「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。
第二章 第三十二話 冒険者ギルド
宿を出た俺たちは、冒険者ギルドを目指して歩いていた。
若干日が傾き始めているが教えてもらったギルドの場所までは五分ほどで行ける。
中でどれくらいの時間がかかるかは分からないが、日が出ているうちには宿に帰れるだろう。
それから噴水のある広場を通り、大通りに出たところで目的の建物を見つけた。
レンガ造りの建物で、三メートル近くありそうな入り口の上には、大きく『冒険者ギルド』と書かれた鉄製の看板が打ち付けられている。
窓や柱も入り口と同じように大きく、自分たちが小さくなってしまったのではないかと錯覚するくらいに迫力があった。
ここでキョロキョロと視線を動かすと田舎者だと思われてしまうので、俺たちは堂々と入り口のゲートをくぐった。
内装は想像していたのに近く、複数のテーブルと椅子が乱雑に置かれ、謎の観葉植物や装飾のないシャンデリア、これまた謎の彫刻が並べられていた。
そこにいる人間は大きく括ればどれも冒険者らしい風貌ではあるのだが、筋骨隆々な大男や狡猾そうな猫背男、剣を腰に差した細身の女冒険者など実に様々な人がいる。
その中でも特に目を引くのが、獣人の冒険者だ。
ヴォルムから教わって、というかヴォルム自身に獣人の血が混ざっているとのことで存在自体は知っていたのだが、こうやって純粋な獣人を間近で見るというのは初めてなので中々にテンションが上がる。
だが、いつまでもジロジロ見ていても不快に思われるだろうし、俺たちもさっさと登録を済ませてしまいたかったので、職員のいるカウンターに向かった。
ちなみに、ギルド職員は見える限りでは全員女性で、密かに期待していた通りに全員美人さんだった。
「すみません、ギルド登録はここで?」
一番近くにいた職員――落ち着いた雰囲気のグラマラスなお姉さん――にそう話しかけると、柔らかな笑みを浮かべながら答えてくれた。
後ろから冷たい視線を感じるが、無視だ。
俺は近くを選んだだけだ。
「はい、ここで行えますよ。登録料として一人につき銀貨一枚いただきますが、よろしいですか?」
登録料が取られることは知っていたので、準備はしてある。
俺は銀貨三枚を積み上げて問題ない旨を伝えた。
「では、このギルドカードに血液を一滴垂らしてください。体内の魔力と連動して、情報が自動更新されるようになります」
説明を受けた俺たちは、ギルドカードと呼ばれる灰色のクレジットカードほどの板と、針を受け取った。
言われた通りに針を使って指先に傷を作り、そこからプクと出てきた血をギルドカードに擦り付けると、灰色の板は淡い光を放ちながら薄い緑色になり、光が収まる頃には文字が浮かび上がっていた。
何が書いてあるのか確認すると、そこには名前、生年月日、身長、体重などのいわゆるプロフィール、従魔としてフォールのことが記されていた。
モミジとユキの従魔欄は表示されていない。
あくまで俺が従えているという認識らしい。
個人的にはそこまで従えているというような気はしないのだが、誰のものなのかというのは大事なことなのだろう。
「それでは、冒険者ギルドについて説明させていただきますね」
俺たちが自分のギルドカードを眺めていると、職員はそう言って色々な説明をしてくれた。
まず、ギルドの存在意義について。
基本的には冒険者のランク付けと、それに応じた依頼を紹介することで冒険者全体の死亡率を減らすことが目的であるとのことで、肝心のランクは下から、緑、青、赤、銅、銀、金の六段階になっている。
自分のランクと、その上下一つまでのランクの依頼のみ受けることができ、その依頼をこなした数や、ギルドへの貢献度で変動する仕組みになっていて、その判別はギルドカードの色によってできるようだ。
俺たちは登録したばかりなので緑級の冒険者である。
この他にも、ギルドでは魔物や採取物の鑑定、買い取りを行っていて、依頼をこなした時の副産物を売る人が多いと言う。
活動資金のためにこの仕組みにはお世話になりそうだ。
