俺が転生した世界はどうやら男女比がおかしいらしい

めんたま

その後

「...落ち着いた?」

その後数分に渡って無様に泣いた俺は今恐らく顔を赤くさせて、美沙と向かい合っている。

「...うん、ごめんね?迷惑かけちゃって」

「いやいや、珍しい仁を見れたからね。むしろお礼を言いたいよ」

「ぐ、ぐぬっ...」

ニヤニヤしおってからに!
この歳になって同級生の前で泣くのは恥ずかしいな!


まあ今はとりあえずその話は置いておこう。
今俺がどういう状態なのか整理しないと。

まず今俺がいる場所は、
うーん...見覚えがあるなあ。
病院だな。俺はベッドに寝ているみたいだ。
こっちの世界に来てからすごくお世話になってますね、ごめんなさい。

えーっと...記憶が曖昧だな。
なぜ病院にいるのか思い出せない。
むむ...ボール...女の子...トラック。
この3つの単語が朧げながら頭に浮かぶ。

「あのさ、美沙」

未だに少し掠れている声で美沙に声を掛ける。

「うん?」

「なんで僕は病院にいるのかな?ちょっとよく思い出せなくて...」

「っ!?まさか、また記憶喪失...!?」

「あっ、違う違う!そういうのじゃなくて!ちょっと思い出せないだけだから」

「そういうことか...」

胸をなで下ろす仕草をする美沙。

その後、俺は美沙に現状の説明をしてもらった。
俺が美沙を庇ってトラックに轢かれたこと、病院に運ばれて4日間意識がなかったことなどを教えてもらった。

4日か....前の1週間には及ばないけど長い間意識なかったんだな。
未だ体の節々は痛むものの、別状はなさそうだ。さすが高スペックボディ。

俺が身体の神秘に感心していると、

「...ねえ仁。あたしのせいで仁が傷付いた。ごめん、本当にごめん....。4日も目が覚まさなくてあたしもうダメかもしれないと思った。ここの所眠れなかったし、もしそうなってたら悲壮感と罪悪感でどうにかなっていたと思う。謝って済むことじゃない....けど、謝らせて欲しい。ごめん」

美沙が突然頭を深く下げて謝罪を言ってきた。その声はいつもの綺麗なものではなく震え、掠れている。
さっきまでそんな素振りなかったのになぜ突然?と思ったが、よくよく考えてみれば泣く俺を慰めることを優先して殊更普段通りの態度にしてくれていたのだろうと思う。この子は必死に罪悪感を押し殺していたのだ。
....強いな、この子は。

「ううん、いいよそんな大げさにしなくても。可愛い女の子にケガをさせるわけにはいかなかったからね」

「....そっか。ふふっ、相変わらずだねー。.....優しいな仁は」

「そんなことないよ。そういえば女の子は無事だった?」

「うん、大丈夫だったよ」

「そっか、よかった」

美沙と話をしていると、先ほど呼んだお医者さんが部屋に入ってきた。

お医者さんはまず俺の体を気遣ってくれた。
そしてその後に、

「前原さん、本当にケガが多いですよね...。男性なのですからどうかご無理をなさらず」

「す、すみません」

注意されてしまった。
まあ男性は数少ないからな。仕方ない。

「ご家族の方にはご連絡しておきましたので、もう間もなく到着されるとーー」

ガララ!
「ジンちゃんっ!!!」

お医者さんの言葉を待たずして、俺の母さんが勢いよく入室してきた。

「お兄ちゃん!」
「仁!!」

続いて我が妹と姉も。

「ジンちゃん体大丈夫?痛くない?無事だよね?ね?」

俺の体をペタペタと触りながら過保護な心配をしてくれる母さん。
母さんを見てるとなんとも懐かしい気分になってきてしまう。4日間っていうのは結構思った以上に長いものかのかもな。

「大丈夫だよ母さん。心配かけてごめんね?」

「.....」

謝ったのだが、母さんは俯き反応がない。

「母さん?」

「....本当に」

「えっ?」

「....本当に、心配したんだよジンちゃん....!」

俯いていた顔を上げた母さんは、泣きそうな、辛そうな顔をしていた。

「....事情は全部美沙ちゃんから聞いたよ!庇ってくれたって!ジンちゃんは優しくなったから自分の危険も顧みないで、そんな事しちゃうのは分かる!優しいジンちゃんは私大好きだよ!....でもっ!!
それでジンちゃんがいなくなっちゃったら...私もう生きていけないよ....」

母さんは叫ぶ。
それはとても悲痛な叫びで、俺の心がズキンと痛むのがわかった。

「ジンちゃん、優しくなってから無理する事が多すぎるよ....。
もう...お願いだから無茶な事はしないで....」

母さんは涙を流した。

これは、俺が流させた涙だ。
ズキズキ心が痛む。

「そうだよお兄ちゃん!体は大事にしなきゃなんだからね!」

ぷりぷりと頬を膨らませる心愛。

「そうだね。人を救う事も大切なことだけど、まずは自分を大切にしないと」

腕を組みながらそういう姉さん。

3人からそう言われてしまえば弁明もできまい。

「....ごめんなさい」

心配させてしまったことは事実だからな、謝ろう。

「あ、あの!」

すると、声を上げたのは美沙だ。

「今回の事は、不用意に飛び出してしまったあたしの責任なんです...。仁はあたしを助けてくれただけで....だから、責任はあたしにあります。仁を危険な目に合わせて申し訳ありませんでした」

頭を下げる美沙。

違う。俺は自分で選択して行動したんだ。美沙に責任はない。

...そう言うことは簡単だけれど、言ってしまえば責任の所在の取り合いで収拾がつかなくなってしまうし、何より美沙の誠意に水を差してしまう。ここは何も言わないのがいいだろう。

美沙訴えを聞いたうちの家族はしばし黙り込む。

そして、口を開いたのは母さんだ。

「...そうだね。美沙ちゃんにも責任があるよ。でも、状況を聞いた限りじゃ、誰にでもできる行動じゃないよ。美沙ちゃんは勇敢で心優しい女の子だと思う。いい子いい子」

そう言って未だ涙の跡が残る顔で母さんは美沙の頭を撫でる。
ううむ、母性全開だな母さんよ。

「あ、ありがとうございます....」

美沙は顔を仄かに赤く染めて恥ずかしそうにしている。その年になって頭なでなでは恥ずかしいよね、わかるぞ。

....ふぅ。
母さんが良識ある人でよかった。
とりあえず、美沙も女の子も無事で、俺も何とか死なずに済んでよかった。



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