非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の恋の理由と俺の彼女の暴走

百三十九話





【新転勇人】





父をソファに座らせ、俺たち二人も脇に座るようにしてソファへ腰掛ける。
「で、どうやってあんな美人で抜け目なさそうな子を手篭めにしたんだ?場合によっちゃ警察呼ぶけど」
「そっか。円香呼ぼうか?今思ってること全部裏切られると思うけど。」
「は?何言ってんだ?あんなよくできた子他にいないだろ。」
円香に幻想を抱いてる高校生みたいなこと言ってるな。
「はいこれ」
適当な服を着た結花がお茶の入ったコップを持ってきてくれた。
長話になると予想したのだろう。
素っ気ない素振りだったがよく出来た妹だな。
「兄貴には彼女がいるみたいだが、結花にはいるのか?」
思春期の妹と会話したいお父さん。みたいな図で、ポリポリと頬をかきながら尋ねやがった。
よりにもよってこんなときに。
これ結花ブチギレるんじゃないか?

「いるけど……言わない」
おいおいまじかよ……。
そもそも結花は話するためにここにいるんじゃなくて、親父が変なことしないように見張るためにここにいるのに。
「もしかしてそれって父さんの事か?」
クソ親父すぎる。
結花は部屋に戻しとけばよかった。
円香とあの男を二人にするのも嫌だし。

「…………は?」

絶賛二人っきりやんけ!
なにしてんの!?
「どうした息子よ」
「ちょっとまってて!」

俺はリビングのドアを勢いよく開けた。






【新天円香】






勇人くんまだでしょうか……。
この方と二人きりなんて、結花ちゃんにも申し訳ないですし、なんか浮気してるみたいで嫌です。
「新天さんかわいいって評判だけど生で見るとかわいすぎ!やば!」
それになんかすごいヨイショしてきますし。
「なんかおしゃべりしましょーよぉ」
「嫌です」
私は勇人くんの妻であって、他の男の人にかわいいとか言われてもこれっぽっちも嬉しくないんですから。
「そんなにあの取り柄なさそうな奴のこと好きなんですか?」
むっ!なんですと!?
聞き捨てならないですね!!
「確かにパッとしないかもですけど、勇人くんはかっこいいんです!」
パッとしないかもですけど!!
「じゃあ俺と付き合ってくださいよ!あの人よりかっこよくないっすか?どうよ!」
「はぁ。話になりませんね。これならまだ猿と話していた方がマシですよ」
というかなんで見た目の話をしているのでしょうか?
「私は、勇人くんの見た目に恋をしたのではなく、勇人くんという存在自体に恋をしたので。残念ながらあなたじゃ私の彼氏は超えられません。」
私の彼氏は世界一なので!
どんな俳優さんよりも魅力的でかっこいいのです!

「そっかぁ……じゃあ力ずくでものにするのは?」
「そういうのには諸事情により慣れているので私には通じませんよ」
「冗談冗談。そんな怖い顔しないでくださいよ。かわいい顔が台無しですよ?」
なんか気持ち悪いです……。
それに、結花ちゃんのことかわいいって言ってるのに私にもかわいいって言ってますし。
やっぱり口説き落とそうとしてるんですかね……。
「出てってくださいよ!私と二人きりになる権利は勇人くんしか持ってないのです!」
「えぇー。それくれませんか?」
「寝言は寝て言え!ですよ!!」
私は彼の背中を押して部屋から強引に押し出します。
力強くドアを閉めてあからさまに拒絶を示します。
「ま、まだ結花ちゃんいるしいっか。」

なんかドアの向こうから物騒なことが聞こえたのですがこれは空耳でしょうか……。
結花ちゃんの部屋のドアの音が聞こえます。
「あ。」
……勇人くんの家なのに自分の部屋かと思ってドア強く閉めちゃいました……。
壊れてないといいのですが……。

「それよりも……」
一通り部屋を見渡します。
…………うん。
少しです。
少しならバレないですし、問題ないですよね……?
少しですから。

うん。少しだけ。





【新転勇人】





「うぉっ!」
俺がドアを開けた瞬間、二階からとんでもない音が聞こえた。
多分ドアをバタン!ってやった音だと思うんだけど……。
「円香!?」
考えてる場合じゃない!
あの彼と二人きりにするのは怖いしなんか嫌だ!!
階段を駆け上がって自室のドアを叩きあげる。
「――わっ!どうしたんですか勇人くん!」
部屋には、瞬間的に姿勢を正座に正した円香が一人でいた。
姿勢を正す前は多分、床に這いつくばってベッドの下を見てたけど……。
「ねぇ円香?今何してた?」
「床の温度を確かめてました」
・・・はい?
「……もう一度聞くよ?今何してた?」
「床の温度を確かめてました」
かたくなだなぁおい!
「まさかとは思うけどさ……?」
円香が握っている携帯に目を移す。
……やっぱりか。
「円香は俺の部屋に来るたびにベッドの下チェックしないと死んじゃうの?」
「見、見てないですよ!!?たとえ見てたとしても、チェックしないと死んじゃうんじゃなくて、変な本があったら死んじゃうだけです!」
よし。今度円香を俺の部屋で一人にする時には椅子とかに縛り付けてから行くことにしよう。
それに、必死に否定してるけど証拠が煌々と光ってるからね?
俺は円香の手を指さして口を開く。
「スマホのライトついてるよ」
「やっ!いや!これは!!」
ワタワタと焦った円香はスマホを膝の下へと滑り込ませる。
「そ、そうですよ!あの!あれです!充電が減るのが遅くなるんですよ!」
「はいダウト」
「うぅ」と顔を伏せしばらく考える。
「あ!あれです!WiFiの繋がりが良くなるんです!」
「ダウト」
「むぅ……」
円香が頑張って嘘つこうとするのを見ているのは幸せだなぁ。
「…………ごめんなさい見てました。変な本があったら燃やそうと思って……」
えぇ……物騒すぎるよぅ……。
「ま、円香?あったとしても燃やすのはやめない?近隣に迷惑かかるしさ!ね?持ってないんだけどさ!」
「あぁ!それ持ってるみたいな言い方ですよ!どこ!どこですか!!」
「違う違う違う違う!もってない!もってないから!そのチョキみたいな手やめて!?」
円香は目を見開いて、俺を見ているようで見てない真っ黒な瞳で俺に近づいてくる。
「勇人くん……?ねぇ、本ですか?ディスクですか?ねぇ」
「円香!一回落ち着いて!?俺は持ってないし買ったこともないから!」
「嘘ですよ……勇人くんは嘘つきです。ずるいですよ……ふふ」
「やっ!ちょっと!やめっ!――いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」










みんなぁー集まってぇー!




はーい。みんなが集まるまで5分かかりましたー。
この五分は誰かが生きたくても生きれなかった五分です。
あなた達はその時間を無駄にしたんですよ?
分かってますか?
先生は分かりません。



みんなぁー解散してぇー!



はい。みなさんが解散するまで5秒かかりました。

みんな解散するの早すぎだね(虚空を眺めながら)





みんなこの話終わったらコメ欄見ようね

コメント

  • 猫ネギ

    嫌われてるのか

    2
  • うみたけ

    集まるのは5分…解散は5秒
    ( -ω- `)フッこれがこの世界の真理か…

    1
  • Flugel

    こいつぁすげぇや!
    何がしたいのかさっぱり分かんねぇ!

    2
  • 大橋 祐

    井戸さんが……。
    ついに本物の井戸さんが……。

    1
  • 井戸千尋

    おうおうみんな井戸が何も言わないからって好き放題コメントしてくれてるじゃないか。おうおうおう!!

    12
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