非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私のまさかと俺のまさか

百三十八話






【新転勇人】






「勇人くんのお父様ですか!お義父さまですか!」
「なんで言い直したの」
いやツッコミ入れてる場合じゃねぇ!
とにかく結花にも伝えないと!
「結花!」
部屋を飛び出し結花の部屋のドアへと手をかける。
ん?なんで今あの男いたんだ?
まぁいいわ!
今そんなこと気にしてる時間ない!!
「結花ァ……ぁ…………?」
なんで服脱いでるのあなた。
「で……」
「で?」
「出てけぇ!!」
「ぶばィ!」
いってぇ……。
腹蹴られて追い出された……。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫大丈夫」
なんか年下に心配されるとか気に食わないから素っ気なく答えてやった。
いやだからそんなことしてる場合じゃないんだよ!
「結花!やばいんだって!親父が帰ってくるんだって!」
「え、マジ?」
ドアが開き、目を丸くさせた結花が下着姿で身を乗り出してきた。
「マジ!!てか服着ろ!」
「うるさい変態!!」
理不尽すぎない!?
痴漢冤罪みたいなことされたんだけど!
しかも実の妹に!
「勇人くんは変態じゃありません!」
「円香はいいから!それより親父帰ってくるから!帰った方がいい!」
「どうしてですか?挨拶したいです!嫁として!」
違うんだよ!
そうじゃないんだってば!
「うん分かった!あとでにしよ?嫁でいいから!ね?」
「嫁です!了解です!お口ミ〇フィーちゃんにします!」
よしえらい!
ってか近くのバス停ってどこ!?二人とも帰す時間ある!?
「たっだいまー!!」
おっつ……。
「あ!お義父さまですか!?あ……ミッフ〇ーちゃん……」
「……もういいや、どうにでもなれってんだ」
俺は口を抑えながらチラチラ見てくる円香の手を取り玄関へ向かった。





【新天円香】






「息子ー!帰ったぞー!」
「おう、聞こえてるよ、今度はどこで油うってたんだ?」
私の手を握ったままお義父さまと喋り始めた勇人くん。
でも――
「勇人くんお義父さまにそんな言い方は!」
「今回はドバイだ」
「そうかよ、で、いくら残ったの?」
「三万」
ま、待ってください?
何の話ですか?
油うってたって?
仕事ほったらかして挙句財布の中に三万円しかないってことですか!?
「よし、母さん呼び戻そう」
「あーぁ待ってそれだけは!なんか無視されてるんだから!」
ハッ!
まさか勇人くんはこれを見越してさっきお金の貸し借りの話を……?
「どうせまたギャンブルだろ?運も実力もないのにさぁ。もうヒモと一緒だからなそれ」
「いやな、父さんも負けたくて負けてるわけじゃないんだからな?」
「カジノ行く暇あったら油掘るくらいしてろよ!」
んんんん??
「だから父さんは掘る係じゃないんだ。たまたま洞窟潜ってたら見つけて、権利を売って、月ごとに金もらってるに過ぎないんだよ!」
んんんんんんんんんん???
「よくもまぁこんな親父を好きになったね母さんは」
「母さんを悪く言うな!息子だといえど許さないからな!」
「おーっと?自分がダメ人間だって気づいてたんですかぁ?」
「息子ぉ……!」
「親父ぃ……!」
「――ちょちょちょちょちょちょっと待ってください?えーっと、整理させてください?お義父さまは何をしてらっしゃる方なんですか?」
失礼なことを聞いてるということは承知の上です。
でも聞かざるを得ないじゃないですかこんな状況!!
「お恥ずかしながら、今はカジノ通いのニートをしてるんだよお嬢さん。」
「えっ?その資金といいますか……お金というのはどちらから?」
「会社からだよ?」
ますます理由がわかりません。
カジノ通いのニートで?
六千万円までカジノで当てて?
ドバイで油をうっていた……?

