チート特典スキルは神より強い?

ゴッティー

第42話 調査2

 少年の老人化を目撃した次の日、俺達は下水道を調査していた。もしあの赤黒い蛇が地面を通って下に向かったのだとすると、その行先は下水道の可能性が高い。理由はこのたった数日間の間にもう何百人もの被害者が出ているからだ。だとすると、ただでさえ目立ちやすい液体状の蛇が隠れるとするならば、その行先は下水道かそれとも研究施設そのものだ。それにこのように隠れて事件を起こす場合、犯人が逃げるのは下水道の他にはそうそう無い。

「うっっ….本当に臭いわね。もう耐えられない。一回地上に戻りましょ」

「もう少し我慢しよう。それにこの上はどこに出るかも分からないからね」

 現在、とある路地裏から斜め右に直線上で進んでからもう少しで一時間が経つ。今、俺達の少し後ろにはマンホールが設置されているが、多分あそこから繋がっているのは丁度市場の通りではないだろうか。

「本当にヤバイ、死にそうですわ。アウル、この臭い何とかする魔法無いかしら?」

「[ウィンド]なら少しはこの臭いも消えるかも」

「ははっ…却下。せっかくここまで来たのに下水道ごと全てを破壊する気か?」

 少しは俺を信用してもらいたいものだ。俺だって最近は魔法の威力を弱くする練習をしているから”多少”は加減できる。この下水道が崩れない程度には…。

 すると遠くの方からぺたぺたと水を含んだ足音が聞こえてきた。そしてその音は段々大きくなっていき、こちらへ誰かが歩いて来ていることがよくわかった。だが、その足音がこちらへ近づいて来るにつれ、足音がより聞こえてくるようになり、はっきりと聞こえるようになった頃にはその人物が足を引きずりながら歩いているのがわかった。

「あの、食べ物を…」

 その人物が俺達の目の前までたどり着くとそれは少女ということがわかった。少女は10歳ほどで茶色い一切れの布を羽織っており、「食べ物を…」と最後に言うと、少女は俺に倒れ掛かった。どうやら少女は気絶してしまったようで、足には斬られた傷跡が数か所付いていた。

「えっと、一先ず調査を中断して地上に戻るか?」

 するとアリスがハクに倒れ掛かった。

「も、もう無理」

 アリスは顔を青くして、気絶した。どちらにせよもう彼女は限界だったようだ。俺はその少女を、ハクはアリスを抱えて来た道を辿って元の路地裏まで戻った。二人はそれでもまだ目覚める気配は無かったので、その後カフェへ寄ることにした。

「で、これからどうする? アリスを下水道に連れて行くことはもう無理だ。それに下水道で手がかりのありそうな物は無かった。唯一見つけたのは…」

「この少女だけというわけだね。この少女、施設と関係あると思うか? 足を斬られたような傷跡があったが、ただの貧しい少女という可能性の方が大きい」

「まあ、この子が起きたらその事も聞いてみよう。もし違ったらこの町の教会にでも連れて行けば良いだろう」

 と、アリスが目を覚ました。

「ん…どうやら気絶してしまっていたみたいね」

「お、アリスおはよう」

「おはよう。ところでその子どうするの? その子この辺の子じゃないわね」

「だな。水色の髪の毛…。そんな髪の毛の色の種族いたか?」

 すると少女が起きた。

「食べ物…を?」

 少女は寝転がっていたソファーから起き上がると、机に並ぶ食べ物を発見し、物凄い勢いでそれを手で食べた。無言で食べ続けて数分。

「あの、助けてくれてありがとうございます。私はエイリ、実は家から追い出されて下水道にいたんですが、食料が全く無くて死にそうだったんです」

「こんなに可愛いのに追い出すなんて、どうかしているわね」

「見たところ貧しい家の出じゃないかな? お金が無くなって仕方なく追い出されたとか」

「いえ、貧しい家の出では無いです。そもそも私は人間では無いです」

「えっ? どういう意味?」

「私は博士の作った魂術人形、エイリ。作品番号07」

「魂術?」

 聞いたことも無い術名だ。それよりも自我を持っている人形を作ることは違法とされている。

「私は人の魂歳の一部を抜き取ってできた液体から魂術を使って作られた魂術人形」

「魂術人形?」

「魂歳?」

「要するに人の寿命を奪ってあなたをその博士が作ったということ? ちなみにもしかしてその博士ってこの町に来て町の少年、少女から魂歳を奪っている犯人?」

 単刀直入に言いすぎだと思うが、彼女は少なくともその博士とやらに追い出されたのだから、素直に教えてくれるだろう。

「はい、残念ながらそれは博士です。私はその事を知り、研究所を脱走してきたのですが、当然ながら食料や寝場所も無かったので今まで下水道で野宿をしていました」

「ということは彼が魂歳を、それも10代の人だけから吸い取っているのも理由があるのか?」

 彼女は俺達に長々としたストーリーを教えてくれたが、要するに魂の寿命を抜き出す量には限度があり、一定の量を抜き出すにはどうしても子供から吸い取る方が効率が良く好ましい。そして赤ん坊などはまだ魂が出来上がっていないため、抜き取ることは不可能ということらしい。

 ということは今、この町の10代の少年、少女の魂歳はその博士の魂術研究の材料になっているということだ。だが、これで無事この事件は解決したと言って良いだろう。何故なら俺達は奇跡的にエイリと出会い、こうして話をすることが出来ている。その博士の居場所もエイリに聞けばわかることだろう。

「で、その博士の居場所は分かる?」

「はい、わかりますが、昨日博士及び他の魔法学者たちも施設を変えました。そして私は彼らがどこへ行ったのかわかりません」

「わからないということは誰も行先を教えなかったってことか…」

「はい、全員私が施設から逃げた後、他の国へ逃げたようです」

「でもその施設の場所は知っているよね? 俺達に教えてくれる?」

「いえ、施設には侵入者撃退用にゴーレムたちがいます。もし施設に入ることが出来たとしても、そのゴーレムたちを倒さないと施設から研究所までですらたどり着くことは出来ないです」

「大丈夫だよ。ここにはアウルがいるからね」

「こう見えてもアウルは今回のアキレア帝国での魔法大会、優勝チームのリーダーよ」

「嘘? 本当に?」

「本当、本当」

「ではあなた方ならあの施設の中に入ることも出来るかもしれないですね。施設の場所は….」

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