振り下ろしています。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「そうそう、上手上手、その調子で次は足も切り落としてしまいましょうか」
「はあぁ……はぁ、はぁ……っ」
後ろから抱きしめる半吸血鬼が耳元で囁くと、女性は位置を変え、大きな板の上に寝そべる男性の太ももの前に立ちました。
男性の体には至る所に生々しい傷跡があり、すでに両腕は切断されてしまっています。
そこから流れる血が地面に染み込み、周囲に不快な匂いが漂っていました。
ブチュッ!
女性が男の太ももに刃物を振り下ろすと、刃は肉の半ばで止まり、湿った音を響かせます。
ニチャァ……。
それを引き抜くと、血が絡みつく音がしました。
女性は露骨に顔をしかめましたが、背後から抱きしめる彼女が太ももに指を這わせると、「あんっ」と喘ぎ、すぐに不快感は失せたようです。
「ゆっくりやりましょう。焦ることは無いわ、もう、こいつは死んでるんだから。ね?」
「うん……うん、わかってる。私が、殺した、から」
「そう、上手に殺したわね。あの時のあなた、とても魅力的だったわ。死体の解体が終わったら、うんと可愛がってあげる」
「んぁ……ぁ、は……」
目の前にぶら下げられたご褒美が、女性の思考を鈍化させていきます。
快楽への期待と、自分が今やっている行為が混ざり合って、死体を解体するという行為に興奮を覚えるようになっているのです。
こうなればもう彼女は私たちの手のひらの上――
まあ、そんなことをせずとも、とっくに集落の女性たちは私たち半吸血鬼に心を開いていたんですが。
影を使って男性たちの意識を奪った後、私たちは真っ先に集落の女性たちを保護しました。
その結果、発見された70名ほどの女性のうち、無事なのはほんの数名のみ。
20名は今後食料として消費される予定だった人間だそうで、全身に暴行の形跡が残っていました。
また、残り50名のうち、45名はアレクサンダーの手によって、子宮に非人道的な処置が施されていたようです。
具体的には、妊娠して子を孕むと、胎児が急速に成長し、巨大な肉塊を産み出すように。
要するに、それもまた食料にするつもりだったのでしょう。
反吐が出ますね。
残り5名の女性も、さほど良い扱いは受けていなかったようで、他の女性たち同様に、むしろ私たちが現れた事を喜んで受け入れてくれました。
ただ殺され喰らわれるぐらいなら、肉を産み出す道具になるぐらいなら、慰み者として使われるぐらいなら――半吸血鬼になった方がマシだと、そう考えたわけです。
これは私たちにとっては嬉しい誤算でした。
そもそも半吸血鬼から隠れるためにこんな集落に暮らしていたわけですから、強い抵抗を受けても仕方ないと思っていました。
しかし、こうも人数が多いと魅了も大変ですし、男性たちの処理もしなくてはなりません。
少しでも効率的に進めるにはどうしたらいいのか――そこで私は思いつきました。
男性の処理と女性への魅了を同時に進行してしまえばいい、と。
すなわち、半吸血鬼が男性の殺し方、及び解体方法を指南しながら、親交を深めていくという方法です。
これが存外にうまくいきまして。
女性たちの魅了及び吸血は、集落の占領から2日ほどで半数が完了し、順調に進んでいました。
さて、男性を殺すのは当然のこととして、なぜ解体までする必要があるのか。
それは私とレイアが行っている、とある実験に使うからです。
本当は男性の肉体などすぐに灰にしてしまいたい所ですが、死んでしまえばそれはただの肉。
皮を剥ぎ、細かく砕いてしまえば男性のそれとはわからない。
ならばそこから再構築すれば――女性の肉体にすることも可能なのではないか。
「最初にチグサ様が言い出した時は……本気かな、って思ったけど」
集落の片隅で実験を続けていたレイアに近づくと、彼女は言いました。
「割と、やれば……できちゃうものなんだ。影って……何でもありなんだね」
「光が当たらない場所は全て影ですから、それを操れるというのは思っていた以上に万能みたいですね」
私たちはついに完成した成果を前に、自分たちで作っておきながら少し驚いていました。
