異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第34話 お祭りに行くようです

 今俺達はお祭りに向かっている所だ。

 場所は知らないが遠くの方から賑やかそうな音が聞こえてくる所に行けば大丈夫だろ。

「みんなー!はやくはやくー!」

「そんなに急がなくてもいいだろ?」

「ダメー!はやく行かないと美味しいのなくなっちゃう!」

 まぁそんな事だろうと思ってたけどね?

「あたしがゼロについて行く…!」

「どうせミルも美味しいものが食べたいだけだろ?」

「そうともいう」

 はぁ全くこいつらは…。まぁ今日はお祭りだからいいけどね…。

 俺はお金を少し渡して先に行かせることにした。

「ゼロはこの機会にお金の使い方を勉強してくるんだぞ?」

「うん!」

「ミルはゼロにお金の使い方教えてやってくれ」

「ん」

「そしてふたりに言えることだが他の人に迷惑をかけるなよ?それが守れるなら行ってきなさい」

 ゼロとミルは俺の話を最後まで聞かずに走り去って行った。

 ちゃんと最後まで聞けよな…。

 そしてそのゼロとミルは、みるみるうちに小さくなっていき、最後には消えた。

 あいつら転移使っただろ。目の前で消えるとかそうとしか考えれん。

「主様?ふたりを行かせて良かったのですか?」

 リンもレンの言葉と一緒に頷いている。

「ん?まぁ心配ではあるが大丈夫だろ」

「ゼロ様とミル様は食べ物に釣られるような気がするんですけど…」

「はっ!それは考えてなかった!」

 なにか起きる前に急いで追いかけねば!

 俺が追いかけようとしたらジュリが言う。

「あの子達は釣られないわよ」

「なんで分かるんだ?」

「だってあのふたりなら美味しいもので釣ったら実力で取りに行くと思うわ」

「………普通に想像出来てしまった…」

「……私もです」

「……わ、わたしも…」

「ね?だから心配しなくてもいいわよ?」

 ジュリのいうことが最もすぎたので心配などせずにゆっくり向うことにした。

 お祭りの場所につくと、そこは大きな広場のような所だった。

 屋台がぽつぽつと出ていて、むこうの方では音楽と共に踊っている人達がいる要るのがわかる。

「これぞ祭りって感じだな」

「ええ、そうね」

 転生する前はよく行ったものだが、なんか懐かしい感じがするな。

 多分ジュリも俺と似たようなことを感じているのだろう。

「あんた達!来てくれたのかい!」

 横からグレプルさんがやってきた。

「ええ。お祭りに誘っていただいていたようだったので」

「そりゃあこの祭りが出来るのもあんた達がいたからさ!その立役者がいなくて祭りが出来るわけないからね!みんなー!聞いておくれー!」

 グレプルさんが周りの人達を呼び止めた。

 俺は嫌な予感しかしないんだが……。

「この街の領主をやってくれたのはここにいる男だよ!皆も感謝しなよ!この男がいなかったら祭りなんて出来なかったんだからね!」

 あぁ。やっぱりか……。

 あれ?ジュリとレンがいないだと?

 あいつら逃げたな…。逃げるなら俺も連れてけよ。

 リンは俺の側にずっといたみたいで、俺と同じように消えだジュリとレンを探している。

「君ののお陰でお店が出せるよ!ありがとう!」

「今日、あの領主に連れて行かれた俺の彼女が帰って来たんだ。君のお陰なんだろ?ありがとう」

 めっちゃ感謝されるんですけど!なんかむず痒くなってくるからやめて!

 それからも感謝の言葉を言われ続ける俺。恥ずかしさで死にそうになるわ……。

 そんな時、感謝とは違う言葉が出てきた。

「あなたの隣にいる子はお嫁さん?左手の薬指に指輪があるけど」

 あたりが騒然とし始める。

「い、いや…ちがっ…」

 俺の声は周りの人達の声にかき消され、どうすることも出来ない。

 助けを求めてリンの方を見ると、俺の服の裾をつまんで、顔を赤くしてぷるぷるしながら俯いていた。

 これじゃ助けを求めるどころじゃないな。

 どうやって切り抜けようか考えてると広場に大きな声が響く。

「おーっと!ダウンする人が続出する中、飛び入り参加のゼロさんとミルさんがどんどんたべていくぅ!!」

 あいつらなにしてんだよ!?

 俺はリンを連れ急いで声のする方へ向かった。上手く切り抜けることができたわ…。

 向かった先で行われていたのは大食い大会だった。ほぼ満席状態で大盛り上がりだ。

 ……大食い大会とかゼロとミルなら参加しないわけないな。これも必然だったという訳か……。

「去年の優勝者もダウン!残りはゼロさんとミルさんになりました!ジュリさん!この戦いどちらが勝つでしょうか!?」

「まだ分かりませんねぇ。ふたりとも最初のペースから変わってないのでペースが先に落ちた方が負けると見ていいでしょう」

「なるほど!ありがとうございます!」

 おいジュリそこでなにしてんだよ!?何をどうしたらそんな所で実況者になるんだよ!?

 レンは?レンはどこだ!?ジュリと一緒にいなくなったんだ!あいつもなんかしてるに違いない!

