時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

斬撃と衝撃の甲州越え。 (一)

山を越えても険しい道のり。後ろの視線も険しい視線。進めば進むほど、変態集団が追いかけまわしてきて大変な状態。何処も彼処も、女の子を狙ってくる盗賊みたいな輩が多すぎる。なんだよこれ。おまけに、俺が刀を持つ前に、勝三郎がササッと敵を斬り倒して進んで行っちゃうし・・・。やっぱり、来なくて良かったんじゃないの俺?そして、勝三郎が刀を振るっていると、隣で拍手喝采で喜ぶ信勝の姿があった。

「お~凄い凄い」

「・・・おいおいおいおい、ちょっと待てよ!!俺の出番無さすぎだろ!!」

自分の出番の無さに、とうとうキレて怒りだす裕太。ワンワン吠える俺に向かって、一本の弓が飛んでくる。

「相良殿、騒ぐ前に貴方も刀を抜いて応戦してくれませぬか?そこら中敵だらけなのです」

と、俺の吠えを全く気にせず、ついには逆に注意され、飛んできた弓などには触れずに行ってしまうと言う事態に陥った俺の心は痛めつけられた。悲しい。しかし、それで引き裂かってはここで殺されてしまうではないか。勿論、刀を抜いて鞘をそこらに投げ置くと、信勝を守るように勝三郎の反対側につく。

「おぉ、たーくんもやる気だね~」

信勝がほんわか神という存在ってことで埋めつけられた俺にとっては、信勝をどうしても死なせるわけにはいかなかった。彼女を殺させまい、と不思議にそう言う気持ちが湧いてくるのだ。

「くっそ、やけくそだ!!」

と言って、集団で襲い掛かってくる盗賊のおじさん達に刀を向けて勢いよく斬り掛かった。しかし、相手もただ者ではない。殆どが瞬時に動くと、空中へ跳んで一回転して着地する。恐ろしい身体能力だ。そして、その着地した時の瞬発力で一人の男が槍を先手に襲い掛かってくる。しゃがんで避けたと共に、腹の辺りを刀で真横に切り裂く。そのまま足を掛けて転ばせて、また襲い掛かってきた別の男が引っ掛かって倒れる。

「くそ、何だよコイツ!尾張兵の癖に動きが早い・・・!」

「尾張はなまり腐った奴しか居ないと聞いていたぞ!?」

なんで俺達が尾張から来たと知っているのか、正直驚いて聞いていた。勝三郎は、次々に斬りまくっているが、どうやらその言葉は耳に入ったらしい。刀を振り落した瞬間、此方を鋭い目で睨み付けてくる。

「尾張は腐っている・・・?」

ん?え?

「もう一度言ってみろ。尾張がなんだと?」

これを好機だと勘違いしたおじさん集団の方々が、棍棒や槍などを突き刺そうと、勝三郎の裏に回っていく。逆にそいつらの後ろに回って回転切りを仕掛けていく俺にとっては、獲物としか言い難かったが。

「・・・お、お、お」

「わりが・・・」

口答えしていた盗賊二人が、勝三郎を前にしてなにも言い出せない。ただ、その場はお葬式の様な雰囲気と成り果てていた。・・・信勝以外は。

「尾張が腐っているなど、二度と口にするな!貴様らの方が卑劣で人を罵ることしか出来ない臆病者だ!」

そっちかよぉ!?来た場所がバレた事じゃなくて、弱いって言われたことに怒ってんのォ!?
彼女はそう言うと、二人に向けて刀を振り下ろす。無残に斬れた体と溢れ出す血が、そこら中に広がってそこはもはや地獄とも表現できない。ただ、そこに立つ、血塗られた刀を手にする女の子が下を向いて俯いていた。

「・・・何処の雇われもんだこれ」

俺は気絶していた兵士に寄っていき、すかさず何か手掛かりが無いかチェックする。腰に掛けてあった刀などを抜いて茎を取って何か手掛かりが無いかと確認してみた。汚れていたので、多少読みずらい部分があったが、読める部分だけ読んでみると、ある気になるキーワードが目に留まった。

「たけ・・・だ?武田って書いてあるな」

「武田が手を回しているのか、武田は関係ないのか・・・あるいは試しているのか」

「もしかすると、武田じゃない所が武田を背負って根回ししているのかもしれないし」

全く分からない状況のまま、進むと言うのはとても難しい判断だった。三日は走ってる気がするけど、ずっと山ばかりだから何とも言えないくらいに気持ちも落ちて来てるし。もしこのまま進んでまた襲われたら今度ばかりは危ない。

「どうする?誰が襲って来てるかもわからん状況で進むのは結構辛い判断だと思うが・・・」

投げ置いていた鞘を取りに行って、刀をしまうと俺はそう言って二人に相談をする。勿論、進まないなら引き返すしかない。でも、引き返したら同盟は成立しない。無理に攻めてくる可能性だってある。だが、このまま進んでしまっても、どうなるかは虫の良い話でも何でもない。全く未知の領域に値するだろう。決断が迫られた。

「まあ、退く義理もあるまい。このまま進んでまた出てくれば、その時は問答無用で斬り捨てればいい話。第一に、目的は同盟なのです。突っ走って逃げればいづれ甲斐に入るでしょうし」

「それはそれでいいと思うけどよ、今どこに居るか分からないだろ?」

「いや、今南信濃に居る。高遠を越えたのだ。そろそろ甲斐に入るころだろう」

む~と、二人で考えるとただ時間ばかりが過ぎていく気がする。どっちも押しが弱いからか?決断してくれる人が居ない為、話が一向に進まない。
・・・ん?決断してくれる人が居ないだって・・・?

「じゃあ、もうこのまま進んじゃおうよ。どうせ近いんだったら、先に進んだ方がいいよ~。進むを知りて退くを知らずって言うでしょ?さ、れっつごー!」

信勝は笑顔でそう言うと、鼻歌混じりでずんずん進み始める。ちょっと待って!?進んだら危ないって言ったよね!?殺されちゃうかも知れないでしょ!?行ったら・・・。

ーそれでも、決断できなかったのは俺達だった。

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