異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第63話 参加登録するようです

 俺はある平原を一人で歩いていた。なんの宛もなくただひたすら歩いていた。

 そんな俺の目の前に、空から1つドラゴン肉の様なものが降ってきた。なぜに肉?と思ったりしたが対して不思議に思わず、そのまま素通りした。

 ところが、それからすぐにまた肉が降ってきた。

 だが今回はひとつやふたつどころではない。空を覆い隠すほどに大量の肉が降ってきたのである。

 あぁ俺死んだなって思った。まさか死因がドラゴン肉によるものとか誰が考えるかね。俺そんなので死にたくないんだけど。

 なんて下らないことを考えながら俺はドラゴン肉に包まれた。ドラゴン肉を海としたらその海にダイビングしている感じ。当然のように息は出来ない。

 えっ?息が出来ない?ちょマジで死ぬんだけど!

 俺はドラゴン肉の海を必死でかき分けた。ドラゴン肉に包まれて窒息死とかいう惨めな死に方したくなかった。

 どれだけかき分けても先が見えない。息ももたなくなってきた。俺は最後の力を振り絞って身体ごと肉に突っ込んだ。

 その瞬間、新鮮な空気が流れ込んできた。俺は目一杯その空気を吸う。

「はぁはぁ……あぶねえ、マジで死ぬ所だった……」

 そして顔を上げるとそこには、俺の上に乗っかって寝ている仲間達の姿が。

「なんだ……さっきまでのは夢だったのか……。いやしかし待て。俺は確かに窒息死仕掛けた訳なのだが……。こいつらが原因か……!」

「ちょっとあなた……、さっきから何ぶつぶつ言ってるのよ……。うるさくて眠れないわ……」

「俺、危うくお前らに殺されるところだったんだが?」

「……そう。それは良かったわね……ふぁ〜……」

「いや、良くねぇよ!」

「んんっ……うるさい……」

「マスターうるさいの…」

「あ、はい。すいません。以後気を付けます」

 俺は悪くないはずなのに……。なんか条件反射的に謝っちゃったし。自分で皆より下って感じちゃってるのね……。悲しい……。

 それからというもの俺は窒息死が怖くて寝れなかった。そしてそのまま時間だけが過ぎていき、遂には日が昇ってきた。

 日が昇り始めると皆が起き始める。起きて俺の顔を見ると毎回違う反応が帰ってくる。ダイジェストで見てもらおう。

「マスターの顔芸おもしろーい!」

「主様?ちゃんと寝ないと体に悪いですよ?」

「目が……死んでる……?」

「あなた寝ないで何してたのよ?ナニしてたの?」

「あ、あるじさま。大丈夫ですか?」

「あはははは!何その目!気持ちわるー!」

「ニャ?ニャニャー。ニャン」

 順番にゼロ、レン、ミル、ジュリ、リン、女神、シロだ。シロは俺の頬を優しくペロペロしてくれた。でも、その気遣いがまた俺の心を抉るんだなー、これが。

 寝不足ってこんなに辛いんだな。主に精神が。はぁ。まぁいいや。俺の精神なんてロリコンなんて言われてた時からマイナスだしな!今更だ!

