Re:legend
415:記憶の在処
「ウィズ…今、何が起こってるの?」
ハルカが戸惑いながら不安そうな表情でウィズに尋ねる。
「君が代償を支払った結果さ…すまないね。たったあれだけの時間でこんなにたくさんの記憶を奪ってしまうとは思わなかった…」
「ウィズ…私の記憶は…」
「悪いけど私はハルカの記憶を持っていない….ハルカの記憶は『傲慢の書』の術式の番人が持っている。もともと代償は私達大罪の魔族の力をむやみに使わないようにするためのセーブ装置なんだ。だから私じゃどうしようもない……」
「ウィズ…私が失った記憶について教えて……」
「辛くなるかもしれないけどいいの?」
「お願い…」
「ハルカが代償として支払った記憶は君の婚約者、涼宮竜との全ての記憶、君の妹エリカとの全ての記憶…この2つだ」
「さっき話しかけてきてくれたのが私の妹?」
「ああ、そうだよ」
ウィズはその後僕やエリカのことをハルカに伝えたがハルカはどれも覚えていなかった。僕が初めてハルカとエリカに出会った時のことも一緒に冒険したことも婚約したことも全て……フランや他のみんなと出会った時のことは都合よく改善されているみたいだった。
「ウィズ…ありがとう。教えてくれて…」
「もう戻るのかい?」
「うん。また来るね…」
「いつでも来るといい。待ってるから」
「ありがとう。ウィズ」
ハルカはウィズにそう言い残してウィズの前から消えた。
「ハルカ…君の記憶は必ず取り返す。もう少しだけ待っててくれ……」
ウィズは1人で呟きその場から消えた。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、大丈夫?」
ハルカが目を覚ますとハルカの記憶にはない妹がハルカの体を支えてくれていた。
「エリカ…大丈夫、少し疲れちゃっただけだから、心配かけてごめんね」
「本当に大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。リュウさんに今帰ったって報告してくるからまた後で会いましょう」
長くエリカと話しているとハルカが記憶を失っていることに気づかれそうなのでハルカは急いでその場から立ち去った。
「あなたが…リュウさんですか……初めてお目にかかるはずなのに側にいるとなんかホッとします。リュウさん、リュウさんの側にいると心がドキドキする。ドキドキするのに…リュウさんのことがわからない…」
ハルカは僕が眠るベッドの横で泣き始めた。しばらくするとハルカは泣き疲れて眠ってしまった。
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