非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私のキス待ちと俺の助けてない猫

百三十六話





【新転勇人】






「勇人くんいよいよですね……」



「勇人くん!なんでしょう!緊張してきました!!」



「勇人くん」



「勇人くん」




――どうしよう全然話が入ってこない。
なに?俺はどんな格好してればいいの?
てかそもそも「ゆ、結花の兄です……デュフ」とか言って挨拶するもんなのか?
それより円香がさっきから何か言ってるけど全然聞いてられない……。
こんなに緊張するもんなの?
親父!帰ってこい親父!
大事な娘のピンチ?だぞ!!
どこで油売ってんだ!
「勇人くんえっちなことしましょう」
「はぁ!?」
ちょちょちょちょ!!
え!?
「ふふっ、嘘ですよ♪やっと反応してくれた」
「いや、そうじゃなくてさ!?」
円香みたいに、歩く清楚みたいな女の子がはしたない事言っちゃいけないでしょ!?
「だって勇人くん反応してくれないんだもーん。ばーかばーか」
あんなこと言ったあとに、タメ口モード入るのやめて?
威力高すぎるから。
「だからってあんなこと言わなくても!」
「あれー?もしかして勇人くん照れちゃってますかぁ?」
「照れてないし」
「やっぱり〜照れてるじゃないですかーうりうり〜」
妖艶な笑みを浮かべた円香が俺の頬をつついてくる。
「照れてないから!パクつくよ!?」
「勇人くんになら満更でもありません」
いや、満更でもないって傍から見た人が言うセリフじゃない?
「勇人く〜ん」と俺の顔を覗き込んでくる円香。
…………かわいいの前では全ては正義になるな。
叫びたい。
牧野つ〇し並に叫びたい。
「でもよかったです。少しは緊張ほどけましたか?」
「……うん。まぁ、ありがとう」
ありがたさしかないけど正直円香の柄にないようなこと言われると心臓爆発するレベルでドキドキするからそれだけはやめてね?
「――ただいまー」
「帰ってきましたね」
タイミング良く、下の玄関から声が響いた。
俺たちはコソコソと部屋の扉に耳をつけて聞き耳をたてる。
なにか喋ってるみたいだけど、さすがに声は聞こえなかった。
「どんな人なんでしょうね。」
俺の手をギュッと握りながら心配そうに呟いた。
……最初は殺意むき出しだったのにな。
「あっ、上がってきましたよ」
階段を上ってくる音に合わせ、小声の円香が実況をしてくれる。
「部屋わかるのでしょうか?もしかしたら間違えて私たちの部屋に……」
「円香、そんな事言うと本当に間違えちゃうから」
「大丈夫できゃっ――」
「うぉっ――」
はい案の定。
俺の部屋は入る時にはドアを引くようにして開ける。
つまりは――
「うぉっ!焦ったぁ……」
ドアにもたれかかるように耳をつけていた俺たちは急には体を引けずに、結花の連れてきた男の足元に転がってしまった。
「いたたた……勇人くん大丈夫ですか?」
「うん、なんとか……」
唖然としてるであろう結花の(略)を無視し、ゆっくり立ち上がる俺たち。
多分円香は何も無かった感じを出しながらドア閉めるんだろうな。
「じゃあ勇人くん――」
「どうしたの!?何かあったー?」
遮られた。
コレ絶対顔を合わせるか、言葉を交わすしかない。
俺はここで初めて男の顔へ目を向ける。
「あ。」
「え?」
俺と目が合いかけたその瞬間、まるで俺を知ってるかのような声を上げた。
なに?
俺指名手配でもされてる?
困るなぁ。
「やっぱり新天円香だ!キス好きの!」
んーーーー俺じゃない!
しかもなんで円香の印象がキス好きなの?
もっかいしよ事件の目撃者なの!?
「キス好きってなんですか!前に、勇人くんとのって付けてくださいよ!まったく!!」
惜しいなぁ、そこじゃない!
非常に惜しい!
「俺好きなんですよ〜!ね?ちょっとお話しません?」
「おうおうおう彼氏の前でいい度胸じゃないか」
「そうですよ!私の彼氏の前でいい度胸じゃないですか!」
「円香静かに」
隣で猫のように威嚇をする円香をなだめる。
頭を撫でるだけでゴロゴロと喉を鳴らす。
マジモンの猫なんじゃないか?
ラノベとかだったら、実は昔助けた猫でしたー!とかだよね?
まぁ昔に猫を助けた記憶はないんだけどさ。
「結花の部屋は隣ね?ちなみに今から俺たちカップルは隣で中学生にはまだ早いことをやりまくるから!さ!帰った帰った!」
「は、はい……?」
俺は勢いよく扉を閉めた。
「ふぅ、んじゃ壁に耳あててって、なんて顔してんの?」
「勇人くん嘘はよくないですよ?今中学生にはまだ早いことをやりまくるって言ったじゃないですか!」
「数分前のあなたに伝えてやりたいよ」
それにしてもよくこんなに唇突き出せるな……。
普通だと、崩れてしまう美貌もさほど崩れてはいない。
超越しすぎると何してもかわいくなるんだな。
「……でも勇人くん。」
唇を元に戻し、話をそらす。
「ん?」
先程の話を引っ張りたくはないのでそらされた話に飛びつく。
真面目な表情に戻った円香は口を開く。

「あの人どう思います?」
「そうだなぁ……せーので言ってみる?」
俺だけ言って円香と意見が違かったらショックだし。
「いいですよ?じゃあ早速行きますよ?せーのっ!」

「「なし!」」
「おぉ!相思相愛!」
「合ってなくても相思相愛だけどね」
これよくよく考えると、せーので言っても違かったらショックなのは変わらないな。
「まぁ当たり前ですね」
「そうね」
円香は数刻首を傾げ、
「結花さんが心配です。彼が帰ったら早速家族会議といきましょう」
「そっか。じゃあ円香も帰らないとね」
「いじわるしないでくださいよぉー!」
頬を膨らませる円香。
声のボリュームに気をつけてもらいたいところだ。

嘘だといえどさっき火のついてない爆弾を彼に渡したんだから。
声が聞こえて、勘違いした彼が導火線に火をつけかねん。
「でも、あの好きは、憧れ的なものかもしれないし、まだ聞き耳立てておこう。」
「そうですね」
俺たちは壁に張り付いて隣の部屋の音を探る。



…………今思ったんだけど、これ結構滑稽じゃない?








何度言えばわかるんですかみなさん。
井戸は概念的な存在を目指しているので性別とかないんですよ。
画面の向こうのあなたが、井戸を女だと思えば女ですし、男の子だと思えば男の子です。

ちなみに一つだけ言えることは18歳ってことは嘘でっせ♪

コメント

  • yuuking

    一位おめでとうございます!連載当初から見てましたが、絶対に伸びると思って見てた作品です笑
    いつみても面白い!

    3
  • ミラル ムカデ

    うるせぇ
    作品は面白いのに……トホホ

    1
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