チート特典スキルは神より強い?

ゴッティー

第62話 現実

周りには何かをドジ込めておく為のような鉄格子があるが、すべてが何者かによって斜めに切られており、中にいたであろう生き物は壁に吹き飛ばされ潰されたようになっていたり、光魔法で黒焦げにされたようになったり、あとはその殺された生き物の影響で血を被った傷跡も何もない何故か死んでしまっている生き物が地面に倒れていた。何とも酷い光景だ。

だが、これを実行した犯人は本当は…。

「かっ、何これ….」

その後はあまりにも酷い光景によりアリスは言葉が出ない状態になっていた。

「酷いものでござるな…」

暗い声でそう言うセリーヌ。

「な…。なんと! 何故、私の幻覚魔法を―――」

俺はガイン博士が何かを言う前に彼の首を切り落とした。だが、この場の全員は彼が何を言ったのか。そして何を言おうとしていたのかと理解したことだろう。

そう。

周り一帯に漂う血の匂い、そしてそれが焦げた臭いやこの場の全員の手に降りかかった大量の血血血血。

白衣を着た魔法学者などそもそもここには存在していなかったのだ。だが、それを幻覚として捉えさせられ鉄格子の中に入れられていたであろう生き物が全く見た目の違う魔法学者に見えてしまい、視覚を全て麻痺させられていたのだ。要は、ここにいる全員は鉄格子に捕らえられていた生き物を魔法学者として認識してしまい、全て殺してしまったのだ。

「いや…。こんなの嘘…」

「まさか、これは少女―――」

セリーヌはたまらずその場で吐き出してしまった。ゼレシア、アリス、エイリもその場で泣き崩れ、地面に顔をひれ伏した。だが、地面にあるのもまた、血。誰のかも分からない血。

俺も地面に崩れ落ちて吐き出したいところだが、どうやらお相手はそうはさせてくれないらしい。

「シンニュウシャ、ハイジョ」

機械音と共に現れたロボット。どしりと如何にも重たそうな足音に大型の銃を両手に搭載してあるかのような腕。ロボットは両腕を上げ、俺の予想通り何かを両手の先に溜め込みこちらへ放つ用意をしていた。

「—―――」

だが、そのロボットは何を放つことも出来ず、アリスによって切り刻まれた。アリスはそのまま上へと続く階段をふらふらと上って行ったが、階段の途中で止まり上へ目がけて真っすぐなレーザーを放った。レーザーの大きさは丁度人が一人通れるかというくらい。

アリスはレーザーを放ったあと、天井に空いた穴から地上へと飛んでいき少し経つとこの研究所が大きく揺れ始め、頭上から莫大な魔力を感じた。そう。アリスだ。

次の瞬間、研究所はまるで原子爆弾が落ちたかのような衝撃に襲われ、一秒もしない内に消滅した。その場所に残ったのは丸くえぐれ、隕石が落ちたあとのように綺麗に地面、来、その周辺にあったであろう岩、山など全てが消えていた。

「ちょっ、おい! まだ俺達が….」

上空に浮かんでおり、体中に刻印が刻まれた女の子。誰かと一瞬思ったが、あの服装はアリスだ。研究所を破壊したことでそこに保管されてあった魂歳が解放されたのだろう。研究所からは大量の青白い光が舞い、東西南北の全ての方角へと飛び散らばって行く。魂歳の主へと目がけて飛び戻っているのだろう。

(良かっ….)
一瞬、良かったねと言いかけたが、今のアリスにそう言うのは酷だろう。いつもそばにいたジークを失った今、研究所を破壊したのも自分が元の姿に戻ることを狙ったわけでは無いだろう。

アリスは目から涙を落とし、再び空いた巨大な穴の方を向いた。

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