異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第135話 猛吹雪のようです

ーside:ゼロー

『さぁて、どう調理してやろうかね』

「調理っ!?何か食べ物があるのー!?わたしも食べたいのー!」

『はぁ?あんた何言ってんの?』

 何が出てくるのかなぁー。こんな雪山だったらやっぱり冷たいやつかな?

「ゼ、ゼロちゃんっ……。さっきのは比喩だと思うよ……?」

「ひゆ?何それ、美味しいの?」

「比喩っ言うのは、物事を例えて言うことだよ。だから美味しくないよ。……で、ですよね、雪女さん……?」

『なんで敵の私に……。まぁあんたの言う通りだ』

「えぇー、食べ物ないのー?がっかり……」

 せっかく美味しいものが食べれると思ったのになぁー。

『あんた私を舐めてるね?いい度胸じゃないか』

 雪女がわたしの頭めがけて氷柱を投げてきた。

「ゼロちゃんっ!」

「大……丈夫っ!」

 わたしは氷柱を頭を捻って躱した。ちょっと危なかったけど、当たらなかったから気にしない。

「いきなり攻撃するのは卑怯者のすることなのー!」

『…………こいつこの距離で躱した?……』

「ゼロちゃん……。今回に限っては雪女さんが正しいと思うよ」

「えぇー!ならわたしも攻撃した方がいいのー?」

「う、うん。多分そうじゃないかな……?」

「分かったー!まかせてー!」

 わたしは短刀を手に持ち、雪女に斬りかかった。

 でも、雪女は軽々とわたしの攻撃を躱して、わたしの側面に移動する。

『さっきは驚いたけどまだまだだね。これであんたは終わりだよっ!』

「やらせないっ!」

『ちっ!』

 わたしの胸を狙った雪女の攻撃はリンの火球によって断たれ、雪女が後に下がる。

「ゼロちゃん、もう遊びじゃ無くなってるんだからしっかりしないとダメ!」

「う、うん。分かった」

「じゃあ次は本気で行って。私も参戦するから」

 わたしはリンに怒られて、ようやく状況をしっかり理解した。雪女は私達を確実に殺るつもりだ。

『へぇ。いっぱしの闘志持ってんじゃないのあんた達。でもねぇそれだけじゃあ私には勝てないのさ!』

 雪女がわたし達にそう告げると、手を上に伸ばして振り下ろした。すると今までの晴れていたのに雪が降り始め、次第に強風とともにわたし達に襲いかかってきた。

『この吹雪で凍え死にな!……吹雪の舞』

 この吹雪の中に雪女の姿が霞んでいく。

『これであんた達は籠の中の鳥だよ!もう私からは逃げられない!』

 雪女の声が四方八方から聞こえてきて、どこにいるのかが分からなくなる。

「ゼロちゃん。感知に反応ある?」

「あるけど、なんでか沢山……」

「わたしも同じ。どうして……?」

「分からないけど、そこには雪女がいるってことじゃないのかなー?」

「余計分からなくなった……」

「とりあえずどれか一つに攻撃してみるー!」

 わたしは風や雪に邪魔されないように、雷を飛ばした。

 すると、攻撃を受けたのか感知の反応が消えたのだが、また同じところに現れた。

「ぐぅー!なんでー!」

『あははは!あんた達じゃ私の技は破れないのさ!』

 またしても四方八方から声が聞こえる。

「やっぱりあれのどれかが本体だと思うんだけど……」

「リン!氷柱が来てるのー!」

「……っ!」

 リンは背後からの攻撃を飛んで躱して、攻撃が来た方を見る。すると、またしてもリンの背後から攻撃が飛んでくる。

 リンはそれをすぐさま察知して回避行動を取った。

「ゼロちゃん、わたしの背後をよろしくっ」

「任せてなのー!」

 わたしとリンは背中合わせで攻撃を迎撃する体制に入った。

 それを知ってか雪女は全方位から一斉に氷柱を飛ばしてきた。

「全部叩き落とすのー!」

「うん!」

 そうして私が短刀で氷柱を落とした時だった。氷柱に触れた部分が凍り、だんだん侵食されていく。

 わたしは短刀を急いで離した。リンの方は魔法で氷柱を落としていっているからまだ、この事は知らないはず。

 わたしはリンに念話でこのことを伝えた。

『分かった。ありがとっ』

『どういたしま……』

『ゼロちゃん!右っ!』

『え……』

 わたしは急いで回避したけど、腕に掠ってしまった。そこからだんだんと身体が凍っていく。

「うっ……くぅ……」

