異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第51話 勇者達が現れたようです

 次の日の朝、俺の目が覚めたのはパーティメンバーの皆がまだ寝ている時だった。

 ゼロとレンとリンは寝なくても大丈夫なはずなのだが…。どういう事なのだろうか?よく分からん。

 俺はそんな疑問を抱ながら、皆を起こさないように極力音を立てずに部屋を出た。

「ニャン?」

「さっきまで寝てたのに何でそこにいるんだよシロ…」

「ニャニャッ」

「いや、そんなにドヤられても…。……はぁ。ほれ頭の上来るか?」

「ニャ」

 俺がシロに手を出すとすぐに頭の上に乗ってきた。

 もうすっかりシロの定位置になってしまったな。前まではスライム状態のゼロが乗ってたのにな。

 最近はゼロもレンもリンもずっと人化した状態だよなぁ。

 最初の魔物要素とか何処に行ったのやら…。

 まぁ細かいこと気にしても1日は始まらない。

 ということで、俺は昨日魔王様に連れられた部屋に向かった。

 その部屋には既に魔王様がいて、一人で食事を取っていた。

「魔王様。おはようございます」

「おはよう。早いね」

「皆が遅いだけですよ」

「む?そうか。昨日の夜に皆すごい声を出していたと記憶していたから、起きるのが遅くなるものだと…」

 なぬっ!?昨日のアレが聞こえてしまっていただと!?

 魔王様は声だけ聞いて、如何にもいけない事をしていると思っているんじゃないだろうか…!

 俺は魔王様の誤解を解くために必死で説明した。

 もちろん、ふにふにという単語はマッサージと言う単語に変えてな。

「…ふむ。なるほどそんな事をしていたのか」

「ええ。ですから決していかがわしいことは何も無いので、誤解しないでください」

「うむ。了解した。そこで提案なんだが、君のマッサージとやらを私にもやってくれないか?」

「……肩を揉む位ならいいですよ」

「それで十分だよ」

 俺は恐る恐る肩を揉み始める。

 やるからにはしっかりとしなければ。

 俺は筋肉を揉みほぐし、柔らかくしていくイメージで肩をもんだ。

 すると魔王様から、甘い吐息が漏れ始める。

「はぁ…ふぅ…」

 ………誰得何でしょうかね…。

 ただまぁ気持ちがいいのは確かなのだろう。

 すると目の前のドアが開いてジュリが入ってきた。

 俺は失念していた…。気付くのが遅れたが、ドアが眼の前にあるとどうなるのかを…。

「………ごゆっくり」

 そう言って、ジュリは開けたドアを閉めて出て行った。

「ちょっと待ってくれー!誤解なんだー!」

 俺はその場でそう叫んだ。

 さすがに、この状態を放っておくわけにはいかないからな…。

「言われなくても分かっているわよ。ただそうした方が面白いと思っただけ」

 ドアを開けながらそんな事を言ってくるジュリ。

 こいつ確信犯だったか…!だが、今回に限っては思考を読んでくれてありがとうございます!

 まぁこんな事もあり、魔王様の肩揉みは終わった。

「いやー君のマッサージは気持ちいいね」

「俺にとっては不本意なんですけどね…」

 いや、マジで…。これのせいでどれだけ俺が苦労していると思ってるんだ…。

 俺の理性を保つのに苦労しているのは当然なのだが、他にもゼロにせがまれるのをどうにかしたり、ふにふにという行為が他の人に知られないようにしたり…。

「君はこれだけでお金が稼げるよ」

「それはやめてください。お願いします」

「ふむ。そうか。なら仕方ないな」

 何が仕方ないのだろうか。ま、まさか俺が店を開いたら毎日のように通うとか言い出すんじゃないよな…?

「君がもし、店を開いたら毎日通おうと思ったんだけどね」

 そのまさかだったー!否定おいて良かった!

 俺は心底安心しながら愛想笑いしか出来なかった…。

 それからは、コックに朝ご飯を作って貰らうことになった。

 レンとリンは料理が作られている最中に起きてきた。

 なんかめっちゃすっきりした顔をしてたが、俺は気付かないふりをしてた。

 ゼロとミルは、料理の匂に釣られて起きてきたようで、部屋に来てからの一言目が、ごはん!だった。

 お前ら朝なのにどんだけ食い意地張ってるんだよ…。

 そして、皆でわいわいしながら朝食を取る。

 ゼロがミルにリベンジを申し出たり。

 魔王様がそこに混ざったり。

 レンとリンがジュリと何か危険な話をしてたり。

 とても賑やかだった。

 だけど、その危険な話は俺絡みですよね。あんまり激しい事は良してください…。

 ちなみに俺はというとシロと一緒に朝ご飯を食べていた。

 シロのご飯を食べる姿が可愛くて、ずっと見ていられるほどだったぜ。

 こうして朝食の時間も終わり、勇者を待つだけとなった。まぁ今日来るって訳でもないのだが。

 皆にはすぐに出る事が出来るような感じでくつろげと言ってある。いつ勇者が来てもいいようにしてる訳だ。

 しかし皆はそんな事知ったこっちゃないとばかりに気を緩めている。

 まぁこいつらにこんな器用なことは出来んわな。諦めよう。

 だが皆と同様、俺も暇なので、俺は昨日気になった事を魔王様に聞いてみることにした。

「魔王様。少しいいですか?」

「ん?君か。どうしたんだい?」

「ミルの母親について聞きたくて。他人の事にあまり首を突っ込むのも良くないということはもちろん分かってはいますが、少々気になりまして」

「そうだね…。まぁ君なら大丈夫だろう。妻について教えてあげるよ」

「ありがとうございます」

「と、言ってもあんまり大したことじゃなくて、よくある一般的な事なんだけどね。ミルがまだ小さかった頃に病気で、亡くなったんだ」

「病気…ですか」

「うん。私の魔法でもどうにもならなくてね。私が泣きそうになっても、妻は最後まで微笑んでくれていたんだ」

「強い方だったのですね」

「そうだね。妻にはミルをよろしくって言われてるし、自分より他人を心配出来る人だったよ」

 そう言った魔王様の目はいつもよりも湿っていた様な気がした。

 俺は魔王様の人を思いやる気持ちは、奥さんからしっかりと引き継げていると感じた。

 すると、魔王様の隣に1匹の蝙蝠が飛んできた。

 魔王様はその蝙蝠を手のひらに乗せ、目を見る。

「………そうか。ご苦労であった」

 魔王様がそう言うと、蝙蝠は消えていった。

「何かあったのですか?」

「勇者がそこまで来てとの報告がきた」

「勇者ですか!」

「予想より少し早いが行けるかい?」

「はい。大丈夫です。今から行くので、転移を任せても宜しいですか?」

「それくらいならお安い御用さ」

「では皆を集めて来ます」

 そうして俺は寛いでいた皆を招集した。

 既に皆にはさっきまでの緩い雰囲気はなく、ちょっとでも触ったら切れそうな緊張感が張り詰めている。

「では、魔王様。よろしくお願いします」

「了解した。多分転移した眼の前に勇者がいるだろう。いきなり襲いかかってくる可能性もある。気を抜かないように」

「はい。分かりました」

「では健闘を祈っている。転送!」

 こうして俺達は、遂に勇者一行と顔を合わせる事になった。


 小説家になろう様にて50話までを上げることが出来ましたので、この話を持ってして投稿を開始したいと思います。
 長くお待ち頂いた皆様に楽しんで貰えるよう、一層精進していきたいと思っています。
 では「異世界に転生したので楽しく過ごすようです」をよろしくお願いします。

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