異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第72話 予選の三組目と四組目のようです

「マスター行っくるのー!」

 そう言ってリングの方へ走って行くゼロ。

「あんまりむちゃするなよー」

「うん!」

 まあゼロのことだ大丈夫だろうが……。心配なのはあの無邪気さだ。あの無邪気さ故に何をしでかすかわからんからな。

 少ししてリング上に三組目の選手が集まった。もうすぐ始まる。

「続いては予選第三組目だぁ!!この三組目は何を見せてくれるのか!!そんな観客の期待が高まっているぞぉ!!」

「この三組目には獣人の六種族はいない。本戦に残りたいと思っているやつがいたらチャンスとも言える」

 おっ?そうなのか。さすがエルシャさん。ちゃんと選手を見ている。

「選手の皆さん頑張ってください!!では、第三組目、試合開始!!」

 試合開始の合図と共にゼロは短刀を抜き、それを前に構える。

「皆覚悟してね!」

 ゼロはそうリング上の選手に告げると容赦なく選手を殺していく。

 いくら蘇生されるからと言っても斬りつければ血が出る。それが即死の斬りだった場合は見ていて気分が悪くなる程のものだ。とどのつまりグロいのだ。

「「きゃあぁぁあ!!」」

「おっとー!観客席から悲鳴だぁ!!リング上では殺しが勃発!!殺しているのはまたしても少女!!今回の武道会は少女が強い!!」

 すいません……。それ全部うちのパーティメンバーです。それと先に言っておきますがこの後もあと二人ほど出てきます……。

「……ん?あの少女どこかで……?」

「解説のエルシャさん、どうかされたのですか?」

「いや何でもない。それよりあの少女の名前はなんというのだ?…………ゼロ?ゼロだと!?」

 そういえばエルシャさんってゼロ知ってるんだっけ。俺がいるってバレたかな?

「……ゼロはスライムであの人の従魔だったはずだから武道会には出られない……。いやあの人だ。従魔から人間にしてもおかしくない……」

 小声で呟いても俺には聞き耳のスキルで聞こえてしまってるんですけど!それに聞いてみれば俺が人間にしてもおかしくないって、それはおかしいと思う!

「解説のエルシャさんはあの少女のことを知っているのですか?」

「いや、他人の空似だろう。まあ似た少女を知っているというだけだ。しかし、あの少女強いな。人間の急所をよく知っているようだ。最初からそこしか狙っていない」

「なんと!あのゼロという少女も解説のエルシャさんを唸らせる程の実力の持ち主だとは!!これは本戦出場確実なのか!!」

 確かに見た感じあのリング上で目立ってるのはゼロだけだ。まあ悪目立ちなのだが……。このままいけばゼロは本戦出場確定。果たして残りの一枠は誰になるのか……。

 俺が誰か有力候補がいないかと探していると見知った顔を見かけた。

 ん?あそこにいるのはトミーさん?という事は牛若丸のパーティがこの帝都に来ているのか!

