時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

川中島の戦い (五) 一騎討ち。

「......ッ」

俺は刀を握り締め、槍を構えて一歩ずつ進んでくる敵の兵士の様子を伺う。

「はあああああ!!!」

槍を構えて俺を囲んでいた兵士達が、一斉に突っ込んでくる。

「...くそ、やけくそだ!!」

馬に乗った状態の俺は、馬をムチで叩いて正面に向かってくる兵士の方へ走らせ、そのまま飛脚。

「...あの馬のこなし...父上以来久々に見た」

と、敵方であるはずの景虎は感心して見ていた。
その辺りにいた数人の武田の兵士達も参戦して槍同士、刀同士で両軍戦いを始める。
次郎の自分の馬に乗せたままの俺は、闇雲に戦えず、その場を駆け回っていた。

「...長尾の愚弄ども!!側面から攻めようなどと卑怯な手を!!信繁様を助けるぞ!!!騎馬隊、続け!!」

すると、乱入するかのように昌景率いる武田の騎馬軍団が前線から引き返して戻ってくる。本当の鬼のように怒り心頭な昌景は、敵味方を恐悦し、無我夢中に戦いを繰り広げる。

「...本当に、やられたもんさね。昌景、そのまま続けな!!」

すると、後方から聞き覚えのある声が聞こえた。

「今頃泣き崩れ、自我すら保てていない状態だと思っていたところ......。策士、策に溺れるとはこの事」

「ならば某めが腹を斬って詫びよう!景虎!」

今度は、馬一騎で登場する一人の女。先程まで俺が探していた勘助だった!
何処に居たんだ彼奴!ずっと探してたのに!!!

「勘助ェ...... 私が後できっちり説教してやるからぁ.... 
 まずは目の前の景虎を討つよ!!」

兵士達を引き連れて遂に戦場の前線にまでやってきた、武田の総大将「武田晴信」

「...御屋形様ぁ!!本当にもうじわげございまぜんでじたああああああああ!!!」

登場三十秒後に大泣きし始める、武田の名軍師「山本勘助」

運命は、決まっているのかもしれない。初めから。
でも、努力すればいくらだって変わるんじゃないか?努力すれば、いくらだって変わるんじゃないか?変えられるなら、とことん変えて、皆生きて帰る。もしそれが可能なら、限りなく正しいことを俺は言えたんだ、そう思えた。



「...戯れ言」

―景虎は、前線にまで押し上げられた晴信の陣に向かって種子島を放つ。
飛距離は然程良くないため、そこまで飛ぶことはなかったが、その大きな銃声によって、一時的に戦場は静まり帰った。

「...宇佐美。遂にお主が活用しようと何度も何度も私に申請してきたあの兵器が実装出来そうだ」

「...流石御屋形は分かっていらっしゃる。この種子島とやら...この越後流軍学においてどれだけ影響を及ぼしてくれるか、ここで試してやろうじゃないの」

景虎の下に居た宇佐美と言う一人の女の子は、種子島(鉄砲)を担いで、武田本陣に向けて攻撃を仕掛けようとしている長尾の鉄砲隊の方へ向かった。

「さて、そこのわっぱ。この私が手合わせしてやろう」

地面に串刺していた自分の槍を抜き取ると、景虎は持っていた刀を鞘にしまい、槍の刃を此方に向けてくる。

「相良!!次郎様を!!」

すると、丁度良いタイミングで赤い甲冑を着た昌景が次郎の受け取りにやって来た。

「......次郎を頼んだぞ、昌景」

気を失っている次郎をそのまま受け渡すと、昌景は自分の前に次郎を乗せる。彼女は頷き、そのまま立ち去って行ってくれた。

「...邪魔者は居なくなったか」

「...そのようだな、げすよ」

槍を構えたかと思うと、俺を外道扱いとは...。男ってそんなに嫌われてんのかい?目の前で槍を構えているロリっ子もそうだが、やっぱりこの世界では男が嫌われている。何があったか知らないけど、どうしても嫌われている。

「...なぜ男がそんなに嫌われているか知らない。だが、この勝負は退けねぇぞ」

刀を景虎に向けて、勝負師の俺は呟いた。

「毘沙門天の力を持って、只今よりこの男に天誅を下す。血塗られた赤身を世に晒してしまうこと、どうが天照様もお許し頂けるよう」

そう言って、右手を天に伸ばして何かを受け取るように胸の近くまで持ってくる。なんとも不思議な光景だった。

「...ッと!」

次の瞬間、彼女は狂ったかのように槍を左右に振り回し、馬を勢い良く走らせ、此方に向かってくる。
槍のけら首辺りを刀で受け止めると、削られるような鈍い音が耳元で響いた。そのまま力尽くで押し弾き、俺も馬を走らせた。

「...全ては御加護のままッ!!!!」

今度は景虎は馬を止めて、そのまま立ち上がり、天に向かって槍を掲げると、彼女は頭上辺りで槍を横にして少しづつ回し始めた。今がチャンスだと思えたがそれは一瞬の事。突然、景虎を中心とした突風が吹き荒れた。

毘沙門天の御導き“ドラグハリケーン”

導きの技...っ!?確か過去に二度、導きの技を智慶が使っていた。もしかして、景虎も使えるのか!?
同心円状に広がる竜巻はいつの間にか空高く上がり、龍の形をしていた。此方を上から高く、睨み付けていたのが分かった。こ、これが毘沙門天の...力!?

