時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

かかれ柴田!!

勝家は猛烈に焦っていた。

“よし、そうと決まれば一益。わしが望んでいる物を持ち帰って来い!先程の面白さを超える物を……な!”

 信長が一益に言っていた言葉。ど、どうしよう!?信長様は一益だけに命令をして、私には何も命令してくれなかった!!もしかして……!!私は信長様に見捨てられてしまったのか!?もしかして、私は要らない子なのか!?
 そんなはずはない……!!織田家で武勇最強のこの私、柴田勝家が見捨てられるはずはない!!常に信長様の盾となり、矛となり、前線を駆け回って来た!!!武勇で右に出る者は他にはいない!!!信長様を守れるのは、この私しか居ないのだあああああ!!!!

「……柴田様。顔を赤くされて如何しましたか……?」

 馬に乗っていた智慶が、勝家の様子が気になって隣に馬を寄せる。
 いかんいかんと、勝家は首を振って、何もなかったかのように振る舞い始めた。

「お……おお智慶殿! 息災で何より! 相良はどうした?」

 智慶は眉を潜めて、勝家の言葉に困惑していた。

「……いえ、我が主は甲斐の方に………?」

 そ、そうだったー!!何を焦っているんだ私は!?
 信長様が一益に命令を下しただけの事だぞ!?私に関係のある事じゃない!!
 ……いや、だがしかし!!その時、一益と私が口論で揉めている最中だった!!関係無いなんて言えないではないか!!しかも、信長様は一益の提案をそのまま丸々と承認してしまったのだぞ!?私は信長様に嫌われてしまったのか!?うぅ……うぅ……何故だ。
 考えれば考える程、勝家の頭は混乱していった。

「うぅ……!! 一体どうすれば!!!」

 隣で彼女を見ていた智慶は、何があったのか不思議そうにしながらも、心配していた。
 何か、嫌な事でもあったのだろうか?もしや、相良殿に変な……変な事されたとか!?ま、まさか。私の主人に限ってそんなはずはない。そんなふしだらな事をしているのなら、私はこの槍を持って今頃、あの方の首を飛ばしていた事でしょう。
 ……それに、相良殿は初めて私を分かってくれた人だから。

「……智慶。何故勝家はあのように魚の様に首を振るわせ、痙攣しておるのじゃ?」

 乗馬していた信長が、智慶と勝家の姿を見つける。
 勝家が異様な動きをしている事に信長が何事かと智慶に問い掛けてくる。

「……それが、声を掛けた途端に勝家様がこの状況になりまして………」

 自分でも訳の分からない智慶は、今この場で起きている状況について明確に答えようとした。
 ふむふむ、と頷きながら信長は勝家の近くにまで寄ろうとする。

「…おい、勝家」

「……」

 信長が話しかけると、必ず一秒以内には必ず反応する勝家からの返事はない。

「おい、勝家」

「……」

 再び信長が勝家の名前を呼ぶが、ビクビクと痙攣したままで勝家からの返事は無い。

「おい、勝家!」

「……え、あ、はい!?はい、勝家にございます!!」

 三度目の正直、と言う言葉があるように信長が声を掛けて三度目に我に返った勝家は返事を返した。しかし、信長は二度も呼んで返事をしなかった勝家に少しイラ立ちを見せる様に、冷淡な視線を送る。

「……なんじゃ勝家。二度も呼んで返事をしないとは一体何事か!!! それでもお前は、織田家に仕える武士か! 何を考えているかは知らぬが、もっとしゃんとせんかしゃんと!!」

 親が子供に怒鳴りつけるような勢いで、信長は勝家を叱った。ずーっと信長の事を考えていた勝家にとっては、一体全体何の話なのかも分からず、いつしかこれは現実なのか、と振り出しに戻るように頭を回していた。
 結局信長は、この状態の勝家に呆れて相手にせず、そのまま無視してパカパカと進んでいってしまった。

