fly

ゆあもち

fly "翼"

「人間には翼がついている」
それは人の優劣を表すものだと昔から思っていた。

僕には、あの飛べない羽がいつしか羨ましく見えていた。
昔はこの大きくて綺麗な色をした自分の翼が好きだった。
だけれど、いつしか大きくなりすぎたこの翼は自分の体より重くなり、使いこなせなくなった。人が羨ましそうにこの翼を見る目も、この翼を憎んで見るあの大好きな目も全て恐怖でしかなかった。
人から期待される通りに自分の好きな飛び方で飛ぶことは僕にはもうできなかった。
だから、僕にはあの貧相でちっぽけな彼の羽が死ぬほど羨ましかった。
誰から期待される訳でもなく、飛ぶも飛ばないも自分で全て決められるあの生き方が。

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