非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私のパンツと俺のパンツ

六十二話






【新転勇人】








「――ぃの匂いだぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「うおっなんですかぃ!?」
目が覚めた瞬間聞こえた結花の声に反射的に身体を起こす。
「・・・・・・・・・」


ん?

なんで立ち止まって、見られちゃいけないところを見られた、みたいな顔してるの?
ほらダイブ。ダイブでしょ?
いつもならダイブしてきて俺の胸に顔を埋めるじゃない。

「…………部屋間違えた」

いやいや無理ありすぎない!!?
何事も無かったように出てこうとしてるけど、部屋を間違えたってのが本当の場合、結花の部屋には俺の匂いがするものがあるってことになるからな?










「パンツかァ!!」
「えっなに!?」
「俺のいない間にパンツ盗んだのか!?」
「ハッ!!……………な、なんのこと……?あ、兄貴変なものでも食べたんじゃないの?」
今「ハッ!!」ってなってたよね!?てか言ってたよね!?
それにその顔は隠してる顔じゃないか?

まったく。
言い訳が仇になったな妹よ。
俺がいない間に盗るなんて犯罪だぞ犯罪!
それにいくら兄っ子だからってそれは――
「じゃあ兄貴の部屋にあるこれは何かなぁ?」

俺は結花から少し外していた目線を元に戻す。
「んぁ?何を――」

「この“パンツ”♪しかも二枚あるよ?」

「んーーーー、ちょっと目と耳が以上に退化してて何を持ってて何を言ってるのか分からないな」
分からない。
その手に持ってるモノがなにかワカラナイ。
「じゃあ真奈ちゃんにも聞こえるような大きな声で言うね!!」
「あーー!!わかったわかった!!」
女物のパンツが俺の部屋にある理由は分からないけど。
「ふーん……何がわかったの?」
クッ……急に勝気な表情になりやがって……。
てか誰のそのパンツは!!
……片方は見覚えないけど、もう片方はどこかで見たことがあるんだよな。
「兄貴が悪うございました。」
「はいよろしい♪」
すげぇ情けない兄貴な気がするけどこれでいいのか結花さんや。
「…………ところでさ、」
「はい……」
結花は俺の“見覚えのある方”に目線を向け、
「これ誰の?」
「…………ん?」
いやいや、それは結花のだから見覚えがあるんじゃ――
「こっちはゆいのだけど、このパンツはゆいのじゃないよ?」
そんなわけ…………あっ……そういえば昨日、合宿から帰ってきて荷物整理してる時になぜか俺のバッグから出てきたのって――
「その顔は誰のか思い出した顔だ」
「いや!思い出してはない!けど昨日帰ってきたときの荷物整理のときに――。」
俺はその謎のパンツの経緯を結花へ話した。
「……まぁ言わんとすることは分かったよ。」
「そっか、ならよかっ―」
「これは新天円香のだね」



結花さん?
「いや、なんで円香のが俺のバッグに入ってるのさ」
「それはゆいが聞きたいんだけど…………とりあえず新天さん呼ぼっか」
「ごめんちょっと兄貴は混乱してます」
「自分に攻撃いれないように気をつけて」
「ちがーうッ!!」
焦る俺を尻目に結花は円香へ電話をかけるのだった。
「あ、忘れてるようだから言うけど、真奈ちゃん昨日帰ったよ」
「え゛」












「ごめんなさい私……勇人くんのパンツを持ち帰っていました!!」
いや第一声それ?
円香はそれでいいの?
「と、とりあえず家に入って?玄関先でする話じゃないから」
「はい……」
突然呼んだにも関わらずバッチリオシャレなのは謝りに来ようとしてたからかな?






【新天円香】





お茶とお茶菓子を出してリビングにて向き合って話を始める。
「魔が差したわけじゃないんです!自分でも入れたつもりなくて……」
「じゃあ新天さんは自宅で兄貴のパンツを発見した時それをどうしましたか?」
「もちろんジップロックへ!!」
「正解!!!」
…………この会話が話し合いの第一章でいいのか……?
「……でも、やっぱり返さないとダメだなって思って、今日勇人くんの家に行こうと思ってたら結花さんから電話があったのです」
よかった。
まだ理性が生きてた。
結花みたいに寝てる俺にダイブしてきたりしないんだろうな。
「そうですか…………実は私からも渡したいモノがあるんです」
「渡したいもの?勇人くんのパンツですか?」
円香シャラップ。
「パンツはパンツなんですけど、これは兄貴のじゃなくて新天さん、あなたのです」
円香がそのパンツを受け取る。

パンツと俺を交互に見るようにして――
「あ、ありがとうございます…………では私はこれで……」
ちょっと待って円香、俺のパンツはどこ?
「円香、俺のパンツは……?」
「あっ…………はい……これ……」(チラッチラッ)
「そんな顔とパンツを交互に見てもあげません。」
「うぅ……仕方ないですね」
なんで俺が聞き分けの悪い子みたいになってるの?おかしくない?
「今日はこれが目的だったのでもう帰りますね」
「あ、送っていきますよ」
「大丈夫です、近くに親がいますので」
そっか。

パンツも返してもらったしパンツを返したし……。
「じゃあまた!」
「はい!お祭りの時に!!」

新天さんはまるで嵐のように去っていった。
嵐と言っても五人組の方ではない。

ん?お祭り??

「結花、お祭りっていつだっけ」
「明日だけど」



忘れてた。

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コメント

  • クロエル

    垣間見えるパンツ愛。w
    あ、毎度お疲れ様です。

    3
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