銃剣使いとアストラガルス ~女の子たちに囲まれる、最強と呼ばれた冒険者の物語~
第00話 プロローグ
「――銃声よ、火の王よ、御身の敵を、討たんと欲せ」
宵闇の風に揺られて、その二つの影を包む世界には魔法を詠う声だけが響いた。
木の葉がざわめく音も、風が耳元を駆け抜ける音も、踏みしめた足が草木を割る音も、そして相対する巨大な影から生み出される地を震わせるような低い唸り声すらも。
今この瞬間、彼の耳には自分の紡ぎ出す詠唱以外聞こえなかったのだ。
「――この弾丸は、風を切り、天を穿ち、最果てのその先へと、生まれ出づる」
彼が構えたのは剣とも銃とも見て取れる、闇の中を不気味に輝く金属の塊。
剣の鍔に埋め込まれた銃の構造、その切っ先と共にある銃身の先。
それを翼を広げ立つ影へと向ければ、まるで応えるかのように重低音の咆哮が森に響き渡る。
今この時、最期の戦いが。一発の銃声によって再開される。
「――我が願いを、灼き尽くせ、『緋焔の弾痕』ッ!!」
木々を一瞬で灰へと還すような一筋の紅い線が、鈍く輝く黒い鱗へと着弾する。
その衝撃によって火花を上げる鱗によって辺りは照らされ、周りの木々よりも数段高い、漆黒の龍が映し出された。
短い四本足と、広げれば大きな身体の五倍以上の長さにもなると言われる翼を持ち、鋭く尖った爪はどれだけ屈強な金属をも切り裂くと言われるモンスターであるドラグ。
しかしこの漆黒の姿は、今まで発見されることの無かった突然変異種と呼ばれるものであった。
『グァォォォォォォォォォ!!!!』
雲から顔を出した月光を引き金に、見合っていた彼らは動き出す。
焔の弾丸をものともしないドラグは、翼をはためかせるだけで周囲の木々を軽々と薙ぎ倒す。
しかし木はおろか岩すらも吹き飛ばすようなその風圧を気にもせず、彼は武器を担いで土を蹴り、ドラグへと肉薄した。
「……くそッ!」
それから何戟にも及ぶ戦闘の末、薙ぎ倒された森の真ん中にまだ健在する二つの影。
しかし月光に照らされた今だからこそ、彼らが傷つき、疲弊していることが鮮明に理解できる。
彼の身を守る装備は血に濡れ、抉れ、凹んでおり、対するドラグも幾つもの鱗が剥がれ、美しかったであろう翼は血に濡れ、口から溢れる火の粉は痛みと怒りを表しているようだった。
「いい加減に、しやがれ!」
彼の大きく振りかぶった一撃が鱗と鱗の間に入り込み、ドラグから真っ赤な鮮血が吹き出す。
その生暖かい血は彼の頬へと飛び散るが、物ともせず深々と剣を突き刺していく。
痛みに応えるように轟いた悲鳴のような咆哮が、その攻撃の悲痛さを物語る。
「これで終わりだ。震えろ、『雪滅の連弾』ゥ!!」
突き刺さった剣先から打ち出された十発の弾丸。
装填された全ての弾を打ち出したその剣はまるでこの戦いの終わりを示すように、魔法の残り香である白い煙を吹き上げた。
同時に鼓膜を破らんとする絶叫が、地面を抉り上げ周囲の木々を貫いていく。
ドラグの直ぐ傍にいた彼も、思わず剣から手を離して遠くへと吹き飛ばされていく。
「まだ生きてるのかッ!?」
直ぐ様起き上がった彼の視界には、全ての力を使い果たして横たわるドラグ。
先程まで見せていた荘厳なる振る舞いは消え、地面へと流れる大量の血液と共に事切れているその姿は、限界を超えてまで戦闘へと従事していた彼の緊張を打ち切るには充分だった。
「ざまぁ、みろ……。俺の、勝ちだ」
眼前に臥す嘗ての強敵に続くように、彼は地面へと倒れる。
こちらへと走ってくる彼女の姿を朧気に見つめたまま。
――彼の意識は、何処か懐かしい闇の底へと落ちていった。
