時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~
軍師誕生。
「それじゃ、軍評を始めるよ。」
俺は本殿の正面門を背にして座っている。
正面には信長。右側には、前より勝家、一益、佐々、利家、藤吉郎。左側には長秀、森、浅野、秀唱。
そして、この軍評の司会及び進行役である俺。
雨は一向に止まない。今川の進軍も止まらない。だからこそ、ここで決めなきゃいけない。
ー方向性を。
「さて、始まる前に一つ聞きたい。」
話を持ち変えると共に、新たな話を切り出す。
俺は、左手で右手を叩いた。
「俺がこの場で、軍評を開いたとして・・・。文句があるなら先に言って欲しい。」
一度、全員の顔を見返すが特に文句は無いらしい。
それはそのはず。一益の配下に付き、先程一益に軍評を任された。今の状況を十二分に分かっているのは俺であり、文句を言われる筋と言うものはこれ一つ存在しない。
「・・・。じゃあ、このペースで話を進ませてもらうぜ。」
一度、目を瞑り深呼吸して心を落ち着かせる。
このような体験は初めてだ。会社の会議とはこの様な雰囲気で行われるのだろうか。些か気になる。
「まず、現在状況。信長、把握はしているか?」
俺はそう言うと、信長に話を持ち掛ける。
信長はニヤリと笑うと、口を開く。
「すまぬが・・・。さっぱり分からぬ。一から話して貰えるか?」
この時点で、浅野長吉は此処に合流していた。
信長が急いで此方に向かったということを聞き、鷹の様に現れたらしい。
実際、俺も長吉の姿を見た時は驚いた。その速さのおかげか、体には水滴一滴すら付いていないのだから。
「まず、一益隊が鳴海城を落とした。」
俺の言葉と共に、周りに居た一益、秀唱以外の女の子達は驚きの声を上げた。
柴田勝家なんか、すっごい驚いてたからね。顎が上がらないくらいガタガタさせてました。
「それは誠か!?」
「あの少ない兵数で・・・。」
「一益よ。大手柄じゃな!」
勝家、長秀、信長の順で驚き話す。
「実際、うちの防衛網に関しては那古野近くにまで前線が押し上げて来てる。丸根砦も、今川の知将である太原雪斎に落とされた。その分、うちが抵抗し続けてるってのもある。でも、それだって時間の問題ななのは目に見えてると思う。」
その勢いのまま、目の前に出ている地図を使って説明しながら状況を話した。
「これ以上は・・・。」
勝家が全てを話す前に口を止めた。
流石に、それを言うって言うのは命が惜しいのか。鬼柴田も・・・。
「もし、お前たちがここで諦めたいと言うならば・・・。わしも腹を決める。」
信長が言った。信長が言った頃、周りは沈黙を有していた。
勿論、俺もその一人である。
信長はこう言った。もし、戦を止めたいならここで止めると。織田家は降伏する、と。
「天下を取るのなら、そっちの方が手っ取り早いのではないか。今川に服従を誓い、天下を取ってもらう。その方が、平和な世界は早く作れるのではないか。わしが頑張る必要性など、無かったのだ。」
「の・・信長様・・・?」
信長は下を向いて話す。信長・・・。嘘だろう?
一益はというと、なんということでしょう。この場で下を向いて寝ているのが私には分かります。
そうですよね。眠いですよね。だから私に全部任せたんですよね。はぁ・・・。
「信長様、一体どうしたの?突然・・・。」
長秀が心配そうに話した。
次の瞬間、信長の瞳から涙が零れる。
「もう・・・。もう嫌なのじゃ・・・。これ以上、織田家の崩壊を見たくはない・・・。私は、仲間を失いたくないのだ・・・。今ならまだ早い。誰かを失う前に、終わらせたい。わしだって・・・。今日まで平気な顔でいたが・・・。うぅ・・・。父上を失った時だって・・・。」
「そこで・・・そこで諦めんのかよ・・・。」
彼女は泣いている。しかし、その前に彼女は織田家の当主だ。女の子を泣かすのは男の恥だ。でも、ここは織田家の分岐点にもなる場所。信長がここで勝ってくれなきゃ、彼女も、織田家の女の子達も救えないじゃねぇか!
「そこで諦めんのかよ!信長!!」
俺は大声で怒鳴った。
それと共に、雨は大粒になって大量に降り注ぐ。
「織田家の当主が、未来の天下人になる女が、ここで諦めていいのかよ!お前には、今川に服従するよりも大事な物があるだろ!お前にとって、織田家はなんだ!家臣はなんだ!天下はなんだ!信長、言ってたよな。天下を取って、人々が平和に暮らせる世界を作りたいって。その夢の為について来てくれている家臣の事は何も考えてないのかよ!どうなんだよ!信長!!」
信長は、拳を握る。
辺りには沈黙が走った。
「・・・たい。」
小声で良く聞こえなかった。
また沈黙が走る。
「・・・取りたい。」
少しづつ聞こえ始めるが、まだ正確には聞き取れない。
信長は、体を起こすと俺を真っ直ぐに見つめた。
「天下を取りたい。」
信長はハッキリとそう言った。天下を取りたい・・・。と。
俺は服の皴を伸ばすと、正座に座り直して彼女を真っ直ぐ見つめた。
「ならば、この俺相良裕太。織田家の軍師として精を尽くしていく所存。良いだろう?」
俺は信長に対して頭を下げる。
ジッと、信長の回答を待ち続けた・・・。
彼女は、涙を布で拭くと、真剣な顔で此方を向く。
深刻な雰囲気が漂う中、信長は口を開いた。
「良かろう。これより、お主を我が軍師として取り立てる。名の通り、励むが良い!そして、織田家は何があっても今川を叩き潰す!皆の者、良いな!!」
信長は大声で言った。
その声は、この部屋の中に居る人にだけではなく、兵士全員に届く様な声であり、兵士達はその後、一斉に「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」と、相変わらずの高い声で叫んだ。
勝家達も、納得して兵士達と同じく叫んだ。
・・・。さて、ここからが本題なのかもしれない。
藤吉郎と、俺の情報を組み合わせた渾身の策。この先、織田家の道筋を示した大胆な策だと思わせた。
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