 トミーさんとはドラゴン討伐の時、一緒に戦った。あと片翼の翼もだ。

「もう残り少なくなってきたぁ!!今回は少女に殺られているのしか見てない気がするぞぉ!!少しは男もがんばれぇ!!」

 あの司会の人結構無茶言うなあ。あれはどう見ても頑張ってるけど負けてる。これ以上は頑張れないだろうな。

 それから程なくして、三組目の戦いが終了。

「第三組目の本戦出場者は虐殺の少女ゼロと牛若丸のトミーで決定だぁ!!」

 トミーさん残ったのか。トミーさんってなんだかんだ言ってパーティリーダーやってて強いしな。当然ちゃ当然か。

 試合を終えたゼロがうきうきとした表情で俺たちの方へ戻ってきた。人を殺した後とは思えない程の表情である。

「みんな!ただいまー!」

「おう。おかえり」

「マスターわたしどうだったー?」

「そうだなあ。とにかく人を殺しすぎだったかもな」

「えー、そうかなー?わたしがスライムの時はスライムいっぱい倒したよー?」

「あー。そっかゼロは元々魔物だもんな。そりゃ分からんかもな」

 魔物だったらゼロみたいに生き残る為に同族殺しとかするもんな。分からないのも当然だ。

「まぁよく戦ってたと思うぞ。短刀の使い方も上手くなってたし」

「えへへっ!でしょー!」

 そういって抱きついてくるゼロ。まあ今くらいならいいか。本戦出場のご褒美ということで。

「四組目の方はもう始まるので準備お願いしまーす!」

 四組目と言えばミルか。ミルは負けず嫌いだからな。きっちり本戦出場の権利を取るだろう。

「じゃいってくる」

「おう。いってこい」

 ミルは見た目では分からないが中ではすごく燃えているようだ。思考解読で一人残らず消してやるとかいうのが読みとれた。

 ミルが脳筋過ぎてやばい。どれくらいやばいかっていうと、トイレに入った時紙がないってくらいやばい。

 脳筋なのはもう手遅れ。トイレで紙が無いのだってしてしまった時点で手遅れだもんね!それと一緒だ!

 ……俺は何をくだらんことを。さて、もう始まるぞ。

「次は予選第四組目!!ここまで目立っているのは六種族と少女だけだぁ!!新しい風はこの組で吹くのか!!いや!吹いてほしい!!」

 すいません!ほんとすいません!!今回もうちの少女が目立っていきます……。

「では第四組目、試合開始!!」

 開始と同時にミルが天に向けて手を伸ばす。するとミルが結界に囲まれた。

 ミルは完璧に防御を固めたな。ただ、結界の中から何をしようとしてるのだ?今だに腕を上げてるが……。

「な、なんだぁ!!リングの上空につららが無数に発生したぞぉ!!一体誰が氷魔法をつかっているんだぁ!!」

「氷魔法をつかってるのはあたし。それじゃ残りたかったら自分でどうにかして。……アイスランス」

 ミルがそれっぽい技名を呟き、つららが一斉に選手に襲いかかる。

 つららは頭に刺さったり、腹に風穴を開けたり、腕や足をちぎっていったりと相当に悲惨なことをしていく。

 つららの強襲が収まった頃にはリング上は地獄絵図だ。ほとんど血で埋め尽くされてる。

 うわぁ。ゼロよりひどいぞこれは……。まだ生き残ってるやついんの?

「な、なにぃ!!一瞬にして約四十名の命が奪われたぁ!!あの少女は規格外の少女だぁ!!未だかつて無いほどの残忍さをみせる!!これに耐えた強者は果たしているのかぁ!!」

 リング上を見てみると結界魔法で守ったミルともう一人、うさ耳で中性的な顔をした獣人が立っていた。

「ふぅ。まさかこんなことになるなんてびっくりだよー。君すごいねー」

 声を聞いてみても男か女は判断できない。容姿で判断しようにも白い髪に、華奢な体をしていて胸はないように見える。

「あれは白兎族のラビだな。小回りが利くことで有名な白兎族だがその中でも特に状況判断に優れすばしっこい。性別に関してはラビの親しか分からんと噂で聞いた。巷では性別ラビと言っているようだ」

 あ、わざわざ性別のこと事までありがとうございます。多分今会場にいた全員がそう思ってますよ。

「エルシャさんありがとうございました!!ではこれで試合終了です!!」

 めっちゃ早く終わったなあ。ちょっとは自重を覚えようぜ……。

「第四組目は残忍さの化身ミルと、白兎族のラビが本戦出場だぁ!!」

 開始一分程で終わらせたミルは怒ったようなでもいじけてるような様子で戻ってきた。

 はて?何があったのだろうか?

「お疲れミル。で?何でそんなに浮かない顔をしてるんだ?」

「一人残らず消せなかった……!いけたと思ったのに!」

 マジでやるつもりだったのかよ!っていうかほとんどその通りになってしまってるんだが!

「あのラビってやつあたしのアイスランスを全部かすりもせずに避けてた。悔しい」

「そんなに簡単にいったら武道会してる意味がないから。あとミルやりすぎ」

「ん」

 はぁ全く。目立ちすぎなんだよ。ここ目立たないようにして、本戦で本気を出すとかしないと。

「会場にご来場の皆さまにお知らせです。予選第五組目はこれより一時間後に開始とさせていただきます」

 五組目は一時間後か。まあお昼も近いしな。丁度いいだろう。

 こうして第三組目と第四組目の予選が終了した。

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