時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~
俺が刀を振るうことになるとは思わなかった……
おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
信長の大声で織田軍も、斉藤軍に攻撃を仕掛ける。
最初は、織田軍が優勢であったが、義龍の巧みな攻め方で斉藤軍も押し敗けてはいなかった。
それでも、織田軍の先陣を駆け回る女の子が一人いた。織田信長は、必死で戦場を駆けていた。
「全軍、私に続くのじゃ!!」
織田軍も負けじと踏ん張り、斉藤軍と張り合っている。
信長が前線で戦うことによって、兵士達の指揮は上がる。皆、君主を守ろうと命懸けで武器を振るう。
信長を見ていたら、俺も彼女を何が何でも助けたくなった。だから、さっきはあんな風に言って義龍の気を引かせた訳だけど……。
義龍に泥を塗った俺を散々に恨んでいる斉藤軍の兵士達からの猛攻撃は、単体で戦場を駆ける俺に集中していた。
確かに、文句は言ったけどこの猛攻撃は理不尽過ぎる!!鉄砲の弾は次々に飛んでくるし、背後からは弓が襲い掛かってくるし…止んだと思えば槍兵がここぞとばかりに襲ってくる。蜂の巣って用語はこういう時に使うんじゃないのか!?
「ふう。本当に危なっかしいです」
近くに居た槍の彼女は俺の元に迫る槍兵を追い払うとそう言った。
「いや、狙われるから逃げてるだけなんだけどね……」
「狙われないように、殺して差し上げますが」
そ、それだけはー!お許しくださいー。と、心の中で発する。
次の瞬間、槍の彼女に一人の敵兵が斬り掛かろうとした。
「おい、後ろ!!!」
彼女は、俺の掛け声で察すると槍を右へ九十度回し、回れ右で後ろを向くと、敵兵を槍で突き刺す。
そのまま刺し抜くと、他の周りにいる敵に対しても次々に斬りかかった。
まさしく、殺し屋!天性の殺し屋!!強すぎる!!これが戦国時代だったのかよ!?
いつの間にか俺ではなく槍の彼女に対して敵が集中攻撃を仕掛けるようになる。
しかし、いくら数で挑んでも所詮無象。次々に蹴散らし、槍の彼女の周りには無残に斬り込まれた死体が転がり、地面は真っ赤に染まった海が広がっていく。
まるで、死神が血塗られた舞台で舞を踊っているような槍の武芸。
その圧巻さに、敵はその場から少しずつ下がって逃げていくが、そこでも織田軍に挟み撃ちにされ、斉藤軍はたちまち、総崩れとなっていった。
「己えええ……是非に及ばずだ………私があの男を殺る!!」
義龍が此方に向かって馬に乗り、駆ける。
「我が軍の雑兵共に頼った私が馬鹿だったわああ!! 私が直々に天誅を下す!!」
気付けば、彼女は目前まで迫っていた。
「覚悟おおおお!!」
「な……!」
彼女は刀を抜き、今にも俺に斬り掛かろうとしていた。
人生の終盤か……こんなところでやられてたまるか……!!でも、対抗できる武器なんて持ってないし……くそ…最後に、槍の彼女の名前を聞きたかったよ……
俺は目をつぶり、死を覚悟する。
「 “天性の導き”ライナソルト」
すると、突然目を閉じていても分かるくらいの光が辺りに輝いた。
目を開くと、槍の彼女が天に槍を向けている。刃の先から不思議な光が放たれていた。光に見とれていた兵士達は動きを止め、また義龍の馬もその場を動こうとしなかった。
「確か……智慶だったか」
「……」
槍の彼女(以後智慶)は、唇を噛んで義龍を見つめる。
「その槍の腕前でありながら士官先を見つけず、放浪しているのだったな?」
智慶は、義龍の言葉に頷くも、彼女に向かって槍を構えた。
「……それとこれとは別。この人は私の恩人です」
義龍は下馬すると刀を智慶に向けて斬り掛かった。
今度は智慶もそれを受け止めるように槍を横に持ち変えた。
「しかし、まぁ……今の技で体力の消耗は激しいだろう? いくら強いとは言え、ただでさえ無尽に大勢切り殺していた人間がこれ以上動けるわけが無い」
義龍は、足で智慶を突き飛ばした。
勢いの強い蹴りで、智慶は跳ねて飛んでいく。
「さて、どう成敗するか……」
義龍は、全く笑みを浮かべずに智慶の元まで歩き、刀を両手に持ちながら刃を智慶の倒れる真下へ向ける。
その姿を見た俺は、怒りが込み上げて来て、自然と足が一歩前に出た。
「やめろ」
こぶしを握り締めてそう言い放った。
「また貴様か!! 何故私の邪魔ばかりを……」
「止めろっつってんだよ!」
義龍は刀を此方に向けた。ここで立ち向かわなくては守ってくれた人の命を失う事になる。
だったら、死んでも守り抜いてやる!!
「俺が相手になる! だから、その子には手を出すな!」
「雑魚風情が。お前が私を斬る? ふざけるな!!」
義龍が刀の持ち方を変え、駆けてくる。
また、目の前で跳びかかってきた。
「絶対に許さねえええ!!!」
俺は咄嗟に自分が刀を持っていることを思い出して腰に掛けてあった刀を抜き、義龍に対抗する。初めて人に刃物を向けたが、恐怖と自分の罪に対する感覚は無かった。
「……手こずらせるか」
「くそおおお!」
義龍の刀を弾き返し、斬り掛かる。
義龍も攻撃を受け止めて一歩も譲らない。
流石、斉藤軍の大将。武術も熟していた。
「これで終わりにしてくれる!!!」
「はぁぁ!!」
「……!!」
義龍は俺の攻撃を刀で受け止める。
しかし、何度も俺の力強い攻撃を受けたためなのか、刀が真っ二つに割れた。
その拍子に、俺の刀は義龍の体へ向かい、切り裂いた。
彼女の腹部から大量の血が溢れ出した。
「……義龍、てめぇフラグ回収してんじゃねぇか」
「…りかいっ…できぬ言葉を……使う………まだ…これか……ら……」
我を取り戻すと、俺は義龍を斬っていた。左手に持っていた刀を、鞘にしまう。
義龍は泣いていた。
「義龍・・・これがお前が犯した罪の末路じゃ」
「どうせなら……信長を…倒…して……尾張が……ほし…かっ………た」
「しかし、現実を受け止めよ。お主は雑魚と称した男に殺られるにまで陥らされたもう同じ過ちは起こさぬと誓うのだ……」
平地に佇んだ場所で、一人横倒れる義龍は空を見上げた。
自分の無念さを抑え、目をつぶる。
―信長は、刀を振り下ろした。
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