異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第40話 聞いていたのと違うようです

 俺達は鉱山にいつもの転移を繰り返すやつで到着した。

 もう便利すぎて馬車使わなくていいんじゃないかと思うくらい。でもそれすると風情がないからしないけどね。

 冗談はさておき。

 鉱山に無事ついた俺達は圧倒されている。

 だって目の前には冒険者の行列ですよ。皆ジャイアントロックタートルをどうにかするために並んでいるのだろうか?そうだとすると、俺達の番はいつまわってくるのやら。

 すると遠くでドンッ!という音が聞こえた。

 そっちの方を見ると壁みたいなのを殴っている奴がいた。……良く見るとあれ壁じゃなくて亀だわ。ってことはあれがジャイアントロックタートルなのか……。

 大きさは人10人分位か?ってことは15メートル以上か…。でかいわー。でもまぁドラゴン程ではないか。

「ねぇねぇ!早くあれやっちゃいましょ!ね!早く行きましょ!」

「ジュリ。お前は少し落ち着け。頭がおかしくなってるぞ」

「はっ!あまりの興奮に我を忘れてたわ!」

「とりあえず並ぶぞ」

 そう言って行列の最後尾に並ぶ。

 するとミルがため息をついた。

「あれはあたしじゃ無理っぽい…」

「私も無理かと思います」

「わ、わたしもむりかなぁ」

「大丈夫よ!私が支援魔法をこれでもかと言うほど掛けてあげるわ!」

 もちろん俺にも掛けてくれますよね?…ね?

「マスターは何も掛けなくても割れるからいいのー!」

「俺でもあれは無理でしょうよ…」

「やってみないとわからない…!」

「それは最初から無理だって言ってたミルにも言えることだろ!」

「あたし広域魔法が得意だから一点集中は無理…」

「さいですか…」

 たしかにミルは広域魔法ばかり使ってたなぁ。ゴブリンの時なんて何体か同時に消し炭にしてたもんな。

「なんだ嬢ちゃんと坊主もこいつを討伐しに来たのか?」

 後ろからそんな声を掛けられた。いつの間にか俺達が最後尾じゃなくなってたらしい。

「ええ。そうですね」

「はっはっは!お前さん達じゃ無理だと思うぞ?見たところお前さん達は最近冒険者になったんだろ?」

「そんなことまで分かるんですか?」

「あたりめーよ!っと言いたいところだが、装備を見れば誰でも分かると思うぞ?周りと見比べてみてみろ。どうだ?」

 たしかに周りの冒険者はそれ相応の格好をしてる。

 それに比べ俺達はほとんど普段着。まぁこれじゃ誰でも分かるな。

「分かったみたいだな。どう考えてもお前さん達じゃあれをやるのは無理だ。お前さん達より屈強な奴が軒並みダメだったんだぞ?」

 頭ごなしに否定されてしまった。でもまぁ分からなくはない。

 ここで実力を試したルーキーの心が折れて、成長できる芽を摘むのを阻止しようとしてるのだろう。

 だが、そんなことを考えてないうちの脳筋5人。ちょっと不機嫌になってる。

 ちょっとシロが怖がってるでしょ!もうちょっと抑えて!

「嬢ちゃん達を不機嫌にさせちまったみたいですまんな」

「いえいえ。俺が何とかしますよ。それと、挑戦するのは自由なのでやれるだけやってみます」

「そうか。そう言われちゃもうやめろなんて言えねぇな!」

 話しがわかる人でよかった。もしこれでもやめろとか言った暁にはうちの脳筋5人の制裁が待っていただろう。

 想像した俺は恐ろしくて身震いした。俺に身震いさせる奴はお前達くらいだよ…。

「絶対に見返してやるわ!」

「ん!」

「マスターがやってくれるのー」

 おいおい。血の気が多すぎだろ。ほらレンとリンをみてみろ。ふたりで魔法を詠唱して…ってちょっと待てぃ!!