 俺はそう考えて立ち直り、皆と一緒に朝食を取る。魔王様から譲り受けてたものだったのでとても美味しかった。

「さて、朝食も食べ終わった事だし今日一日何するか決めるか。まぁ最初にすることはゼロ達の冒険者登録で決まってるんだが、その後の事でよろしく頼む」

「それなら武道会の参加登録をやりに行った方がいいんじゃない?」

「確かにな。で、参加登録の場所はどこだ?」

「帝都の中心地に大きい会場があったはずよ。そこに行けばいいんじゃないかしら」

「んじゃ、そこに行ってみるか。皆もそれでいいか?」

 皆も賛成のようだったので、参加登録をやりに行くことになった。

 だが、まずは冒険者ギルドだ。

 よーし!探すぞ!と意気込んだ途端に女神がこっち!とか言って皆を連れていった。いつになったら俺は冒険者ギルドを探すことが出来るのだろうか……。

 冒険者ギルドを訪れた俺達は受け付けの方に行き、ゼロ達のギルドカードを発行した。

 ゼロ達は大喜びだった。ゼロなんて喜びすぎてスライムになった挙げ句、ギルドカードに擬態した。どっちが本物でしょう!とか言ってくるゼロが可愛いかったです。

 ゼロ達の冒険者登録が終わったから、次は武道会の参加登録に行かないとな。確か会場は中心地って言ってたな。そんじゃ行くか。

 中心地の大きい会場はすぐに見つかった。なんて言うか雰囲気がコロッセオに近い。まぁコロッセオよりも頑丈そうではあるのだが。

 その会場の入り口付近に『武道会に参加したい方はこちらへ』という旗のようなものが上がっていた。

 旗も上がってるし、こっちであってたみたいだな。

 俺達は受け付けをしているとこに向かった。

「すいません。武道会の参加登録に来たんですけど」

「何名の方が登録なさいますか?」

「私は出ないからいいよ!女神の私が出たら誰も勝てないし!」

「はいはい、分かったから落ち着け。それに女神ってこんなところで言っていいのかよ」

「しまったー!すっかり忘れてたー!」

 女神はうわー!とかうがー!とか言っている。

 受け付けの人がめっちゃ変な人を見る目で見ている。女神には黙っておこう。なんか可哀想だし。

「あ、従魔がいる場合は数に含めるんですか?」

「従魔はその人の武器と見なしますので、数には入れなくて良いですよ。ただし、従魔の参加は一人につき2匹までとなっています。ですから、もしそれ以上の従魔がいる場合は、こちらでどの従魔が参加するのかを決めていただくことになっています」

 そういう事なら俺の従魔はシロしかしないし大丈夫だろ。

「それじゃ、6人参加でお願いします」

「それでは参加する6人の方はこの用紙にお名前をお書き下さい。お名前以外の使用する武器や職業などは任意でお願いします」

「分かりました」

 俺は受け取った用紙を皆に配り、さっき受けた説明をした。

 それぞれがペンを取り、記入をしていく。かくいう俺も同じだ。

「ねぇねぇマスター?」

 するとゼロが俺を呼んだ。俺は用紙が風で飛ばされないようにその上に置き、ゼロの方を向いた。

「ん?どうした?」

「ここの名前のところ、ゼロって書けばいいの?ミルとかジュリみたいに長い名前ないの?」

「おう、そうだぞ。ゼロとレンとリンは元々従魔だからな。従魔の時の名前がそのままって感じだろうな」

「分かったー!」

 わかってくれたようで何より。さて、俺も書くか……?あれ?用紙がない。どこいった?

「あ、用紙なら私が書いて出したよ!ふふふ!褒めてもいいよ!」

「ちょっと待て。女神、お前俺の名前知ってたか?」

「え、あ、いやー……。てへぺろ!」

「一体なんて書いて提出した!言え!さもないとお前のあることないこと皆に吹聴してまわるぞ!」

「ごめんなさい!言うからそんなことしないで!」

「ほう。じゃあ言ってみろ」

「ロ、ロウリ・コーンって書きました……」

「…………もう一回」

「だから、ロウリ・コーンって……」

「こんのばかたれがー!お前は俺を社会的に殺す気かのか!」

「ひぃ!あ、謝るからその拳を下ろして!お願い!」

 俺は下ろすことなく女神に拳骨を食らわせる。今回はさすがに制裁を食らわせなければ俺の気が済まん。

 俺は女神に制裁を加えたあと受け付けの人に名前の変更が出来ないか確認した。すると、受け付けの人は言った。

「すいません……。さっきので既に登録してしまいました……。変更するのは難しいかと……」

 と。聞いてみると、どうやら契約というスキルで管理をしていて、既に今大会と出場者を契約という形で結びつけているようだった。その契約の時に必要なのが名前と言うことだ。

「あの方に、あの人の用紙ですって言われて渡されたのでてっきり……。すいません」

「いえ、悪いのはあいつですので」

 変更が出来ないのであれば仕方がないか……。だがしかし女神を許すわけじゃないぞ。しっかり罰を受けてもらう。

 その後、書き終わった皆も提出をして、参加登録は終わった。

 はぁ。俺、大会出たら色んな意味で注目されそうだ……。

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