ゴーレムに被せられていた皮を剥ぎ取り、男たちのバラした体から採取した材料で内臓から骨格、筋肉に至るまで再構築。
魅了も吸血も可能な新たな肉体を与える――そんな馬鹿げた妄想が、ほんの2日で実現してしまったのですから。
さすがに皮の持ち主を蘇生することは出来ませんでしたが、これで少しは死んだ女性も浮かばれてくれるでしょうか。
そして、私たちの目の前で、ベッドの上に寝そべる、私たちが作った肉体が、ついにゆっくりと目を開きます。
脳も臓器も見よう見まねで作った物なので、うまく動いてくれるか不安なのですが。
「……う、あ?」
「おはようございます、ご機嫌はいかがですか?」
「おあ、よう」
返事をしたということは、知能は赤子並というわけでは無いようですね。
皮の記憶なのか、はたまた肉の記憶なのか、どこから学習したのでしょう。
それとも、構築で参考にした私やレイアの脳の機能を受け継いでいる、とかでしょうか。
などと色々考え込んでいると、女性は自ら起き上がり、ベッドから降りようとし始めました。
私とレイアは慌てて彼女の背中に手を当て、転ばないようにフォローします。
「チグサ、レイア、平気。私。立てる」
名前を呼ばれて、私たちは思わず顔を見合わせました。
名乗っても居ないのに。
目を覚ます前、体を作る段階で、無意識のうちに記憶を吸収したとでも言うのでしょうか――まったく、体というのは不思議なものですね。
しかし同時に、嬉しくもあります。
正真正銘、彼女は私とレイアの子供のような存在なのですから。
◇◇◇
新たな命を生み出したことに達成感を覚えていた私たちは、かつて私が使っていた名前である”グラス”と名付けた彼女と戯れることに夢中で、肝心なことをすっかり忘れていました。
そう、アレクサンダーです。
私が彼の存在を思い出したのは、グラスへの魅了が完了し、印が浮かび上がり、さあ吸血を始めようか、と言うタイミングでした。
3日ぶりに、民家の一室に拘束された彼の元へ向かうと、自信に満ちていた天才魔法使いの面影はそこにはなく、すっかりやつれ、周囲には悪臭を漂わせた浮浪者を思わせる男性がそこに居るだけ。
先日の空から落とした影が、よほど彼にとってはショッキングだったようです。
私はそんな彼の前にレイアとグラスと共にひょっこりと顔を出しました。
アレクサンダーは、私の顔を見るなり明らかに怯えています。
こうなってしまうと、以前のようなうざったさは感じられません。
あるのは、足元を這いずる蟲のような不快感だけです。
「こんにちは、元気ですかアレクサンダーさん」
「う、ううぅ……」
私が声をかけても、彼は膝を抱え縮こまりながら、そんな声を出すだけでした。
つまらないですね。
これでは、集落に暮らしていた有象無象の男たちと何も変わらないじゃないですか。
いや、実際、そんなものなのでしょう。
誰だって、男なんて、殻を剥いでしまえば似たような形をしていて。
だから、必要ない。ただの肉で十分。
「一応、最後にあなたに見せたいものがあったんです。ほら、グラスも一応挨拶をしておいたらどうですか?」
「誰?」
彼女が知らないのも仕方ありませんし、冷静に考えると知る必要も無さそうですね。
しかし、アレクサンダーはグラスの外見を見て気づいたのか、目を見開いて彼女の方を見つめています。
「そんな……なぜ……!?」
「ひょっとするとあなたは、女性の形をしたゴーレムを作れば、魅了も出来ないし吸血も出来ないから私たちに勝てる、とでも思っていたのかもしれません」
図星だったのか、彼は無言のままでした。
私は話を続けます。
「浅慮ですね」
「対策としては……完璧な、はずだった……」
随分と穴だらけな完璧ですね。
「どれだけ人間が完璧だとのたまっても必ず死角――もとい影は存在するんですよ」
「そんなものはっ! だって、私は……ただ、土から作ったゴーレムに、人間の皮を、被せただけだったはずだ……! それが、一体どうなったら意思をもって動き出すって言うんだ!?」
なるほど、土で出来ていたんですね。
まあ、今となってはどうでもいいことですが。
「あなたの策に対する私の答えはこうです。魅了も出来ず吸血も出来ないのなら、それが可能な肉の体を与えてしまえばいい、と」
