異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第112話 追跡と察知と鉄拳のようです

「お、おい待っ……痛っ!」

 現在、フェイを追いかけて帝都内を走り回っている俺。

 周りから見れば幼女を追いかける男性という感じなので、例によってロリコン達に様々な物を投げられている。

 例えば、卵であったりトマトであったりといったものだ。

 その中でも一際危なかった物はナイフや植木鉢、吹き矢などの凶器だ。

 もうこれ完全に殺しにきてるだろ。内情知らないからしょうがないんだけどさ。

「フェイ!俺の話を聞け!お願いだ!」

「どうせそんなこと言って私を捕まえてあんなことやこんなことするんでしょ!」

「ちょ!そんな事でかい声で言ったりしたら……ってぇ!」

 誰だ今俺に魔法打ったやつ!そこまでしなくていいだろ!

 俺は悪態を吐きながらも、逃げ回るフェイを追いかける。

 商店街や住宅街、路地裏などその他様々な所を通る。

 これめっちゃきついんだけど……。どんだけ走るんだよ……。これマジでトレーニングになるわ。

 さすがの俺もずっと走り続けて疲労がたまり疲れ始めた。しかし、俺と違ってフェイは未だに軽やかに走り続けている。

 もしや、狼の部分が出ているのではないのだろうか……?それで持久力がただの人間の俺よりあるという……。

 という事はこれからまだ走り続けなければならないのか。きついなぁ。

 あ、そうだ。俺の感知は帝都内が範囲だから、それで追っていって、止まった時に転移すればいいんじゃ?

 俺は感知を発動させた。そこで、ふとある事に気付く。

 なんかさっきから俺達を追い掛けてる奴がいるな?執念深いロリコンか?それとも……。

 まぁいい。確認すればいいだけの事だ。次に角を曲がった時に嵌めてみるとするか……。

 それをするとフェイを追いかけれなくなるが、感知で追跡してればまぁ大丈夫だろうし、危険の可能性がある方を先に排除していた方がいい。

 そうして遂に角を曲がる時が来た。


◇◆◇◆◇


ーside:女神ー

 彼とフェイを後を追い始めて走り続ける私。道行く人々が立ち止まり、私を二度見する。

 まあ私は伊達に女神やってないし、美しいのは仕方ないけど、美しすぎるのも罪よね。さっきカップルの彼氏の方が私に見とれてて彼女にビンタされてたし。

 まあそんな事は今はどうでもいいの。私は彼らを追わないと!

 何度目かの角に差し掛かり、彼らはそこを曲がる。

 あの二人結構なスピードで走ってるからすぐに見失いそうなんだよね。ちょっと急ごう。

 私は走る速度を上げて角を曲がった。すると司会が一気に暗くなって何かにぶつかり、押し倒す感覚がした。

「いたたたた……。すいません、私急いでてて」

「ほぉ?お前すぐに謝ることが出来たんだなー」

「えっ?……ななななっ!」

「しっかしまあ俺達を追いかけてたのがお前だったとはなー。なぁ、女神?」

「なんであなたがそこに居るの!」

 私が押し倒していたのはなんとさっきまで追いかけていた彼だった。


◇◆◇◆◇


ーside:主人公ー

「なんであなたがそこに居るの!」

 そんな事をいう女神。俺としては女神がここに居ることの方が驚きなんだが。女神は皆と一緒にクエスト受けに行ったはずだろ?

「お前、クエストは?」

「ギクッ!」

「そういうのは口に出したらいけないやつだぞ」

「ギクッ!」

「お前、もしかしてそれで誤魔化そうとしてない?ていうかしてるだろ」

「ば、ばれた?あははー……」

「で、クエストは?」

「えっと……辞退させていただきました……」

 それはとどのつまりサボりという事だな。またこいつは馬鹿な事をしようとしてたんじゃないだろうな。

「はぁ……。それでお前は辞退して何をしようとしてたんだ?正直に答えないとどうなるか分かってるな?」

「……飲み屋さんに行こうかと」

「お前はアホか。こんな朝っぱらから飲むんじゃねえ。第一、酔いつぶれたお前は色々と緩くなるんだから一人で行くな」

「およ?私を心配してくれてるの?」

「お前は既に頭が緩いようだな。そんなお前に特別に教えてやる。お前は色々と緩くなると所構わずうざ絡みしにいくんだよ。そのせいで他の客に迷惑かけるんだから、止めるのは当然だ」