次いで、ギルド登録について。
予想通りというかなんというか、冒険者ギルドは国境を超える組織だとか何とかで、ギルドカードは確かな身分証明書になるそうだ。
他人から奪って偽ることもできるのではないかと思ったが、魔力と連動しているため、登録者以外が持つと元の灰色の板に戻ってしまうらしい。
また、それと同じ理由でカードを偽装したとしても大体の場合はバレてしまうそうだ。
こういった行為や、一年間依頼を達成できなかった冒険者は登録抹消のペナルティを負う規則で、身分の偽装は場所によってはその場で罪に問われることもあるというので注意が必要だ。
「これらのこと以外には特に決まりはありません。何か質問などはありますでしょうか」
説明が終わり、質問コーナーに移った。
規則や仕組みに関しては常識的なことを守っておけば基本的には大丈夫そうなので訊きたいことはないが、
「そこの食堂と、上に宿があるみたいだが、これはギルドと関係あるのか?」
この二つの説明がなかったので、訊いてみることにした。
「はい、各地にある冒険者ギルドの建物にはそれぞれ個性があって、ここでは食事の場と休息の場を提供しています。どのギルドも冒険者の方々が快適に生活できるような何かがありますので、世界を巡って、是非その目でお確かめください」
この回答を聞いた俺は、他に訊きたいことがなかったので他の二人はどうかと目線を送るが、二人とも特に何もないようで、ギルドカードを見つめていた。
それを見た職員が慌てたような声音で話し始めた。
「あ! すみません、ギルドカードの説明に漏れがありました。魔力を込めた指で文字をなぞると、名前以外の情報は非表示にすることができます。他人に見られたくないような情報は伏せておくことをお勧めします」
こういうことはちゃんと聞いているモミジとユキが早速やり始めたので、これ以上時間を取らせるのも申し訳ないと思い、俺は「ありがとう」と一言礼を言ってその場を離れた。
「依頼、質問、何かありましたらまたお越しください!」
職員のそんな言葉が響いた。
申し訳ないのですが、来週の更新はお休みさせていただきます。
若干日が傾き始めているが教えてもらったギルドの場所までは五分ほどで行ける。
中でどれくらいの時間がかかるかは分からないが、日が出ているうちには宿に帰れるだろう。
それから噴水のある広場を通り、大通りに出たところで目的の建物を見つけた。
レンガ造りの建物で、三メートル近くありそうな入り口の上には、大きく『冒険者ギルド』と書かれた鉄製の看板が打ち付けられている。
窓や柱も入り口と同じように大きく、自分たちが小さくなってしまったのではないかと錯覚するくらいに迫力があった。
ここでキョロキョロと視線を動かすと田舎者だと思われてしまうので、俺たちは堂々と入り口のゲートをくぐった。
内装は想像していたのに近く、複数のテーブルと椅子が乱雑に置かれ、謎の観葉植物や装飾のないシャンデリア、これまた謎の彫刻が並べられていた。
そこにいる人間は大きく括ればどれも冒険者らしい風貌ではあるのだが、筋骨隆々な大男や狡猾そうな猫背男、剣を腰に差した細身の女冒険者など実に様々な人がいる。
その中でも特に目を引くのが、獣人の冒険者だ。
ヴォルムから教わって、というかヴォルム自身に獣人の血が混ざっているとのことで存在自体は知っていたのだが、こうやって純粋な獣人を間近で見るというのは初めてなので中々にテンションが上がる。
だが、いつまでもジロジロ見ていても不快に思われるだろうし、俺たちもさっさと登録を済ませてしまいたかったので、職員のいるカウンターに向かった。
ちなみに、ギルド職員は見える限りでは全員女性で、密かに期待していた通りに全員美人さんだった。
「すみません、ギルド登録はここで?」
一番近くにいた職員――落ち着いた雰囲気のグラマラスなお姉さん――にそう話しかけると、柔らかな笑みを浮かべながら答えてくれた。
後ろから冷たい視線を感じるが、無視だ。
俺は近くを選んだだけだ。
「はい、ここで行えますよ。登録料として一人につき銀貨一枚いただきますが、よろしいですか?」
