やっと封印が解けた大魔神は、正体を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~

魔法少女どま子

爽やかな人ほど裏の顔は怖いよね

「まずはオリエンテーションだ! 簡単でいい、自己紹介を頼む!」

 ルーギウス先生の大きな声が教室中に響きわたる。

 ……うへえ、自己紹介か。
 面倒くさいなあ。どうしよっか。

「じゃ、最初は一番前の君から! よろしく!」

 こういうとき、前の席に座っている人は本当に可愛そうである。問答無用で指名されるからね。

 そうしてひとりにつき一分ほど、おのおのの生徒が自分の素性を明かしていく。

 ちなみに生徒に年齢制限はないらしい。望めばヨボヨボのじいちゃんだって入学できるわけだ。……合格できるかどうかはまた別だけどね。

 それでもほとんどの面々が十代中盤だった。僕のような推定年齢何千年っていう奴はいないだろう。

 ……ん?
 ふいに僕は違和感を覚えた。

「では次の人! えっと……ミユさんかな?」

「は、はい! ミユといいます! 特技はスポーツで、あの、上手くはないんですけど、みんなと楽しく動き回るのが好きです!」

「そうかそうか! いいよな、スポーツ!」

 そう言ってルーギウスはまたも爽やかに歯を光らせる。

 ――のだが。
 あの表情、あの目線。

 僕の気のせいかもしれないが、なんか顔つきが嫌らしい。あからさまに凝視することはないものの、女性としての特徴的な部位を何度も見ている。

 ミユと呼ばれた生徒はその視線に気づかない。
 ルーギウス先生のはにかむような笑顔に当てられて、頬を赤く染めている。

 ……考えすぎかな。
 男として、女性の身体を見ちゃうのはどうしようもない。僕だって生まれてこの方、煩悩を殺せた試しがない。

 だが。
 僕のその疑念は、数秒後に確信に変わった。

「では次。えっと……コトネさんかな?」

「は、はいっ」

 緊張した面持ちでコトネが椅子から立ち上がる。

 瞬間。

「…………!」

 思わず息を呑んでしまった。

 ルーギウスの獰猛な視線は、女性として完璧な色香を持つコトネの全身を舐め回した。

 間違いない。
 あの顔つきと目線は、常識をはるか超えている。

 いわば、格好の獲物を見つけたかのような……

 コトネもその視線に気づいたようだが、こほんと咳払いをすると、覚束ない自己紹介を始めた。

「えっと、コトネと申します。ニルヴァ市から来ました。あのあの、最近まで入院してて、話すのとか苦手ですが、ぜひ仲良くしてください!」

「コトネ……ニルヴァ市……そうか、君が……」

 ルーギウスが呟くような声を発する。

「え……? あの、私のこと知ってるんですか?」

「いいや。なんでもないよ」

 そう言ってまたも歯をキラリ光らせるルーギウス。

 ――怪しい。
 僕は再び、注意深くルーギウスを観察することにした。

「では次! エルくん!」

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