異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第58話 現状を聞くようです

 俺は魔王様を部屋に招いた。勇者達と戦ってからは初めて対面する。

 なんでか分からないが少し緊張してくるな。

「調子はどうだい?」

「いい感じに回復しました。今からでもしっかり動けそうです」

「それは良かった。君に万が一があったらと思うと夜も寝れなかったよ」

「そんな大げさですよ」

 魔王様は俺の緊張を感じ取ってくれたのか、いつもより軽い感じで接してきてくれた。ありがたい。

「魔王様。タクマ達はどうしてますか?」

「タクマ君達には魔法陣の開発を手伝って貰ってるよ。って言っても今は魔方陣について勉強中何だけどね」

「そうですか。良かったです」

 タクマ達は上手くやれてるようだ。ひとまず安心だな。もし、ここでまたなんかやってたら俺なんのために頑張ったんだってことになるしな。

「それでだね、君に聞きたいことがあるんだが……」

「なんですか?」

「そこにいる女神っぽい人はどなたか教えてくれないか?凄く神聖なものを感じるんだが……」

「残念なことに、ぽいじゃなくて本物の女神です」

「残念って何よ!」

「こういう所が残念っていうんだよ」

「これのどこが残念よ!いたって普通じゃない!」

「女神でそれが普通ってのはちょっとなぁ……」

「あなた女神をなんだと思ってるの!」

「はっはっは!確かに君の言ってた通りだな!全然女神っぽくない!」

 さすが魔王様。話が分かる人だ。多分他のみんなも魔王様の言葉に頷いてるし、どう考えても俺の方が正しい。

「みんなして私をいじめて楽しんでるんでしょ!この悪魔!浄化してやる!」

「お前の方がよっぽど悪魔だわ!とりあえずお前は黙ってろ!」

 こいつがいるとマジで疲れる。

「私、女神様はもう少しお淑やかな人だと思ってました」

「わ、わたしも……」

 今女神の方から2回ほどグサって音が聞こえた気がしたがまぁ気のせいだろ。

「でも、これくらいの女神の方が取っ付きやすくていいんじゃないかしら?なんて言うかこう駄女神みたいな感じで」

「駄女神……。しっくりくる」

「それは言い得て妙だね。ジュリ君といったか。いい感性を持ってるね」

「わーい!ダメがみだってー!おもしろーい!」

 おや?次はさっきの倍近くグサって聞こえた様な?……いやいや、気のせい気のせい。

「まぁ、そう言ってやるな」

 女神が何故か俺の方を輝いた目で見つめてくる。

「この駄女神はもう手遅れなんだ。あんまり言うと可哀想だろ?」

「うわぁーん!この鬼畜!悪魔!」

「はいはい。分かったから静かにしてろ」

 俺は女神を放置して、とりあえずベッドから起きあがる。

 俺はそこで気づいた。何故か服が変わっている。

 いやまぁ、戦ったあとの服でベッドに入るわけにはいけないのだから別にいいんだが、問題は誰が着替えさせたかだ。

「……俺の服って誰が着替えさせた?」

「それは私だね。私にかかれば着替えさせることなんて容易いことさ。でもなんかそのあと君のお連れの子達に怒られたんだけどね」

「魔王様でしたか。魔王様で良かったです。他の皆だったらどうなってた事か……」

 ほんとに魔王様で良かったー。皆、俺の知らない所でよりにもよって俺に何かしようとするからな。

 それはそうとして、俺がベットから起き上がった目的を忘れてはいけない。

「魔王様。今勇者達はどこにいますか?」

「勇者達なら今食事中だよ。君も2日寝ててお腹空いてるだろうし一緒に食べてくるといい」

「ありがとごさいます。ではお言葉に甘えて食事を取らせてもらいます」

「食事…?あたしもいく…!」

「わたしもー!」

 薄々分かってはいたが、お前らは全く……。

「お前ら少しは遠慮というものをだな……」

「はっはっは!別に構わないよ。お腹一杯食べるといい」

「あ、なら私も食べてみようかな。この世界の料理食べたことないし」

「女神様のお口に合うかどうかは分かりかねますが……」

「ん?そんなの気合でどうにかなる!」

 おっと女神さん?それはもう脳筋の考えじゃないですかね?女神なら女神らしくしていてくれませんか?俺が恥ずかしいです。

「ならもう皆で行った方がいいんじゃないかしら?」

「そうだな」

「ニャン」

「シロも賛成だそうだ」

 皆ももうそのつもりだったらしく、全員賛成だった。

 そして、俺達は勇者達が食事をしているであろう部屋に向かった。多分あの来賓室みたいな所だろう。

 目的の部屋につき、中に入る。そこには楽しそうに話をしている勇者達がいた。

 うん。いい傾向だ。全員心に余裕が持ててる。

「やっと起きたか。お前寝すぎだぞ?」

「うっせ。お前がやったんだろ。あの時の傷結構深かったんだからな」

「お前なら死なないと思ってやった」

「鬼かよ……」

 タクマと話すのも久しぶりだが、ぎこちなさもなく、普通に話すことが出来た。

 他の皆も同じ様だ。所々で笑った顔がみえる。

 心配してたけど杞憂だったな。

 俺達は話に花を咲かせながら、食事を取ることにした。いくつか話していると、タクマ達の今の話になった。

「そういえばタクマ達は魔方陣の勉強してるんだって?」

「そうだな。魔方陣は理論を知らないと作ることが出来ないからな。早く元の世界に戻るために勉強してミクトリアさんを手伝う予定だ」

「いい事じゃないか。頑張れよ」

「あぁ。だが、その前にしなければならん事がある」

「しなければならない事?なんだそれ?」

「教皇に会いにいく。落とし前を付けるためにな」

「大丈夫なのか?教皇って話を聞く限り結構やばそうだか……」

「それを含めての落とし前だ。俺達全員で考えた結果だ」

「そうか。ならもう何も言わん」

「感謝する」

 タクマ達は自分にけじめを付けようとしているのだろうな。それなら邪魔は出来ない。

「なーに暗い顔してるの!こんなに美味しい料理があるのに台無しになるじゃん!」

 雰囲気をぶち壊していく所とかが駄女神と言われる原因なのを分かっているのだろうか。……いや、分かってないな。だってこいつ駄女神だし。

 でもまぁこいつの言う通り食事くらいは楽しむか。

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