宵闇の風に揺られて、その二つの影を包む世界には魔法を詠う声だけが響いた。
木の葉がざわめく音も、風が耳元を駆け抜ける音も、踏みしめた足が草木を割る音も、そして相対する巨大な影から生み出される地を震わせるような低い唸り声すらも。
今この瞬間、彼の耳には自分の紡ぎ出す詠唱以外聞こえなかったのだ。
「――この弾丸は、風を切り、天を穿ち、最果てのその先へと、生まれ出づる」
彼が構えたのは剣とも銃とも見て取れる、闇の中を不気味に輝く金属の塊。
剣の鍔に埋め込まれた銃の構造、その切っ先と共にある銃身の先。
それを翼を広げ立つ影へと向ければ、まるで応えるかのように重低音の咆哮が森に響き渡る。
今この時、最期の戦いが。一発の銃声によって再開される。
「――我が願いを、灼き尽くせ、『緋焔の弾痕』ッ!!」
木々を一瞬で灰へと還すような一筋の紅い線が、鈍く輝く黒い鱗へと着弾する。
その衝撃によって火花を上げる鱗によって辺りは照らされ、周りの木々よりも数段高い、漆黒の龍が映し出された。
短い四本足と、広げれば大きな身体の五倍以上の長さにもなると言われる翼を持ち、鋭く尖った爪はどれだけ屈強な金属をも切り裂くと言われるモンスターであるドラグ。
しかしこの漆黒の姿は、今まで発見されることの無かった突然変異種と呼ばれるものであった。
『グァォォォォォォォォォ!!!!』
雲から顔を出した月光を引き金に、見合っていた彼らは動き出す。
焔の弾丸をものともしないドラグは、翼をはためかせるだけで周囲の木々を軽々と薙ぎ倒す。
しかし木はおろか岩すらも吹き飛ばすようなその風圧を気にもせず、彼は武器を担いで土を蹴り、ドラグへと肉薄した。
「……くそッ!」
それから何戟にも及ぶ戦闘の末、薙ぎ倒された森の真ん中にまだ健在する二つの影。
しかし月光に照らされた今だからこそ、彼らが傷つき、疲弊していることが鮮明に理解できる。
彼の身を守る装備は血に濡れ、抉れ、凹んでおり、対するドラグも幾つもの鱗が剥がれ、美しかったであろう翼は血に濡れ、口から溢れる火の粉は痛みと怒りを表しているようだった。
「いい加減に、しやがれ!」
彼の大きく振りかぶった一撃が鱗と鱗の間に入り込み、ドラグから真っ赤な鮮血が吹き出す。
その生暖かい血は彼の頬へと飛び散るが、物ともせず深々と剣を突き刺していく。
痛みに応えるように轟いた悲鳴のような咆哮が、その攻撃の悲痛さを物語る。
「これで終わりだ。震えろ、『雪滅の連弾』ゥ!!」
突き刺さった剣先から打ち出された十発の弾丸。
装填された全ての弾を打ち出したその剣はまるでこの戦いの終わりを示すように、魔法の残り香である白い煙を吹き上げた。
同時に鼓膜を破らんとする絶叫が、地面を抉り上げ周囲の木々を貫いていく。
ドラグの直ぐ傍にいた彼も、思わず剣から手を離して遠くへと吹き飛ばされていく。
「まだ生きてるのかッ!?」
直ぐ様起き上がった彼の視界には、全ての力を使い果たして横たわるドラグ。
先程まで見せていた荘厳なる振る舞いは消え、地面へと流れる大量の血液と共に事切れているその姿は、限界を超えてまで戦闘へと従事していた彼の緊張を打ち切るには充分だった。
「ざまぁ、みろ……。俺の、勝ちだ」
眼前に臥す嘗ての強敵に続くように、彼は地面へと倒れる。
こちらへと走ってくる彼女の姿を朧気に見つめたまま。
――彼の意識は、何処か懐かしい闇の底へと落ちていった。
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