「…大丈夫ですか?勝家さん」

 少し勝家の容態が回復してきたと共に、彼女の具合の面倒を見ていた智慶は勝家に訊く。

「…心配を掛けましたな。どうやら、色々と考えすぎて、頭が回ってしまったようです。気にしないで下さい、このような事でへこたれていては、織田家の武士として恥です!」

 先程信長様に散々言われていましたけどね、と苦笑いをしながら智慶は彼女の話を聞いた。

「……はぁ」

 勝家は束の間に溜め息を吐く。
 やはり、少し落ち込んでいるようだった。何があったのだろうか、少しくらい話を聞いてあげられないか。と、智慶は思う。

「……あ、あの柴田様。一体どうなされたのですか?」

「聞いてくださいますか!?」

 勝家は目を輝かせ、智慶に顔を近づけると聞き返した。智慶は顎を引いて勝家から少し顔を離すと、焦りながらも頷いて見せた。

「……信長様に嫌われてしまったかもしれないです!! いや、これは確実に嫌われてしまった………!! 先程の私と一益の口論を見て下りましたでしょう!? あの時に、信長様は一益にしか命令を出さず、私には何も言ってくださらなかった。もうダメです。私は嫌われたのですよ……!!」

 (命令を出されなかったというより、一益が提案した内容に信長様が乗っただけのような気がするけれど……?あれ?もしかして、柴田様……勘違いしているのだろうか?ただ、そこを指摘しても落ち込みは治りそうにない。どうにか誤魔化さないと……)智慶は考えた。

「で、ですが柴田様!き、きっと信長様は柴田様の事をお傍に置いておきたかったのですよ!いざと言う時に、本丸を一人で容易に守れるような武将は柴田様くらいしかお、おりませんから……」

 勝家は、目を大きくさせて智慶を見つめる。

「おおおおお!!!! そういうことか!!! すまぬ、感謝するぞ!!! 智慶殿!!! 本当に、本当に恩に着る!!!」

 なんとなく、誤魔化す事が出来て智慶はホッと安心して溜め息を吐く。
 これで、なんとか話に決着が着いた。そう思って、彼女もその場から一歩前に踏み出す。
 今頃、相良殿は甲斐に着いているだろうか。信長様にご命令を受けたけど、私にあのような大役が務まるのか……?せめて、アドバイスをくれる相良殿でも身寄りに居れば……早く帰ってこないかな。

 すると、次の瞬間―

「て、敵襲!!」

 一人の兵士が大声で叫んだ。
 信長は、目の色を変えて遠くの茂みを見つめた。

「……間違いない。あれは斉藤家の軍勢じゃ……!! 遂に来たぞこの時が!! 長い間待ち望んでいたこの時が!! 全軍、総攻撃じゃ!!! かか……」

「うおおおお!!!!」

 勝家は大声を張り上げて、一人斉藤家の陣へ馬で突っ走っていく。
 織田軍の兵士は唖然として彼女のことを見つめていた。

「かかれ、柴田軍!!! 我らの根性、斉藤家の野武士共に見せつけてやるぞおおおお!!!!」

 槍を大きく振るわせ、次々に人の命を裂け散らしていく。その姿は、まるで鬼のさま。猛将、柴田勝家は織田家の行く末の為に今日も戦い続ける。誰よりも織田家の為を思い、誰よりも勇猛果敢に戦う勝家のことを、信長が知らないはずは無かった……。

「…さては勝家、先程の一益との一件で考え込んでおったな……よくもあそこまで命知らずで戦えたものじゃのぅ」

 さっきまで勝家が痙攣状態だった理由を悟るように、信長は落ち着いた表情で答える。

「……だが、勝家の感情的な所も私は嫌いではない! さぁ、皆の者! 勝家に続いて戦うぞ!!」

 信長はそういうと、馬に鞭を打って駆けさせた。

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