「いぐさの御神である、毘沙門天様のお怒りじゃああああ!!!」

どちらの軍かは分からないが、平氏がそんなことを言った声がした。毘沙門天は、戦の神。その神様がお怒りになったと勘違いしたのだろうか。しかしそれは勘違いじゃない。何故か人が殺意の感情を持っている時になんとなく分かる俺でも、今の景虎の心の中は全く読めなかった。
次第に竜巻は大きくなり、立っていることだけでも困難になる。何人かの兵士も飛ばされた。突然起こった突風が、霧をも晴らし、また川中島をも覆い、一瞬にして景虎の陣と成り果てた。

「...これで終わりだ、童。もう、お主を見ることはあるまい。恨むなら、己を恨むことだ。情に成り下がって戦ったお主の失態を」

「俺の...ゲームオーバーはぁ......!っく...信長がぁ...天下を......取って...から......じゃねぇと.........」

「...信?なんだ聞こえん」

一生懸命風に立ち向かったけど、結局今の俺じゃ...こんな弱い俺じゃ...景虎を倒すどころか、彼女の前に立つ事すらままならなかった。やっぱり、俺が信長の隣にいちゃ...ダメなのかな。威勢の良い事だけ言ってても、自分の実力なんてこれっぽっちも無い。駄目だ、俺。終わった。必死になって掴まっていた馬も、俺も、遂に飛ばされてしまった。

―そこから先は覚えていない。


「...ゆう」

竜巻が消えた後、結構な人数が飛ばされて行った事が分かった。戦っていた兵士の殆どが消えてた。軽く500は飛ばされたのだろうか......手を合わせはしたが、悔やんでも悔やみきれなかった。同時に、裕太殿の姿も無い。

「...邪魔は消えた。後は逆賊のお前だけだ、虎よ」

かっこいい名台詞を決めているように見える景虎だが、身長は140cmも行くのか?と言うくらいのロリッ子。毘沙門天の化身であるが為に、身長と言うものを失ったのか、あの小娘は。しかし、何処を見渡しても、裕太殿の姿が無いのだ。一体、何処に...

「...ではこれより、誠心誠意でお相手しよう、武田晴信。此処がお主の墓場となる事を」

白馬に乗っている景虎は、槍を晴信に向けると、誓いを立てて目をつぶった。

「...勘助はキッチリやるとして、あんたの首はもっとキッチリやらないといけないからねぇ...」

かかれ!!!

両軍の大将は、同時にそういうと、兵士達が最後の力を振り絞って戦いを始める。
すると突然、白馬に乗っている景虎が単騎で此方に襲い掛かってくるではないか。槍を自らの手の様に扱い、天下最強と名高い武田の騎馬隊の兵士を次々に刺していく。

「...っち、何だいあの強さ。尋常じゃない。うちの騎馬隊よりも!?」

「早過ぎる!!御屋形様!!危ない!!!」

信濃国川中島で、竜と虎が相搏つ戦いが繰り広げられた。
甲斐の武田、越後の長尾。
知勇に優れた両軍が、初めて直に牙を向け合ったのがこの戦だった。
そして、その戦の四回目。大戦火に見舞われた川中島の戦い。
武田軍死傷者およそ四千、長尾軍およそ三千と、戦国史上に残る大戦。

「...覚悟おおおおおおおおお!!!!!」

目の前まで迫った景虎は、最後に刺した兵士から槍を放さず、そのまま手放すと腰に掛けてあった刀を抜き、頭上から縦に大きく刀を振った。

「...今私は、機嫌が悪いだあああああああ!!!!!」

晴信はこの戦いでずっと身に着けていた軍配を目の前に翳すと、それで景虎の一振りを受け止めた。

世に逸話として語り継がれている、川中島の一騎打ち。
熾烈を極めたこの戦いによって、一人の軍師は成長することとなった。

「景虎ああああ!!!!」

満を持して堪えていた勘助が、刀を抜いて、景虎に斬り掛かった。景虎は、即座に晴信の軍配から刀を抜くと、勘助の攻撃を避けて腹から胸の方に掛けて勘助を斬りつけた。

「ぐはああ!!!」

「かん...すけ...!!!!」

晴信は、なんとか立っている勘助を受け止めて、そのまましゃがむ。

「甲斐の虎、それがお前の末路だ」

景虎は、そういうと本陣を抜け出し、いつの間にか何処かへ居なくなっていた。

「おや...かた......さ...ま」

「良いから、喋らなくてっ...いいから。勘助、私は絶対にあんたに説教しなきゃならないんだ...ッ!死なれたら困るよぉ...!!まだ、私の天下取りだって終わってない!むしろこれからさ!だから...だからこれからも......!!」

 勘助は、晴信の胸ぐらを掴み、力を振り絞った。

「はぁはぁ......っぐ...おやかた...さまなら...絶対にぃ...出来る......私が...居なくても......絶対に......どうか...武田を.........あなた様を!......天下へ......御導きをおお......ぐぁ」

「わたしは...い...つ......も.........一緒......です...ぞ」

胸ぐらを掴んでいた手が、離れ、落ちて....

「かんすけ...かんすけ...?かんすけ。かん...すけ.......ぐぅ...うぅ...くぁ...」

「かんずけえええええええ!!!かんずげえええええ!!!!」

川中島の戦い。これほどまでに虎と龍が強調された戦いは数少ない。
甲斐の虎、武田晴信と越後の龍、長尾景虎。
戦国史において名を残した二人の戦はまだ始まったばかり。
何かを得て、何かを亡くした二人に、今新たな道が開こうとしていた。

―そして、再び戦の戦火は尾張へと。

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