「肉の、体……」
「幸い、不要な肉は沢山転がっていましたから、有効活用させてもらいました」
「まさか……集落の、男たちを……?」
「はい。そして、あなたもですよ、アレクサンダーさん」
私はグラスに手招きをしました。
とてとてと小走りで近づいてくる彼女を抱き寄せると、臀部の少し上あたりに浮かんだ印をなで上げます。
「んああぁぁぁっ! はっ、はぁうっ!」
「生まれたばっかりなのにこんな声を出して、いけない子ですね」
「だって。チグサ。それ、気持ちいい……っ」
「じゃあもっと気持ちよくなりましょうね、グラス」
彼女は生みの親である私をすっかり信用しているらしく、首に牙をつきたてても、抵抗1つ見せませんでした。
むしろ私の背中に腕を回し、強くしがみついて、もっともっととせがんでいるようです。
「はっ、ああぁ……ぉ、んふうぅ……はへっ、へええぇっ……!?」
牙が埋まると、グラスは口を半開きにしながら色とりどりの喘ぎ声を咲かせます。
「チグサ様ばっかり、ずるいじゃないですか……私もいただきますね」
すると、近くで見ていたレイアもグラスに近づき、私とは逆方向の首に噛みつきました。
「あぁあああっ! あひゃっ、ひ、ひうぅっ! りょ、りょうほうっ、らめへっ、ひぃぃぃっ!」
倍の快楽に翻弄されるグラス。
吸血速度も倍になり、彼女の体はみるみるうちに半吸血鬼へと変わっていきました。
さらに柔らかな抱き心地に、ほんのり冷たい体温、そして白く滑らかな肌。
しばし抱きとめていると、じきに彼女は目を覚まし、赤い瞳を私に向けて笑うのです。
「……チグサ」
「はい、私はここにいますよ」
「うん……私、これで、一緒、なれた?」
その様が愛おしくて、私は自然と彼女の唇を奪っていました。
思えばそれが、グラスのファーストキスだったのかもしれません。
そして私から唇を離すと、次はレイアに抱き寄せられて、セカンドキス。
舌を絡めての激しいキスをいきなり2度も経験し、惚けた表情を見せるグラス。
婀娜っぽいその顔に、思わず欲情する私でしたが――残念ながら、彼女を抱く前にやらなければならないことがあります。
その行為に意味があるかどうかはさておき、トドメは一応、彼女の手で。
一連の私たちの交わりを、呆然と見ていたアレクサンダー。
グラスは彼の方を無表情に見下すと、爪を伸ばして近づきました。
彼はようやく、そこで、自分が何をされようとしているのか気づいたようです。
「……まさか、私を、殺すつもりか? やめろ、やめてくれへぇっ! 協力する、私の頭脳は役に立つぞ、必ずだ! ここで殺してしまえば失われる技術も沢山ある、生かすべきだ、私は生きているべきなんだ!」
「こいつ、殺していい?」
そう確認するグラスに、私は笑顔で頷きます。
彼は無価値ですから。
「待てえぇぇぇっ! 待てと言っているんだ、私を誰だと思っている、天才だぞ!? あの稀代の天才、アレクサンダー・オミクロンなんだぞ!? それが、そんな偉大な人間がっ、こんなクソみたいな場所でええぇぇっ!」
「知らない。うるさい。死ね」
情緒も余韻もなく、グラスは彼の体を切り裂き、一撃で仕留めます。
胴を深く袈裟斬りにされたアレクサンダーは、地面に倒れ、血を垂れ流しながら、それでもなお喚きました。
「はぐぅっ! ぐうぅ、あぁ、ありえない……私が、このような、無様な死に方をするなど……ありえる、ものかっ! こんなのは……夢……夢に、決まって……い……」
しぶとい彼の脳天に、トドメの一撃。
頭蓋骨を貫通し脳を損傷させるその刺突は、脆い人間にとっては完全に致命傷でした。
特に何の感慨もない彼女はすぐさま私とレイアの方を振り向くと、甘えるように胸に飛び込みます。
肉体は大人の女性のものだというのに、仕草は子供そのもの。
そのギャップが、さらに可愛いんです。
ここは男の血の臭いがして気持ち悪いので、アレクサンダーの体の解体は後回しにして、私たちは別の場所に移動しました。
何のためか、なんて愚問です。
もちろん、3人で愛し合うために決まっているじゃないですか。
おっと、リーナも参加するでしょうから4人かもしれないですね。
◇◇◇
翌日、男性全員の解体及び、女性たちの吸血を完了。
