異世界で美少女吸血鬼になったので”魅了”で女の子を堕とし、国を滅ぼします ~洗脳と吸血に変えられていく乙女たち~

kiki

4  シルシ

 




 夢のような一時から目を覚ますと、時刻はすでに昼を過ぎていました。
 隣には、衣を一枚まとっただけの、エリスの姿。
 私は彼女の頬に手を伸ばし、耳をくすぐるように撫でていると、「ん……」という声とともに、エリスの瞼が動きました。

「おはようございます」

 微笑みながら告げると、彼女はぽわっとした表情で「んへへ……」とはにかみます。
 まだ夢の中にいるのでしょうか。
 あるいは、昨夜のことで、それほどまでに私の虜になってしまったのでしょうか。

「目を開けて、チグサがそこにいるなんて……すっごい幸せ」
「私も同じ気持ちです、思わず頬に触れてしまいました」

 エリスは自然と私に顔を近づけてきます。
 私も自ら顔を寄せ、唇を重ね合わせました。
 触れ合うだけの……こういうの、バードキスって言うんでしたっけ。
 それを2回、3回と繰り返し、そしてお互いに見つめ合って、笑い合いました。

「好き、大好き。チグサのこと……世界で一番、愛してるの」
「ふふ、ライルさんより、ですか?」
「むぅ、チグサのいじわる。でも……今ならはっきり言えるよ、ライルなんかよりチグサの方がずっと好き。ううん、ライルだけじゃない。他の人なんてどうでもいい」

 あまりに可愛いことを言ってくれるので、今度は私から引き寄せてキスしました。
 少し強引に、舌をねじ込みながら。
 口内を蹂躙されると、エリスは嬉しそうに喘ぎ、体をくねらせます。
 もはや彼女は、私が何をしても喜んで受け入れるでしょう。
 そのままもう一度体を重ねてしまおうか、と手を衣の中に滑り込ませると――エリスのへその下に、私は見慣れぬ紋様を見つけたのです。
 赤色で、ハート型に悪魔の羽が生えたようなこれは……タトゥー、でしょうか。
 昨晩はこんなもの無かったはずなのですが。

「あ……そこ、触られると熱くなって……っ」

 紋様に指先で触れると、エリスは熱っぽい吐息を漏らします。
 それを見ていると、無性に彼女を滅茶苦茶にしてしまいたい欲求が湧いてきます。
 一体これは何なのでしょう。
 私は襲いかかりたい気持ちをぐっと抑えて、彼女に問いかけました。

「エリス、以前からこのタトゥーは入れてましたか?」
「へ、タトゥー? ううん、そんな上等な物、入れるお金なんて無いよ」
「でしたらこれは……」

 どうやらエリス自身も、私に指摘されて初めてその存在に気づいたようです。
 最初は不思議そうに自分で触れていましたが――

「ねえチグサ、もういっかい、触ってもらっても良い?」
「こう、でしょうか」

 指先でなぞるように、柔らかく弾力がある皮膚に触れると、エリスは微かに声をあげながら小刻みに震えました。

「やっぱそうだ……自分で触るのと、ぜんぜん、違う……っ」
「結局、これは何なのでしょうね」
「あ……ん、ふ……わかんないけど……えへへ、私の体はチグサのもの、って感じがして嬉しいかも」

 まあ……本人が嬉しそうなら、それでいいのでしょう。
 私は彼女の反応を楽しみながら引き続き紋様に触れ、そしてまた貪るように唇を重ねました。
 夜が明けても私たちの宴は終わらず。
 エリスのお腹が「ぐぅ」と鳴り、場の雰囲気を壊すまで、それは続いたのでした。



 ◇◇◇



 空腹を感じたからと言って、その場に食事があるほどここは恵まれた場所ではありません。
 かと言って、買えるほどの金があるわけでもなく、腹が減ったのなら探すしか無い。
 私はエリスに案内されて、廃棄街から離れた場所にある金属で作られた頑丈な柵までやってきました。
 この柵は、何かが入るのを防いでいるというよりは、廃棄街の人々を寄せ付けないために存在しているように感じられるのは気のせいでしょうか。

「この柵は、廃棄街と市街を隔てるために作られたんだ」

 私の疑問を察してくれたのか、問いかけるまでもなく、エリスは説明してくれました。

「内側の連中からしてみれば、私たちこそが本当のゴミなの。都合の悪いものから目を背けるために、私たちは捨てられたってわけ」
「理解できませんね、こんなに素敵な女の子がここに居ると言うのに、その価値にも気づけ無いなんて」
「……それ、私のこと言ってるの?」

 頷くと、エリスは顔を熟れた果実のように真っ赤に染めました。
 体温の上がった彼女の体は、きっと抱きつけば心地よく、噛み付けばさぞ気持ち良いのでしょうね。
 溢れ出す命の雫もまた甘美で――

