俺が転生した世界はどうやら男女比がおかしいらしい

めんたま

私は男が苦手だった

私の名前は右京雫うきょうしずく。春蘭高校の弓道部で部長をしている。うちの弓道部はそこそこの強豪で、練習は厳しいが、皆んな精を出して頑張っている。弱っちい男子ではそうはいかないだろうがな。
今の発言からも分かる通り、私は男という生き物が苦手だ。なぜ奴らは数が少ないというだけで偉そうにできるのだろうか。自分が偉いと勘違いしているのか。ただ話し掛けるだけで、やれ気持ち悪いだの近付くなだの。女子がみんながみんな下心で男子に話し掛けてるとでも思っているのか奴らは。他にも細々とした要素があるが、以上が、私が男子が苦手な主な理由だ。

先日、後輩の片岡すみれがこの世の物とは思えないほどの整った容姿をした男子に喋りかけられたと言っていた。しかも礼儀正しかったとも。
ふん、あり得ん。そんな男がいるわけがない。大方、妄想の類かはたまたただのハッタリか。しかし、片岡はハッタリなどは言わないやつだ。もしかしたら疲れが溜まっていたのかもな。



私は今日も練習に打ち込む。

「さあ!次は3人で1チームを組んで!的中数の合計はノートにきっちり記入しておくこと!」

「「はい!!」」

私は部員たちにそう指示を出す。うちの弓道部の部員は20人。3人一組だと2人余りがでてしまうため、自分で言うのもアレだが、実力が高めの部長の私と副部長の吉岡は指導に回る。顧問の福岡先生は弓道の未経験者なので指導はできないため、先輩が後輩に教える形をとっている。そのため、顧問の福岡先生が部活に来ることはあまりない。しかし、今日は何故か来たようだ。弓道場の入り口からこちらに向かってくる福岡先生が目に入った。何か用事だろうか。

「吉岡、ちょっと見といてくれ」

そう言い残し、私は福岡先生の元へ向かう。

「福岡先生、なにかご用事ですか?」

私は尋ねた。

「ええ。練習中申し訳ないけど、少し私についてきてくれるかしら?用事の内容は歩きながら話すわ」

「わかりました」

吉岡に後の練習メニューを任せ、私は先生と弓道場を出た。

「それで、先生。用事とは一体?」

私は福岡先生の隣に並び歩きながら改めて尋ねた。

「実はね、ある男の子が弓道部に入部したいと言っているのよ」

「!男の子....ですか」

新入部員が来るのは嬉しいがよりにもよって男か。男が部活に入ってくると正直言って色々面倒だ。部員の士気向上などの利点もあるが.....、生憎私は男が苦手だ。私にとってはなんの利点もない。

「それで、今はその男の子のところへ向かっているというわけですか」

私は軽く嘆息しながら先生に言う。

「あなたが男を苦手としているのは分かっているわ。でも今回の男の子は他の男とは全然違うのよ。優しく、礼儀正しい、とてもいい子よ」

....またか。先生も片岡と似たようなことを言う。まさか、本当に存在するのか。片岡のいう男と今回入部希望の男は同一人物なのか。
そんなことをぐるぐる考えているとどうやら目的地に着いたようだ。
1年1組か。

「さ、入るわよ」

ガラガラ

とドアを開けて福岡先生が教室に入る。私もそれに続く。私の目に入ってきた人物は....



綺麗.....


私が自然と頭に浮かべたのはそんな言葉だった。

開いた窓から吹き込む風で優雅になびく先だけ銀色の黒髪、こちらを見つめる決意のこもった眼差し、そして何よりも雰囲気が異様だ。まるでその者だけ次元が違う、世界の理から外れているような、そんな不思議な感覚を覚える。

私は男が苦手なことも忘れてしばし見入ってしまっていた。

「...きょう、右京」

「はっ?す、すみません。少し驚いてしまって」

福岡先生に呼ばれていたことに気づき、慌てて返事をする。

「まあ、無理もないわね。私も最初は驚いたものよ」

やはりあの美しさは人類共通なのか。恐ろしい。
私が戦慄していると、男の子が立ち上がった。

「お呼び立てして申し訳ありません。初めまして、1年の前原仁と申します。弓道部に入部したいと考えています。よろしくお願いします」

男の子、前原はそうして一礼する。

なんだ、この男は。礼儀正しい。私が今まで見てきた礼儀正しい男は、生徒会長の桐生くらいのものだ。まだこんな男がいるとは。

「あ、ああ。かまわないさ。私は右京雫。部長をしている」

私はなんとかそう返す。

「じゃあ話を始めようかしら」

福岡先生がそう言い、席に着く。私もそれに習い先生の隣に腰掛ける。三者面談のように机を3つほどくっつけ、私と福岡先生に向かい合う形で前原が座っている。

「じゃあまず右京さん、前原くんの入部についてどう考えているのかしら?」

福岡先生がそう聞いてきた。私は先ほど動転した気持ちをなんとか落ち着かせ、チラッと前原を見つつ答える。

「私は...正直言ってあまり歓迎ができそうにありません。やはり男の入部は部内の混乱を招きますので」

私がそう言うと、前原は悲しそうな泣きそうな顔になった。くっ!罪悪感がすごい!

「だそうよ、前原くんは何か言いたいことあるかしら」

「僕は入部したいです。部員のみんなには僕から頭を下げます。雑用を頼んでくれれば喜んで引き受けましょう。みんなにはなるべく迷惑はかけないつもりです。だからどうか!入部を許してください!」

前原は勢いよく頭を下げる。

「...そもそもなぜ弓道部に入部したいんだ。生半可な覚悟では、男ではうちの練習にはついてこれないぞ。他の部員に迷惑をかけてまで、入部したい。お前にはその覚悟があるというんだな?」

心を鬼にして私は問う。

前原は一瞬何か考えるような間を置き、

「....弓道部に入部したい具体的な理由は言えません」

「なんだと?そんな中途半端な....」

「でもっ!!」

私の言葉を途中で遮り前原が叫ぶ。

「俺には覚悟があります!」

なぜか一人称が変わった。さらに今までどこか作られていると感じていた表情も人間味を帯びている。

「俺は!もう後悔したくありません!俺は!弓道がしたいです!部長さんが男の入部による混乱を危惧しているのは分かっています。それでも!俺は!みんなとまた一緒に弓道を頑張りたい!俺は変わりたい!どうか、どうか入部を許して下さい....」

前原は、最後は声を震わせ頭を深々と下げながら想いを告げた。しかしまた頑張りたいとは、もしかして経験者だったのか?まあ何にせよ答えは決まっている。

「わかった。許可する。前原の覚悟受け取った。これから練習頑張れよ。今から弓道場に行こう。みんなに紹介する」

私がそう言うと、前原はパァッと顔を明るくさせた。やはり、この男は他の者とは違うようだ。か、可愛いな。うん。

「ありがとうございます!」

こうして前原仁が弓道部に入部した。

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コメント

  • 瑞樹の相棒ヤゾラっち

    なぜ30:1なのにクラスに三人も男子がいるんだろう 単純にクラス百人くらいいんのか?

    5
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