「ゼロちゃんっ!!」

『あははは!これで一人は死んだねぇ!後はあんただけだよ!』

 この吹雪の中、リン一人で雪女と対峙する。

 わたしの方はどんどん侵食されていく体をどうすればいいのかを考えていた。そして、偶然閃いた方法を試す。

「魔力転化!ベース氷!」

 すると、侵食されていた氷がわたしの一部になり全身が氷となる。そんな時、リンから念話が飛んできた。

『ゼロちゃん無事っ!?』

『氷に魔力転化したら大丈夫だったのー』

『だったらやられたフリしててっ!わたしもやられたフリするからっ!』

『分かったのー!』

 リンが一体なにをしようというのか分からなかったけど、リンに任せてれば大丈夫だと思う。

『これであんたも死ねぇ!』

「ダメっ!躱しきれないっ!」

 リンの腕に氷柱が掠って、わたしと同じように身体が侵食されていく。

「……魔力転化。ベース氷……」

 リンは小さくそう呟き、侵食を擬態する。

『あははは!あっけないねぇ!』

 わたしとリンはその場に動かずに、やられたフリをする。

 次第に吹雪が収まり、雪女が姿を現す。

『ふんっ。私に勝とうなんて千年早いんだよ。小娘達』

 雪女はゆっくりとリンに近づく。その時、またリンから念話が飛んできた。

『ゼロちゃんっ!転移で雪女の上に転移して、そのまま押しつぶして!』

『分かったのー!』

 わたしは雪女のギリギリ上に転移して、押しつぶす体制に入った。

『ぐっ……!あんた生きてたのかっ!』

「へへんだ!わたし達があれくらいで負けるわけないもん!」

「達……だって?」

「雪女さん。わたし達の勝ちです」

『んなっ!あんた達どうやって私の攻撃を!?』

「氷に体を転化させただけです」

『……はぁ。そんな事でわたしの技が破られるとはね……。さあ早く殺しな』

 雪女が諦めたようにわたし達にそう言ったその時だった。

『フガー!!』

『あ、あんた!どうしてここに来たんだい!』

 身体が白い毛で覆われた大きな人のようなものが現れた。

『フガフガ!』

『私はあんたをこき使ってたのに?』

『フガフガッ』

『それでもって……』

 フガフガ言っててよく分からないなぁ。

「その人なんて言ってるのー?」

『死ぬな、僕にはあなたが必要だと言っている』

「そ、それってプロポーズではっ!?」

『私達は付き合ったとことなどないんだが?』

「なら付き合いたいんですよっ!あぁ羨ましいですっ」

『あんた……。そう……なのかい?』

『フガー!』

『そ、そうか……』

 雪女の白い肌が赤くなる。おぉ?これは?

「ど、どうだったんですか!?」

『夫婦になりたいそうだ。こんなの初めてでなんて言っていいか……』

「気持ちに素直になればいいんですよ!さぁ、雪女さん!」

『あ、あぁ。分かったよ。……あんたの気持ち嬉しいよ。よ、よろしく頼む……』

『フガー!』

「うんうん!やっぱり恋はこうじゃなきゃっ!」

「結局、どうなったのー?」

「雪女さんが付き合う事になったっ!」

「おぉ!」

 雪女が付き合い始めたのかぁ。だったら殺せって言うのも撤回だねぇ。元々殺す気は無かったけどねー!

『フガフガッ!』

『あんた達に、雪女を殺すなら僕が相手になるって言ってるよ』

「そんな事しないのー!」

「幸せな時間は人でも魔物でも等しく大切なものですしね」

『フガ』

『ありがとう、だと』

「いえいえこちらこそっ!いいものを見せてもらいましたし!」

『フガァ……』

 リンと大きな人は二人して頭を掻きながらペコペコ頭を下げあってる。

『あいつらは何をしているんだか……』

「ねぇ、雪女ー?」

『なんだい?言いたい事があるのかい?』

「仲間になってー!」

『仲間ってあんた、私達敵同士だったじゃないか』

「でも今は楽しく話してるし、大丈夫かなーって?」

『はぁ。あんたには最初から最後までペースを崩されるよ。……いいだろう、私が力を貸す。あんたとあの小娘にね。だけど一緒に行くわけには行かないから、私の力が必要になったら呼びな』

「雪女、ありがとー!それと幸せにー!」

《使い魔に雪女がが追加されました》

 こうして私達の戦いは終わった。

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