時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

墨俣・一夜城。

「なななな、なんと!? いつの間に木下殿が!?」

 良勝は、突然船を乗り上げさせてきて、上陸した藤吉郎たちに言葉では表現できない程、驚く素振りを見せた。

「……来ましたか、姉上」

 逆に零細な秀長にとっては、そのような事は日常茶飯事に起こっているので、既に驚く気など失せていた。というか、これが日常茶飯事とはどういうことなのだろうか。もしや、毎日のように藤吉郎から驚かされているとでもいうのか……?

「いやいや、大変お待たせ致しましたね!尺も取るわ、時間を取るわで、本当に大変でしたよ~。ですが、これも天下への足掛かり! 我らは信長様の為に尽力を尽くして協力していくつもりです!」

 元気も勇気もいつも百倍! そんな藤吉郎が、いつにもまして元気なのは、やはり信長、と言う存在があっての事なのだろう。隣でジッと藤吉郎の姿を眺めていた秀長はそう思った。

「……さて、んじゃ取り掛かるか!」

 作戦開始と言うように、船から降りてくる蜂須賀ころくは、織田・川並両兵に声を掛けると、川並衆に船から木材を降ろさせる。

「……改めて、確認ですが……図面の通り、今回は長良川を堀として見立てた本丸のみの手軽な出城です。作るのは、城を囲む柵、櫓。そして、城の一番のかなめと言える、天守です」

「天守と言ってもな、ただの天守じゃなくて、小天守。天守の小さいやつ。見た目はあんまり変わらん。それの外装を、一晩で仕上げる作業が一番重要だ。藤吉郎が言うように、内装は外装が出来た後でいくらでも出来るんだ。とにかくだな……柵、櫓、小天守が第一目標だ。それ以外何をしようなどと考えるんじゃねぇぞ! おまえたちのやる事は、出来る限りそれだけだ!」

 ころくは、藤吉郎に補足するように言うと、しっかりと兵士達に気合いを入れ込むような物言いで励ました。
―ただし、今回ばかりは小天守とは言え、THE・城と言われる城に付属する小天守ではない。小天守に見せかけた、城である。
 要するに、小天守に見合わせるそれだけの材料が無かったため、出来るだけ小天守に見立てて建築すると言うのが、本日の作業である。
 しかも、制限はそれだけではなく、大きな音を発てることさえ、あまりしてはいけない。斉藤方に気付かれた時点で、この作戦は失敗に終わる。失敗、それは藤吉郎の切腹に繋がる。本当に、後戻りのできない戦いなのだ。だからこそ、藤吉郎はある必勝の策を建てた。彼女達はその策を「組み立て式」と呼んでいるようだが、行うことも、意味もそのままである。材料を尾張で集め、組み立て、組み立てた物を、現地である墨俣すのまたへと運び、そこで組み立てる。それで終わりである。この方式はとても画期的であった。未だ類のないスピードで、ぐんぐんと建築作業が進んでいくことに、誰も驚きを隠せないのは言わんばかりである。
 特に誰もが驚くのは小天守の建築。小天守は、出来るだけそれに見合わせて建築を行っている訳だが、やはり木材が足りない。どうするか……。と、そうなった場合に、近くの森林から静かに木を伐採し、頂いてくる。仕事が無い暇な奴等にはそれをやらせ、現地調達も行う。それを行える時間が容易に作れたのだ。だからこそ、この方式は画期的であり、あたかも魔法の様であり、織田の兵士・家臣、その中でも重臣の者達は、改めて藤吉郎と言う心内の存在を大きくさせた。築城は、まだ続く。

「姉上、もしかしたら……気付かれたかも……!」

 そう言いながら、焦って現れたのは、いつもは冷静のはずの藤吉郎の妹、秀長。藤吉郎は、何があったのか尋ねると、秀長は身震いしながらこう答えた。

「分からない……」

 では、何故バレたのが分かったのかと、今度はそう秀長に問いただす藤吉郎。

「……信長様の隊が襲われた時に、姉上はとても深い霧が現れた、とおっしゃっていましたよね?」

 秀長の言葉に、藤吉郎は頷く。

「その霧が……此処を覆っていて……と、というか! 西美濃の広範囲に霧が出現していて、しっかりと遠くまで敵の動きを観察することさえ、困難なのです!」

 藤吉郎が上空を見上げた時は、墨俣さえも雲に覆われていた事に気付く。藤吉郎は、城を建てている丁度真ん中あたりに居り、長良川とは約二、三百メートル程離れているのだが、それでもギリギリ川の畔までしか見えなくなっていた。幸い、味方全員は近くにいたため、そこの問題は解消されたのだが。

「……まさか、バレたのかよ……」

 ころくはこの霧を見ては驚き、話しては驚き、と驚くことを常に忘れない。

「……バレたとは、決まった訳ではありません。とにかく、今できる最善の行動は、建築です。出来る限り、建築を続け、日が上るまで出来る限り完成させる事が、今の我々の目的であり、目標です」

 藤吉郎は改めて言い直すと、そう胸を張っていった。流石の藤吉郎の姿に、少し不安気味でいた兵士達も顔を見合わせて、元気を取り戻し、一夜限りの墨俣の一夜城を完成に向けて、大きな一歩を踏み出そうとしていた。

「木下殿、塗籠足りてますか?」

 外装をもっときれいに、と塗籠を塗り続ける藤吉郎に、良勝は近づくと、そのまま残量を問う。

「……はい、大丈夫ですよ。新助ちゃんも、塗籠大丈夫ですか~?」

「私も平気です! 外装もあとちょっとですね! 柵の設置も、櫓の設置も終わりを迎えているので、遅れを取らないように、私も、もっと本気出して頑張らないと!」

 良勝の心は、熱く燃えていた。とにかく、この城を完成させたい、そういう思いに。だからこそ、協力が出来る。協力関係が出来る。この二人には、利家や裕太、ころくとはまた違った友情が芽生え始めていた。ところ、文章帯では良勝が一方的に友情関係を作っている様にも見えるが、藤吉郎も積極的である。

「もし暇なお方が居たら、内装作ってもよろしいですよぉ!」

 藤吉郎の、内装許しには兵士達にとって、一つ安心できる点があった。それは、この作戦の達成を裏付けている言葉だからだ。藤吉郎は初めに言った。「内装は外装が出来た後でいくらでも出来る」と。これは、外装の完成、そして城の完成を意味している。と言うことは、作戦成功! そういうことなのだ!
 また、この後も兵士達の士気は上がり続けた。刻一刻と時間は過ぎていくが、それと共に急速に城は完成形態へ。白く美しく、そして守りやすく、攻めづらく、そこは美濃攻めの要衝と言われるような、出城。木下藤吉郎が生死を掛けて作り上げた城。この、時間の概念を吹っ飛ばすような、藤吉郎の建築技術は、後の現代の建築方式にも大いに取り入れられるようになる。こういった豊臣秀吉から始まった文化や、技術などを私は此処に新たな呼び方で宣言したい。

 「」と。

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