「おいこら!ふたりで何をしようとしてるんだ!」

「わたしたちがバカにされたのが嫌だったから…」

「ちょっと魔法を打とうかと」

「だからって実力行使はやめようね?」

「「はい…」」

「よろしい」

 はぁ。ほんとに疲れるわ…。

 こうして時間は過ぎていき、ようやく俺達の番が回ってきた。

 ていうか待ち時間長すぎ。昼過ぎたじゃん。まぁ食べ物はいくらでもあるからいいんだが、いかんせん暇だ。あいつらが暴れ出さないかひやひやしたぜ。

「ようやく私達の番ね。それじゃ皆集まって。私が支援魔法を掛けてあげる」

 そう言って俺以外の皆に支援魔法をかけていくジュリ。もちろんシロにも掛けている。

 どうして俺だけ掛けてくれないんだよ…。いじめか?いじめなのか?

『あなたはべつに掛けなくても強いじゃない』

『そうだとしても掛けてくれよ…』

『そんなに掛けたいなら自分でやってみたらいいじゃない?』

『確かにそうかもしれんが、仲間はずれは嫌でしょ!』

『そんなにわがまま言ってもなにもしないわよ?』

『えぇー…』

 どうやら俺には支援魔法を掛けてくれないみたいです。掛けたいなら自分でやれと…。まぁそれでもいいけどね…。

 支援魔法を掛け終わった皆が横一列に並ぶ。

「いいみんな?せーので一斉に殴るのよ?」

 ジュリがそう言うと皆が頷く。

「いくわよ。せーの!」

 ドゴンッ!!!

 わぁお。みんなの拳がめり込んでるよ…。どんな力で殴ったらそんなことになるんだ…。

 後ろで見てたさっきの冒険者は顎が外れてしまって開いた口が物理的に塞げれなくなってるぞ。

 5人に殴られたロックタートルの甲羅は徐々にヒビが広がっていってどんどん崩れていった。

「マスターやったよー!」

「おお。よくやったな」

「えへへー」

「待ちなさい。それはフラグというものよ」

 あ。忘れてた。確かに今のやりとりフラグだわ。ということはここからが本番ということか。

 崩れ落ちた岩の甲羅は全て下に落ち、そして新たな甲羅が姿を現した。

 その甲羅は光沢を放っており、不思議な色をしていた。

 とりあえず俺は鑑定する。もしかしたらと思ったからだ。

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【ジャイアントアダマントタートス】
Lv.80
HP:250000
MP:3000

【スキル】
硬化・超硬化・威圧・重量操作・衝撃波

【称号】
亀の王
道を塞いできたもの
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 レベルたっか!それにHPドラゴンより高くね!?

 こんなものどうしろと言うんだ。

 とりあえず知らんスキルの詳細を確認するか。

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〔超硬化〕
硬化に重ねて硬化できるようになる。
〔重量操作〕
自分もしくは触れている相手の重量を自由に変えることができる。
〔衝撃波〕
衝撃波を放つことができる。
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 こいつ完璧なタンク型じゃないですか。俺の攻撃力じゃどうしようもないかと。

 この際だ称号も確認しておく。

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〔亀の王〕
亀の王であるものに与えられる称号。耐久力があがる。
〔道を塞いできたもの〕
ありとあらゆる道を塞いできたものに与えられる称号。
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 なんとはた迷惑なものを持っていらっしゃるのでしょうか。こんなのどうしようもないじゃないですか。

 これはジュリに支援魔法掛けてもらって、自分でスキルを結構獲得しないと無理なんじゃなかろうか。

 俺はそう思ったので以心伝心と共有を使って、今見たものを5人に見せる。

「確かにこれは私が支援魔法掛けた方がいいわね」

「だろ?じゃよろしく頼む」

 ジュリが俺に支援魔法をかけ始める。

 今回はちょっと本気を出さなければならないな。本気を出すのはアースドラゴンの時以来だ。

「はい。掛け終わったわよ」

「サンキュ。それじゃお前達は後ろに下がってくれ本気出す」

「わかったー!」

「冒険者の皆さんも後ろに下がってください。出なければ巻き込まれて死にます」

「あ、あるじさまの本気が見れる…ゴクッ…」

「がんば…」

「せっかく私が支援魔法掛けたんだからちゃんとやるのよ」

「ああ、わかってるよ。俺に任せとけ」

 そして俺はジャイアントアダマントタートルに向かった。

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