時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

竹中重治の決断① タイトル詐欺は、嫌われる。

 竹中重治、彼女は覚悟を決める。

「織田の信長様が居ない今、尾張はもぬけの殻と同じ状況……。龍興様がそれを知れば、必ず攻め入る事になるでしょう……そうなれば、織田家は再び危機に落とされる……」

 そうならない為に、重治が出来る事はただ一つだけ。

「……稲葉山城を、道三様が築いた城を、私が斉藤家の物に戻して差し上げましょう」

 斉藤家は、龍興のやる気の無さからして、実質的に家臣達が勝手にそれぞれの領地を自治している状態に陥っていた。それに加え、士気にもまとまりがない。龍興は、その事に何も気づいていなかった。だから、それを気付かせる為に、重治が自ら行動を起こさなければ始まらないのだ、とそう思っていた。
 そして、行動を起こす日が、遂に来た……

 月は、水無月へと変わりゆく。
 梅雨、そう言われるのは何時の時期からなのかは良く分からないが、この時期はよく雨が降る。木曽川の水嵩みずかさも、増えていくばかりで、この山の無い平野にとって、洪水と言うのは、命取りと同じであった。生死を賭けるとも言えるこの時期に、一人の女子は遂に行動を起こそうとしていた。豊臣秀吉に半兵衛あり、秀吉の右腕と相成った竹中半兵衛重治。半兵衛、そう言われるのはまだもう少し先の話。竹中重治は、家臣達を集め、稲葉山へ向かう。数少ない家臣達に、荷車を押させ、城下で体調を崩している妹の看病だと、嘘を付き、城下へと忍び込み、上手く城へと忍び込んで、斉藤龍興を説得させる。
 忍び込むとは言え、その最中にバレるのは必然的ではあるだろうが、これは何としてでも達成しなければならない、言わば重治の生死を掛けた戦いなのだ。

「妹には話を付けてあります。このまま城下へと入いり、妹の屋敷まで向かいましょう。そこで城へ侵入する準備を行います」

この時、竹中重治が何故稲葉山を乗っ取ろうとしたのか。一つは、龍興の側近衆に大変迷惑行為を働かされたということ。一つは、斉藤家家臣から、青ひょうたんと馬鹿にされ続けて来たと言うこと。そして、彼女にとって斉藤龍興が斉藤家の当主であったから。
 当主であるならば、何故襲うのか?
 そんな疑問が湧くのは読者も同じであろうが、重治は龍興のお気に入り。それを妬む緒将が重治に悪知恵を働かすのは、それは必然的では無いか。恋愛事と同じことである。好いた者が、他人に良くするなら、それを虐める……。
 彼女は、もう斉藤家を離れようとしていた。彼女はずっと、自分を奮い立たせる者を待っていたから。自分の本当に、あるべき居場所を探していた……。そして、遂にそれを見つけたのだ。

「これは、これは……竹中様! このような時間に何用でございますか?」

 城門を守る、門番と言った方が良いだろうか。そんな役職の女子は、重治へと駆け寄り、彼女の登場を聞く。

「妹が病に倒れてしまった、そうお聞きいたしまして……急いで飛び出してきた次第にございます。良ければ、このままお通し頂けませんでしょうか?」

 重治の言葉に、何の迷いもなく門番は頷くと、すぐに城門を開けさせた。
 この時、門番は重治らの荷物を確認しなかった。重治は、こういった手をよく用いていた。それは、荷車の荷物の中身は、必ず空にしていたのだ。門番には頻繁にそれを見せ、荷物が無いことを確認させ、入城していた。今回、それが裏目に出た。布で覆い隠されている荷車には、武器や武具が、人数分用意されていたのだ。第一の失態は、この門番の荷車の確認が欠けていたところだ。
 こうして、易々と城下に入れたことは、重治は驚きさえしなかった。むしろ、一刻を問うよう、先に進む。

「姉上! よかった、無事に来れたのですね。まぁ、心配は致しませんでしたが!」

 ぶっきらぼうな物言いで、確かに心配されることは無いが、そんな言い方をするのは、重治の妹・竹中重矩たけなかしげのり。彼女も、この作戦実行の一員である。こうやって、嘘を付いて貰ったのも、重治は妹に感謝する他ない。

「ははは、我ながら、流石は重治殿の妹様でございますね……」

 そしてもう一人。この作戦のキーパーソンとも言える存在。聞いて驚けシジミの力! 彼女はあの、美濃三人衆の一人・安藤守就あきもりなりである。先の織田家との戦では、勿論表立って戦い、功を上げた一人。彼女も、また謀反人の一人となる。実際、重治の力では家臣を謀反に加わらせる事は難しかったが、彼女が力を貸したことで、状況は一変した。
 家臣達は颯爽と、武器や武具を身に着け、少数ではあるが、乗っ取りにかかる準備を済ませた。此処からは、無駄事が許されない六郷の戦いともなる。

「皆様、これよりが本番です。美濃の覇者と自称し、君臨する斉藤家当主・斉藤龍興を、真の将として生まれ変わって頂けるよう、我々は稲葉山を占拠いたします。恐れることなかり。全てはこの竹中重治が」

 家臣に言葉を聞かせる重治は、目を瞑り(つぶ)り、覚悟を決めていく。ここからは後にも退けず、前も見えない。重治にとっては生死を掛けた戦いとなる。しかも、人数が圧倒的に少ない。だからこその奇襲。やるしかないと覚悟に決め、刀を持って風の様に彼女達は外へ向かった。 

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