俺が転生した世界はどうやら男女比がおかしいらしい

めんたま

姉さんの気になる人

それは、ある日のことだった。
いつものように家族4人で夜ご飯を食べていると急に姉さんがこう言った。


「私、気になる人ができたかもしれない」


えっ?

俺は箸を落とした。

姉さんに?気になる人?それは好きな人ってこと?な、なんで?だって、俺は優しい姉さんのことが大好きで、姉さんも俺のことは可愛がってくれてて。えっ?


シスコンでもなんとでも言え。こっちの世界に来てから、俺は家族と過ごす時間が大好きだった。俺に甘々な母さんも、俺に優しい姉さんも、俺に懐いてくれる心愛のことも、みんなのことが大好きだった。最低なのは分かってる。それでも、俺には一種の独占欲のようなものがあった。正直、姉さんに気になる人ができたと言われて、ショックだった。


「....ごちそうさま」

俺は前世でも今世でもご飯を残したことはほとんどない。もったいないからな。
それでもそれ以上ご飯を食べる気分にはなれず、俺はご飯を残した。

俺は席を立ち、自分の部屋に向かう。

「ジ、ジンちゃん?」

「お兄ちゃん?」

母さんと心愛の声が聞こえる。あと姉さんも何か言ってるみたいだが、今は声を聞きたくない。

俺は返事をせずにリビングを出て、自分の部屋に入った瞬間に、ボフッとベッドに突っ伏す。

あー....俺最低だ。姉さんに気になる人ができた。祝うべきことじゃん。分かってる、こんなのはただの我が儘だ。子供が嫌なことに喚いてるのと一緒だ。それでも、自分の気持ちは抑えられない。

気になる人、か....。どんな人なのだろうか。かっこいいのか?はたまた可愛い系?それか、この世界では珍しい性格の良い男なのかもしれない。

.....はぁ。


しばらく悶えていると、
コンコンッ
とノックが聞こえた。

「仁?いる?」

姉さんだ。どうやら心配になってきてくれたらしい。やっぱり姉さんは優しい。
あまり喋りたくはないが、無視するわけにもいかないだろう。

「...いるよ。今開ける」

ガチャ...と静かにドアを開けると、困ったような顔の姉さんが立っていた。

「今時間ある?」

姉さんが聞いてきた。

「....あるけど」

「じゃあちょっと話そっか」

「....うん」

姉さんを部屋に招き入れる。そういえば姉さんを部屋に入れたのは初めてかもしれない。姉さんは部屋を見回している。

「ふーん。結構片付いてるんだね」

「うん。それより話があるんでしょ?なに?」

馬鹿。やめろ。そんなぶっきらぼうに言うな。ダメだと分かってても姉さんに対して冷たい態度をとってしまう。

「...ごめんね?」

なんで謝る?やめてくれ。余計に惨めに感じる。

「多分、私が気になる人ができたって言ったことが、仁が不機嫌になってる原因なんでしょ?」

その話題はそれ以上聞きたくない。やめろ。

「...違うよ」

「もしかして嫉妬してるの〜?このこの」

姉さんはそう言ってからかってくる。

「違うって言ってるじゃん!」

内心を言い当てられて、つい声を荒げてしまった。

「....ごめん」

姉さんは悲しそうな顔をする。
違う、違うんだよ。俺は姉さんにそんな顔をさせたかったわけじゃない。


....そっか。本当に姉さんのことを思うなら、俺は今回のことを応援するべきなんだ。いいじゃん、気になる人ができたって。姉さんが幸せならそれで。
俺が不機嫌になって、姉さんに八つ当たりするのは俺の自己中心的な最低の行為だ。姉さんはなにも悪くないんだから。


よし、なんとか、なんとか自分を納得させることができた。

「....聞かせて」

「えっ?」

「その、気になる人のこと、聞かせてよ」

俺はなんとかそう搾り出した。

「う、うんいいよ」

姉さんもまだ気まずげだが、その人のことを教えてくれるようだ。



姉さんにその人のことを聞いた。

何でも姉さんは、最近よく男に喋りかけるらしい。というのも、俺とよく喋るようになってから、男と喋ることが自然とできるようになったらしいのだ。それで積極的になれているらしい。しかし、あまりにも男子に喋りかけるものだから、他の女子から反感を買い、ある時数人の女子に囲まれ乱暴されそうになったらしい。そしてその時に助けてくれたのが、例の気になる人だったということだった。その時から気になってるらしい。

....なんだ、結構いい人そうじゃないか。

「へぇ。その人の名前はなんて言うの?」

「うん?その人はね、中川眞二なかがわしんじくんっていうんだよ」

中川眞二、か。中川眞二ねぇ....

「どんな人なの?」

「うーん、見た目は筋肉が結構あるマッチョかな。性格はどうだろ、まだよく分かんないかな」

.....

「その人、もしかして大学2年生?」

「えっ?そうだけど、なんで仁が知ってるの?」

「...いや、なんとなくだよ」

あー多分間違いない。
その人は、中川楓先輩のお兄ちゃんだな。

以前そんなことを話した記憶がある。中川先輩はあまりお兄さんのことを話したがらなかったが。名前も合ってるし、大学も確か姉さんと一緒だった。
妙な巡り合わせもあるもんだ。
よし、姉さんが気になるに相応しい人物かどうか、中川先輩に聞いてみるか。それで本当にいい人なら俺は姉さんを応援する!

姉さんが部屋を出て行った後、俺はすぐにスマホを開いた。
さっそく、この前中川先輩とラインを交換したのを活用する。

ーーーーーーーーーーー

仁: 今ちょっといいですか?

楓: どうしました?

仁: 先輩のお兄さんのことについて少しお聞きしたくて

楓: ....あの人のなにが聞きたいんですか?

仁: いえ、どんな人なのかと思いまして

楓: そうですね。一言で表すなら、


クズ


でしょうか

ーーーーーーーーーーー

.....なんだと?
クズ?姉さんの気になっている人がクズ?

詳しく聞いてみようか。

ーーーーーーーーーーーー

仁: 理由を聞いても?

楓: あの人はよく女を家に連れ込んでかなり乱暴に扱っているみたいです。大方、甘い言葉でも吐いて巧妙にたらし込んでいるんでしょう。女の人はいつもボロボロになって帰っていきます。あとこれは噂ですが、カツアゲや恐喝なども行っていると聞いたことがあります。いくら男でも許されることではありません。私はあの人が大嫌いです

仁: ....そうですか。ありがとうございました

ーーーーーーーーーーーーーー


....決まりだ。
そんな奴に俺の姉さんは渡さない。

まだ見ぬ中川眞二に怒りを抱きながら、俺は血が滲むほど拳を握りしめた。

「俺が転生した世界はどうやら男女比がおかしいらしい」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く