登録料が取られることは知っていたので、準備はしてある。
俺は銀貨三枚を積み上げて問題ない旨を伝えた。
「では、このギルドカードに血液を一滴垂らしてください。体内の魔力と連動して、情報が自動更新されるようになります」
説明を受けた俺たちは、ギルドカードと呼ばれる灰色のクレジットカードほどの板と、針を受け取った。
言われた通りに針を使って指先に傷を作り、そこからプクと出てきた血をギルドカードに擦り付けると、灰色の板は淡い光を放ちながら薄い緑色になり、光が収まる頃には文字が浮かび上がっていた。
何が書いてあるのか確認すると、そこには名前、生年月日、身長、体重などのいわゆるプロフィール、従魔としてフォールのことが記されていた。
モミジとユキの従魔欄は表示されていない。
あくまで俺が従えているという認識らしい。
個人的にはそこまで従えているというような気はしないのだが、誰のものなのかというのは大事なことなのだろう。
「それでは、冒険者ギルドについて説明させていただきますね」
俺たちが自分のギルドカードを眺めていると、職員はそう言って色々な説明をしてくれた。
まず、ギルドの存在意義について。
基本的には冒険者のランク付けと、それに応じた依頼を紹介することで冒険者全体の死亡率を減らすことが目的であるとのことで、肝心のランクは下から、緑、青、赤、銅、銀、金の六段階になっている。
自分のランクと、その上下一つまでのランクの依頼のみ受けることができ、その依頼をこなした数や、ギルドへの貢献度で変動する仕組みになっていて、その判別はギルドカードの色によってできるようだ。
俺たちは登録したばかりなので緑級の冒険者である。
この他にも、ギルドでは魔物や採取物の鑑定、買い取りを行っていて、依頼をこなした時の副産物を売る人が多いと言う。
活動資金のためにこの仕組みにはお世話になりそうだ。
次いで、ギルド登録について。
予想通りというかなんというか、冒険者ギルドは国境を超える組織だとか何とかで、ギルドカードは確かな身分証明書になるそうだ。
他人から奪って偽ることもできるのではないかと思ったが、魔力と連動しているため、登録者以外が持つと元の灰色の板に戻ってしまうらしい。
また、それと同じ理由でカードを偽装したとしても大体の場合はバレてしまうそうだ。
こういった行為や、一年間依頼を達成できなかった冒険者は登録抹消のペナルティを負う規則で、身分の偽装は場所によってはその場で罪に問われることもあるというので注意が必要だ。
「これらのこと以外には特に決まりはありません。何か質問などはありますでしょうか」
説明が終わり、質問コーナーに移った。
規則や仕組みに関しては常識的なことを守っておけば基本的には大丈夫そうなので訊きたいことはないが、
「そこの食堂と、上に宿があるみたいだが、これはギルドと関係あるのか?」
この二つの説明がなかったので、訊いてみることにした。
「はい、各地にある冒険者ギルドの建物にはそれぞれ個性があって、ここでは食事の場と休息の場を提供しています。どのギルドも冒険者の方々が快適に生活できるような何かがありますので、世界を巡って、是非その目でお確かめください」
この回答を聞いた俺は、他に訊きたいことがなかったので他の二人はどうかと目線を送るが、二人とも特に何もないようで、ギルドカードを見つめていた。
それを見た職員が慌てたような声音で話し始めた。
「あ! すみません、ギルドカードの説明に漏れがありました。魔力を込めた指で文字をなぞると、名前以外の情報は非表示にすることができます。他人に見られたくないような情報は伏せておくことをお勧めします」
こういうことはちゃんと聞いているモミジとユキが早速やり始めたので、これ以上時間を取らせるのも申し訳ないと思い、俺は「ありがとう」と一言礼を言ってその場を離れた。
「依頼、質問、何かありましたらまたお越しください!」
職員のそんな言葉が響いた。
申し訳ないのですが、来週の更新はお休みさせていただきます。
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