非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の楽しいぬーぶと俺の心配

八十七話





【花咲莉子】





「なんでこんなやり方しかできないんだろ……」
お金を渡して、はいごめんなさい、なんて。
今のあたしができる精一杯の謝罪ではあったけどあんなの怒らせて当然よね……。

人を傷つけそこから得られる甘い蜜を吸って生きてきたあたしには今の状況の方がお似合いかもね。



神様。あたしはどんな罰でも受ける覚悟はできています。
人の幸せを壊してきたあたしに罰が下るのは当然のことです。

…………でも……でも……。

どうかあたしに、プライドとか恥とかを掻き捨てて変われるチャンスをください。
もう一度だけ、もう一度だけでいいんです。
チャンスをください。



あたしは空へ祈るようにして眠りについた。






【新転勇人】






楽しみだったゲーム。
円香に誘われて夜に三人で集まって始めたエンドコンテンツ攻略。

俺はひとつも集中できてなかった。

どうしても花咲の顔がちらつくのだ。
自分で言うのもなんだが、俺はあの女に酷いことをされトラウマを植え付けられた。
なのにあんな花咲をみたら同情してしまったのだ。
性格の変わりようからして相当やられてる気がするし、化粧バッチリ☆って感じでもなかった。

「なんだかなぁ……」

『どうかしました?』
『勇っち集中』
「あ、ごめんなさい」
つい通話していたことを忘れ思ったことを口に出してしまった。
んーー、ひどい仕打ちをされた女をこんなに心配するなんて…………あれ?もしかして俺ってば聖人?
心は広く海のようで、優しさは海より深いあの聖人だったりする?
「あ」
操作ミスった。
『勇っちなにしてんの』
『勇人くんぬーぶです!ぬーぶぬーぶ!』
円香?
いつそんな煽りを覚えたの?
勇人くん怒らないから言ってみなさい?
『円香、勇っちはヌーブじゃなくて、ドヌーブだよ。』
『どぬーぶどぬーぶ!!』
円香!
そんな言葉遣いしてはいけません!!
けど…………、
「ごめんなさいッ!」
これ以上円香に煽られたら心が朽ちてしまう!
『もー、しっかりしてよ?』
『そうですよ!じゃないとまたぬーぶって言いますからね!あれ?ぬーぶであってましたっけ先輩?』

先輩かよ。
円香がハマっちゃう言葉教えたの。
絶対意味とか教えてないでしょ。
俺の彼女に「勇っちが死んだらヌーブって言ってね」って刷り込んだでしょ。
『あってるよ、勇っちはぬーぶ』
『ぬーぶぬーぶ!!』
円香が笑いながら俺を煽ってくる。
そんなこと外で言っちゃいけませんからね?ましてや新天円香たる女性が!!
『……あ、PVP依頼来た』
「またですか、今月何回目ですか?」
『今月ってか今週18回目かな』
PVP依頼とは、読んで字のごとく、プレイヤーVSプレイヤーの略で、先輩はサーバーランク一位ということもあり度々我こそはという猛者から依頼がくるのだ。
「負けは?」
『ゼロだよ当たり前じゃん』
先輩は伊達にサーバー一位を張ってるわけではないのだ。
ヒーラーなのに火力職に勝ってしまう。
恐ろしい。
ちなみにTw〇tterや、ちなみにワールドチャットでは「銀杏倒してくるわ」ではなく「闇医者倒してくるわ」と、二つ名的な異名で呼ばれている。
ちなみに俺は【闇医者の助手】と呼ばれている。
俺も異名欲しい!!

『んじゃ行ってくるわ。また明日やろ』
『そうですね、私も、ふぁぁぁ……眠くなってきましたから落ちますね。』
「おっけー、おやすみ」
『はーい、おやすみなさぁい』
グループ通話が終了し騒がしかった部屋が途端に静かになる。

もしかして俺を元気づけようとしてヌーブヌーブ言ってたのかな?

俺の彼女が円香で良かった。





【新天円香】





「勇人くんはぬーぶっ♪勇人くんはぬーぶっ♪」
私は布団にくるまりながらさっきの楽しい時を思い出しながら眠りにつきました。










やっぱりこうするね。
□は本編で使いそうだし。うん。

まって!てことは初期の頃のあとがき全部消えてる……?

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