集落から引き上げ、人間をやめた女性たちは、元からの住人と共に村で暮らすことになりました。
また、ゴーレムに使われた残りの人間の皮5人分にも命を吹き込み、新たに生まれた彼女たちも共に生きていくようです。
廃墟と化していた家も使わなければ、さすがに急激に増えた人口には対処できませんから、これから村は忙しくなるでしょう。
私も手伝いを申し出たい所でしたが――本来はもっと早く片付ける予定だったのに、何だかんだで日数が過ぎてしまいましたから、申し訳ないですがこれ以上残ることは出来ませんでした。
別れを惜しむ村の住人たちと、しばしの逢瀬を愉しみ、そして村を去っていきます。
行きは3人ですが、帰りは4人。
私たちから離れようとしなかったグラスを連れて、私たちは城へと戻ってきました。
「チグサ様、なんだか足取りが重くないかい?」
リーナにそう聞かれて、私は思わず足を止めました。
ええ、まったくその通りでして。
非常に足取りが重いのです、城に戻るのが憂鬱なのです。
「リーナ、あれだよ……あれ」
「あれ?」
「ミヤコとエリス。出かける前は、すぐに戻ってくるって言ってたのに……実際は、こんなに空けちゃったから」
「ああ、しかも新しい女まで連れ帰ってきたから、怒られやしないかって落ち込んでたんだ!」
「ミヤコ? エリス?」
「グラスはまだ知らないんだったね。その2人はチグサ様の大事な人なのさ」
「大事な人。どうして怒る?」
「大事な人だからこそ怒るんだよ、愛とはそういうものさ。グラスもチグサ様に一週間近くも放置されてたら悲しいだろう?」
「悲しい。怒る。チグサ、酷い」
酷いのはどっちですか。
もう十分落ち込んでるんですから、そこまで追い打ちをかけないでもいいと思うんですが。
「はははっ、ここまで露骨にへこんでるチグサ様ってのもなかなかレアだから、つい面白くてからかっちゃうなあ」
「あんまり追い打ちをかけないでください。どう弁明するか必死に考えてる所なんですから」
「チグサ様、私に……良い案がある」
「嫌な予感しかしませんが、聞きましょう」
「心外だよぉ……本当に良い案だと思ってるのに」
レイアがそこまで言うということは、本当にみゃー姉とエリスの怒りを解消出来る良い案なのでしょう。
しかし、この状況において、私が許されるために必要な代償の大きさは計り知れません。
つまり私は、それが良い案だからこそ聞きたくないのです。
聞いてしまえば、否が応でも受け入れなくてはなりませんから。
「私が思うに……一週間、2人にチグサ様の体を好きにしていい、と言えば許してくれると思う」
「ボクが思うに、それチグサ様死ぬと思うよ」
私もそう思います。
「でも……他に許される方法が思いつかないから」
「罪は重い」
グラスの言葉がぐさっと突き刺さります。
そうなんですよね、それもまた事実であり。
確かにそれぐらいのことをしないと、2人は許してくれそうにありません。
「一応、提案はしてみようと思います」
「骨はボクが拾ってあげるからね」
合掌しないでください。
あとグラスも真似しないでください、洒落になってないので。
◇◇◇
その後、城に戻るなりみゃー姉とエリスに詰め寄られた私は、すぐさまレイアの案を実行しました。
一週間、私を好きにしていい、と。
すると途端に怒りに満ちていた2人の表情に笑顔が溢れ、目は妖しく輝き、気づけば私はがっしりと両腕を掴まれて、寝室へと連行されていました。
まんまと2人の策略にはまってしまったような気がするのは、私だけでしょうか。
この先に待つのは天国か、はたまた地獄なのか。
連れて行かれる私は、最後に一度だけ、助けを求めるようにレイアとリーナ、グラスの方を見たのですが――3人とも手をあわせて拝んでいる姿を見て、何もかもを諦めました。
それから一週間、それはもう好き放題された私は、文字通り死にそうな状態になりながらもようやく解放されました。
ただし、2人の行為にはちゃんと愛がありましたし、気持ちは良かったので、必ずしも地獄だったわけではないのですが。
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