…………まさかですよね。





【新転勇人】






そのまさかなんだよなぁ。
円香の泳ぎまくってる目から「まさか勇人くんのお義父さまって……まさか!?」と聞こえてくる。
「円香、落ち着いて聞いてね?」
「は、はい。」
円香の視線が俺の目へ集中する。

そして、返事から少し間をあけ口を開く。
「油を売ってたっていうのは文字通りの事なの」
「えーっと……暇を潰すとか、時間を浪費させることではなく……?」
「うん、油を流通させる方」

「石油王!!?」
目ん玉落ちるんじゃないかというほど目を見開いて、ちょっと後ずさりしている円香。
知ってる反応だ。

数年前に、俺と結花がみせた反応と全く一緒だ。
「いやいや、石油王とかじゃなくて、権利を売って、ローン的にお金を振り込んでもらってるだけだよ。一度に使わないようにローンにしてもらったんだ。おじさん頭いいだろう?」
「本当に頭いいやつはギャンブルでその金の殆どを無駄にしたりはしないけどな」
「違いますー!勇人の口座に振り込む分が多すぎるんですぅ〜もっとあったら絶対勝てますぅ〜」
「息子の生活費奪ってまで遊びたいのかこの野郎!」
「一生遊んで暮らしたい」
この親父……ッ!!
「それよりこの子お前の彼女?」
「あ、いや。まぁ……」
「し、新天円香と言います!あの!勇人くんとは清らかなお付き合いをさせていただいております。よろしくお願いします!」

【清らか   とは】検索っ!!

手を差し出す円香。
だが手の先は微かに震えていて、緊張してるのが丸見えだった。
「へ〜清らかねぇ……で、どこまでいったの?」
「おいクソ親父」
「勇人くん!そんな言い方ダメですよ!」
「そうだそうだ!もっと言ってあげて!」
したり顔で調子に乗ってんなぁ……。
くそぅ……。
「ま、まだ恋人までしか……きゃっ」
何言ってんのこの子。
恋人?
は?
「恋人?なんだそりゃ?新しい日本語か?」
「いや、お恥ずかしながらまだ夫婦にはなれてないんですよ……」
いや、お恥ずかしながらまだ誕生日がきてないんですよ……。
相変わらずだな!
親の前でもその飛びっぷりすごいよ!
「夫婦ねぇ……勇人、今晩男と男の大事な話がある。寝るなよ?」
「お、おう」
円香の飛びっぷりもなかなかだけど、親父の話の飛びっぷりもなかなかだ。
「あのぅ……」
「おぉ結花!って、なんで下着なんだ?」
「パパ嫌い」
「おっふ……」
“パパ嫌い”これだけは将来言われたくないな。
ハゲとかブスとかならまだ許せるけど、嫌いって自分の娘に言われちゃうと……。
「パパ死の……石油飲んで死の……」
今の親父みたいになり兼ねん。
「ま、円香、とりあえず部屋戻ってて?すぐ行くから」
俺はとりあえず、円香のことや今家に結花の想い人が来ていることを親父に伝えるために円香を部屋に戻す。
「分かりました!すぐですからね!」
「はいよー」
元気のいい返事で階段を駆け上がる円香。
「よし。結花も来て?親父に変な動きされたら困るでしょ?」
「うん。いく。」
「困るんだぁ……石油飲も……」
そこなんだぁ……変な動きするつもりだったんだこの人。
俺は肩を落としている親父の肩に手を回し、リビングへと連れていった。








シュン!シュン!(高速で動く音)
タタタタタタタタッ(手をこうやって後ろにやって走るあれの時の音)

ハァハァ。
やぁみんな。遅れちゃったね。
少しエベレストまで行っててね、走って帰ってきたんだ。

え?海?あんなのアスファルトと同じだよ。
どうしたんだい?

あ!もうこんな時間!
ごめん!今から月で待ち合わせしてるんだ!
んじゃ走って行ってくる!

コメント

  • Karavisu

    let's go

    1
  • クロエル

    そのまま天国まで行くんですか(ジト目

    1
  • 帆楼

    オリンピック出れますね(ジト目)

    1
  • Flugel

    いつから超人になったんですか(ジト目)

    1
  • ミラル ムカデ

    頭大丈夫ですか(ジト目)。

    1
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