時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

長森で、信長は。

「……決断は二つ」

 刀を振り、勇猛果敢に信長を守る長秀は余裕が出来た所で呟いた。

「……け、けつだん!?」

 勝家は、長秀の話を聞きながら槍を空中で三回転程させる。

「退くか、進むかよ……信長様」

「……だがしかし、この霧では前に進むことも出来ぬし、退く事も難しいのだぞ! 第一、このまま退く理由など……」

 長秀の提案を否定する様に信長は、必死になって言った。今はまだ、決断する時ではない―

「きっと、この霧は何者かの仕業。無理よ、どうやら斉藤家には天候を操る人間が居るようね」

 すると、長秀の言葉に驚いた勝家が彼女の方を向いて唾を飛ばしながら大声で反応する。

「ててて、天候を操るだと!?」

「まさか……それはまるで諸葛孔明の様では無いか……有り得ない、そんな天候を操れるような軍師など―」

 信長も勝家程ではないが、驚いた様に口に出すが、言った後で何かを思い出したかのように腕を組んで下を向く。
 だが、次の瞬間―

「信長様!!」

 何処かから声がして顔を上げると、上空から大量の矢が振り落とされてくる。

「第二波ね……!!! みな、伏せなさい!!!」

 先程に続いてまた大量の矢が降ってくることに、長秀は第二波だと判断して兵士達に伏せる様に命令を出した。兵士達は、我先へと物陰に伏せて、大量の矢から身を隠そうとする。

「―信長様も急いで!!」

 と、信長の手を取って馬から引き下ろす様に引っ張ると、信長を馬から落として勝家と二人三脚で、少し引き釣りながらも運んでいく。

「く、な、なにを!! 自分で歩けるぞ!?」

「そんなことしたら、絶対に矢の雨から避けようとしないでしょう!? 駄目よ、あれはさっきの量とは訳が違うわ!!」

 信長の性格を知っている長秀は、信長の命令に背きながら自分の罪深さを改めて自覚する。しかし、それよりも矢の量が尋常じゃない事から逃げることが一番だった。信長を大きな岩の陰へと必死に運んだ直後、すぐに矢による一方的な猛攻撃は始まった。三人は頭を守りながらなんとか斉藤軍の様子を伺うように顔を上げて状況を確認する。

「だ、駄目じゃ! 霧が濃過ぎる!! 何も見えない…‥!!」

「迂闊だったわ……まさかここまで誘き寄せられているなんて……連勝しすぎて、敵の本丸まで近づいてきている緊張感が全く無さ過ぎたわ。この状況、どう乗り切ろって言うの!?」

 頭を抱えたまま、長秀は自分の判断ミスを責めていた。今責めても、何も変わらないと言うことを知っていながら。

「どうするか考えるのが、参謀の務めだろう!! ……とはわしも言えぬな。余りにも舐めてかかり過ぎた……く、本当に迂闊だったわ!! くーっかっかっか!!」

 信長は、これまでに出したことが無いような大声で笑った。それは勿論、面白がっている訳では無く、この状況を楽しんでいると言っても過言ではない。信長は、この状況を楽しんでいたのだ……!!

「ああああ―——!!!信長様、こういった時にこそ、大量に保持している種子島の出番ですぞ!!! とにかく撃ち、とにかく撤退しましょう!! ここではまともに戦えない!! このまま長良の川の付近にまで撤退するのです!! しっかりと陣形を整え、今できる最善の策を取りましょう!!」

 額から汗を垂らしながら、勝家は撤退案を掲げた。それもありじゃな!と、信長は頷いて勝家の撤退作戦を受け入れようとする。

「皆の者、良く聞くのじゃ!! これより、撤退作戦を開始する!! とにかく来た道を一直線で進み戻る!! 種子島を保持している者は、弾込めをして、出来るだけ多く撃つのだ!! 伏兵など、殴り蹴ってしまえ!! 無視じゃ、無視!! さあ進め!! これは前哨戦なのじゃあああ!!!」

 まるで、嬉しそうに笑顔を見せながら信長は兵士達に撤退の命令を下した。流石に馬を捨ててしまったので、自らの足で走って逃げるしかない。

「の、信長様!? 前哨戦の意味分かって言ってるの!?」

 信長を言葉を聞いて、この状況下でツッコミを入れる様に長秀が干渉する様に言う。
 しかし、信長は今まさに一歩を踏み出そうとした瞬間、ある事を思い出す。

「……お、おい長秀」

「……はい?」

 不意を突かれたのか、裏返った声で長秀は返事をする。

「……我々は、何処から来たのだったか?」

 信長が言葉を吐いた瞬間、長森のこの地は凍り付いたかのように一瞬に寒気が広がり、矢の降る音も、斉藤軍が駆ける音も、織田軍の種子島が火を噴く音も、咆哮も、全く聞こえなくなって静かになった。

「……は?」

 唖然とした顔で、長秀は信長を見つめて動きを止めた。

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