「次をどんどん持ってくるのー!」

「お持ちいたしました。しかしゼロ様。よく噛んでお食べになってください」

 いた!レンはウェイトレスみたいになってた!

「みんな楽しそうだなぁ…」

 横からそんな呟きが聞こえてきた。

 まぁリンだけ俺の隣で見てるだけだからな。

「リン?俺と一緒に遊ぶか?」

「えっ?みんなはどうするの?」

「あいつらはあいつらで楽しんでるみたいだし、俺達も俺達で楽しめばいいだろ?だから遊ぼうぜ」

「うん!」

 これでリンも楽しんでくれるといいな。

 俺達は大食い大会の場所を離れて、屋台をまわる。

 屋台には食べ物の他にちょっとした遊びのようなものがあった。

 くじ引きに射的、投げ輪、etc…。そして異世界ならではと言っていい魔力を使って動かすオモチャのレースもあった。どうやら、魔力をオモチャに込めてバッテリーのようにするらしい。

「リンはどれからやりたい?」

「わたし射的したい!」

「おお!じゃあ射的するか!」

 リンはお祭りで遊べることに興奮してもう素が出てしまってる。楽しんでる証拠だろう。

 射的の所に着いたのでさっそく遊ぶことにする。

「射的2人分お願いします」

「おっ!兄妹かい!妹のかわいさに免じて1人分おまけしてやるぞ!」

「あ、ありがとうございます」

「か、かわいいっていわれたぁ!」

 リンはとても嬉しそうにしている。

「射的のやり方はそこに張り紙出してるからそれみてやってくれ!」

「分かりました」

 やり方は対して日本と変わらない。だが、魔力を使うことを禁止しているところは日本とは違うな。

「わたしあのぬいぐるみ欲しい!」

 中サイズのオオカミみたいなぬいぐるみを指さすリン。

「おっ頑張って狙えよ?」

「うん!」

 まずはリンからはじめる。玉は5個。

 1発目と2発目は当たらない。まぁはじめはそんなことだろう。

 3発目と4発目はぬいぐるみにかするか、あとちょっとという所だ。

 リンはかすった時にちょっと喜んでいた。純粋でいい子である。

 最後の5発目はクリーンヒットしたが当たりどころが悪かったのか動きはしたが倒れることは無かった。

 リンは当たったことに喜んだが、倒れなかったので残念そうにしていた。

 次は俺の番だな!リンのぬいぐるみ狙うか!

 でも射的なんて久しぶりにするからなぁ。うまく出来るか分からんがやれるだけでやるか!

 まずは1発。ぬいぐるみの右側にあったハンカチに当たって落とす。

 2発目はぬいぐるみの左側にあったお菓子の箱を落とす。

 んー。ぬいぐるみには当たらんかー。気を取り直して次行くか。

 3発目と4発目はぬいぐるみに近くなったが当たらない。

 最後の5発目。ぬいぐるみのちょうど右上に当たった。ぬいぐるみのバランスが崩れて落ちる。

 よしっ!取れないと思ったが取れてよかったぜ!

 リンはぬいぐるみが落ちたのをみて飛び跳ねながら喜んでる。

「それじゃ済まないが兄ちゃんにはハンカチとお菓子とぬいぐるみのどれかひとつを選んで貰おうかね。一気に持っていかれると商売にならんからな」

 まぁそういうことならしょうがないか。

「それじゃぬいぐるみでお願いします」

「ほれ!妹さんにプレゼントだろ?いい兄ちゃんだな!」

「あ、ありがとうございます」

 俺は受け取ったぬいぐるみをリンにあげる。

「このぬいぐるみはリンにあげる。欲しかったんだろ?」

「うん!ありがとう!」

 リンの満面の笑みはそれはもう嬉しそうだった。

「おーっと!ここでゼロさんが先にダウン!!それによりミルさんの優勝です!!」

 むこうも終わったみたいだな。

「えー優勝者にはジュリさんより賞金の10万Gとメダルが授与されます!!」

 賞金貰えるのかよ。びっくりだわ。

「それじゃみんなを迎えに行ってから他のところも行くことにするか」

「うん!」

 リンと俺は大食い大会の会場に戻った。

 戻った頃には授与が終わって観客が散っていくところだった。

 えっとみんなはどこだ?……おっ、いたいた。

「ミル強いのー」

「あたしもぎりぎりだった…」

「ふたりともよくあんなに食べれるわね...。実況しててびっくりしたわ」

「私はおふたりがよく噛んで食べないことに不安を感じてました」

「おーい。お前らー。迎えに来たぞー」

「あっ!マスターだ!」

 これで全員揃ったな。それじゃまた遊びに行くか。

「みんなでオモチャのレースをやりに行くか!面白そうだったぞ!」

「あら、面白そうね?」

「…ケフッ……そのレースもあたしが優勝する...!」

「リン様?そのぬいぐるみは?」

「あるじさまと射的に行って取ってもらったんだ!」

「いいなー!わたしもぬいぐるみほしー!」

「おーい!行くぞー!」

 それからは、まずオモチャのレースにでて、ミルが宣言通りに優勝したり。

 ゼロにぬいぐるみが欲しいとせがまれたから次はくじ引きでぬいぐるみをとったり。

 みんなで食べ歩きをしながら談笑したり。

 そうして楽しいお祭りは終わっていった。

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