「えっ。そうなの?私そんな事してた?」

「割とな。大体俺と一緒に言ってたから殆ど俺が被害を被っていたがな」

 まあそのおかげで、天界の面白い話が聞けたからいいんだけどな。しかし天界の事を赤の他人に話しても、何この人頭がおかしいの?くらいにしか思われないのがみそ。

「そっかぁ。酔ってたらそうなるのかぁ。ごめんね?」

「いや、別にいいんだが。……さて、追っていたやつの正体も分かったし、フェイを追いかけるか」 

「私もついて行く!」

「お前の好きにしろ」

「やったぁ!」

 そうして俺達は再びフェイを、追いかけることにした。


◇◆◇◆◇


ーside:フェイー

「はぁはぁ……。も、もう追ってこないみたい……」

 つ、疲れた……。久しぶりに外を走ったけど、身体が鈍って酷いことになってる。

 それにしても、あいつはなんなの……。転生者だとかなんとか言ってるし、その他のメンバーも凄いことになってるし。

 おまけに、あいつは救えない程の変態で、頭のイカれた犯罪者……。

 もう頭がいたい……。お城戻ろう……。

 私はお城に向かって歩き始める。

 あーもう、足が痛い。これじゃああいつが言ってたトレーニングをしただけじゃん。なんか損した気分。

「あら、フェイじゃないの。こんな所で何をしているのかしら?」

「あ、ジュリ!それに皆も!」

 こんな所で皆に会えるなんて!私の話を聞いてもらおう!

「それがね!あいつが・・・」

 そして、私はあいつに教えられた事を話し、どうしてこんな所にいるかを説明した。

「・・・というわけなの」

「あの人が教えてくれた事は殆ど正しいわよ。だいたいあの人嘘付かない人だしね」

「えっ。ほんとに?嘘じゃないの?」

「ええ、本当の事よ」

「あわわわわ……!」

 あ、頭が破裂しそう……。後でまたちゃんと一から分かるように説明してもらうことにしよ……。

「それにしても、あの人がフェイにしようとしたことは許せないわね」

「そうですね。主様はそんなお人ではないと思っていたのに残念です」

「ん。あたしが成敗する」

「わ、わたしもです!ちゃんと叱って元のあるじさまに戻すんです!」

「マスターのエッチー!」

「み、みんな……!」

 皆は私の言うことを信じてくれて、あいつを懲らしめてくれるみたい!これで私も一安心。

 するとそこへ、例の彼が現れる。何故か女神を連れて。

「お、いたいた!おーい!……ん?なんで皆がこんなところに?それに何か顔が怖い……」

 あいつは私を見つけて呼んだ後に、私の後に控えていた皆に気付いた。

「ここに居る皆は私の味方になったの!」

「味方って……もしかして!フェイ!ここに来るまでの話を皆にしたのか!?」

「何を当然の事を言ってるの!するに決まってるでしょ!」

「嘘だろ!これじゃ俺が死ぬだけだ!」

 あいつは皆から逃げようと背を向けた。

「逃がさないわよ」

「あたし達から逃げられると思ったら大間違い」

「主様には罰を受けてもらいます」

「そして、まともなあるじさまに戻ってもらいます!」

「マスターのエッチー!」

 皆が逃げようとしたあいつを取り囲む。

「さあ!大人しく私達の怒りの鉄拳を受けなさい!」

 そして私達はじりじりとあいつににじり寄る。


◇◆◇◆◇


ーside:主人公ー

「さあ!大人しく私達の怒りの鉄拳を受けなさい!」

 だから、その怒りは関係ないんだってば!俺何も怒られる事してないのに!

 俺は助けを求めるように女神を見る。

「……ふーふー」

 くっそぉ!こいつ目を逸らして吹けもしない口笛吹き始めやがった!見捨てる気満々かよ!

 そんなことをしている間でも、どんどんにじり寄ってくる皆。

 くっ!俺には何の策もない!こうなるとか誰が予想出来るかってんだ!

 そうして俺はいわれもない怒りを受けることになったのだった。

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