「チグサ、ここだと……誰か見てるかもしれないけど、いいの?」

 気づけば私の体はエリスに迫っていました。
 周囲の目を気にする彼女の羞恥心などお構いなしに強引に抱き寄せ、そして火照った体を満喫します。

「あぅ……結構、強引だよね……そういうとこも、好きだけど」
「そうさせるだけの魅力がエリスにはあるんです」

 体を強く押し付けると、彼女の心臓の鼓動すら感じられます。
 脈動するその臓器から、全身に新鮮な血液が流れ込まれているかと思うと――それだけで、私も火照ってしまうのです。

「あ……は、ぁ……っ、チグサ、くすぐったいよぉ……っ」

 肌だけでは足りないと、私は彼女の首筋に唇を押し付けると、彼女の体温を確かめるように舌を這わせました。
 エリスの味がして、ならその内側はもっと濃いエリスの味がするはずだと思って。
 匂いも、エリスの匂いも、雌の匂いも、昨日よりずっと蜜に感じる。
 私を誘っている、中においでおいで、と手招きしている。
 ああ、熱い――脳が茹で上がったみたいに熱くて、ぼーっとしている。
 正常な……いや、正常って、何でしたっけ。私の正常は、吸血鬼としての正常は、正しいこと、生きるためにすべきこと。
 それは、生きとし生けるもの全てが抱く本能――欲望とは生物に本能を満たさせるために存在しており、その欲望を満たすということはつまり――
 何のために、生きるのか。
 何のために、侵食するのか。
 何のために、魅了するのか。
 何のために、支配するのか。
 その種は、同種族同士での生殖は行わない、まるで寄生するように植え付け、増殖する――

「はっ……はあぁっ……ん、ぁ……」

 興奮が、抑えきれませんでした。
 体がエリスを――エリスの中身・・を求めて止まらないのです。
 気づけば、私は熱に浮かされながら、鋭く尖った牙を彼女の首筋に埋没させようとしていました。

「ぁ……あ……チグ、サ……っ」

 しかし、それに気づいても彼女は抵抗しようとはしません。
 なぜならば、そのための下準備・・・はもう終わっていたからです。
 シルシ、は。
 そう、そうでした、なぜ私は失っていた……いや、思い出せなかったのでしょう。
 その記憶の存在に気づいた今となっては、自分の間抜けさを笑ってしまいそうでした。
 印、つまりエリスの下腹部に浮き上がった紋様は、下準備が終わった合図。
 私の体から彼女の中に流し込まれた力が飽和し、もはや一片の隙間すら無いほど満たされたことを示すサインなのです。
 いわば呪い、魔術的な魅了、解呪魔法が得意な人間に見つかれば元に戻されてしまう状態。
 ですがこの状態で人間の血液を吸い上げ、吸血鬼の魂の欠片を注ぎ込めば、彼女は晴れて身も心も私のものとなります。
 眷属として、夢も希望も恋も価値観も一切合財を私への愛情、あるいは忠誠心に塗りつぶされる。
 ですが……彼女からだけではない、私とて、エリスの事が愛おしいのです。
 これは吸血鬼としての本能? 作られた状態?
 いえ、いえ、だとしても! だったとしても! 私は早く、早くエリスの何もかもを奪い去ってしまいたい!
 ほら、だってエリスも抵抗していないのですから。
 きっとわかった上で、私に身を委ねているのです。
 ならばこのまま牙で乙女の柔肌を裂いて、人間性を吸い上げてしまえば――

「おーいエリスー! 市街の方に行くなら俺にも声かけろって言ったろ!?」
「っ!?」

 背後から聞こえてきた声に、私たちは慌てて体を離しました。
 そしてエリスは首筋を撫でながら、恨めしそうにやってきたライルさんの方を睨みつけます。

「な、なんだよ、なんで俺が睨まれないといけないんだよ」
「別にぃ……」

 幼馴染がとっくに私のものになっていることなど知らないライルさんにとって、この状況を理不尽と思っても仕方ありません。
 なぜなら、所詮私は、昨日彼女と出会ったばかりの他人なのですから。

「つーかさ、市街の方は最近警備が多くて危険だって話は聞いてたはずだよな、何だってこのタイミングで行くことになったんだ?」
「チグサが守ってくれるって言うから」
「お前、やけにこの女のこと信用してんだな。まあいいさ、確かに多少の危険を犯してでも行く価値がある場所ではあるからな、ただし俺も付き合わせて貰うぞ」
「勝手にしたら?」
「だからなんでそんなに不機嫌なんだよ……」

 本当はふたりきりが良かったのに、という不満が表情から丸わかりです。
 ですが、ライルさんはエリスの思いに全く気づいていないようで。
 まあ、彼が仮に気遣いのできる鋭い人間であれば、とうの昔のエリスの気持ちにも気づいていたはずですから、当然といえば当然なのですが。





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