クラス転移キターっと思ったらクラス転生だったし転生を繰り返していたのでステータスがチートだった

名無しシャン

第62話「報告」

 真っ白な世界に少しずつ色がついていき、形を成していく。それは人であったり、魔物の死体であったりとダンジョンの1階層まで階段を上がってきたら見えるであろう風景だった。
 そして、こちらが気付いたのと同じ様に、周りの人もこちらに気づく。
 周りの人達から視線が集まるなか、片腕の男が目の前まで歩み寄ってくる。

「昨日からずっと死体運びしてるのに全く姿を見てないと思ったら、ずっとダンジョンに潜ってたのか」
「どういうことですか?」
「お前が後処理を俺たちに押しt....託してから、もうすぐで1日が経とうしてるんだよ」
「そうなんですか。そんなに経ってないと思ったんだけどな」

 思った以上に時間が経過していたみたいだ。俺としては半日ぐらいの感覚だったんだがな。

「ところで、食料とかを持って行った様には見えなかったし、行けるとこまで行って、一旦帰ってきた感じか?」
「いえ、踏破したので帰ってきました」
「............ん?」
「だから、踏破したので帰ってきました」
「...............は?」
「だから、踏破」
「ちょっと待て、ちょっと待て」
「何ですか?」
「踏破するにしても、1日は速すぎだ。階層が浅かったとかか?」
「100階層までありました」
「.....魔物が弱かったとか」
「龍とか大量の上位種とかがいましたね」
「.........そいつらは?」
「倒しました」
「そうか。まぁ、レビュート家だからな」

 どうやら納得のいく答えがでたみたいだ。レビュート家だから仕方ない、で済むレベルなのかは知らないが。

「ところで、ダンジョンを踏破した時ってどうすればいいんですか?」
「踏破した事がある奴に聞いてくれといいたいが、とりあえずギルドに報告してみたらいいんじゃないか?」
「わかりました。ありがとうございます」

 お礼を言い、ギルドに向かって走り出した。

 道中に何かある訳ではなく、王国のギルドへと到着した。ギルドの扉を開けると前回に来た時よりも、ギルドの職員がかなり慌ただしそうに動きまわっており、冒険者もパーティメンバーを募集する声を飛び交わせている。
 そんな中、ギルドに来た時は来いと言われている扉の方へと向かう。途中で男のギルド職員が近いて来たので、SSのカードを見せると先に扉の方へ行き、扉を開けてくれる。

「よう、来たか。お前が此処に来たってことは、何かがあったって事だろ。ざっくりでええから報告してくれ」
「ハンプについては?」
「国への報告に十分な資料が揃ってるからしなくていい」
「そうですか。では、ダンジョンについてですが、踏破してきました」
「.........そうか。まぁ、レビュートの旦那の息子だしな。で、中はどうだった?」

 10階層毎に区切られている事と、各エリア毎のボス、全100階層である事、各エリアの特徴だけを伝えた。
 ダンジョンマスターの事はどうしようか迷っていると、ギルドマスターのフーラさんが何かを察したのか、国に報告したくないギルドマスター個人への報告があるなら、と俺に言ってきたのでダンジョンマスターについて報告しておいた。
 しかし、フーラさんは

「安心しろ。それを国に報告したとして、お前の家の人間が出てこない限り、このダンジョンは2人目の踏破者はでないからな」

 との事。

 ダンジョンの事についての報告を終えた後、国に報告する書類に間違いがない事を確認し、サインを書くと今日はもう帰っていいとの事。それと、ことがことなため、後日王城に呼ばれるらしい。非常に面倒くさい。

「それにしても、今更ですけど、踏破した証拠とか見せなくてよかったんですか?」

 俺の質問にフーラさんは少し笑いながら答える。

「たしかに今更だな。それについてはだな、本来ならステータスの称号のところを見せてもらうんだがな、お前のところは家が家だろ。ごちゃごちゃと騙す為の小細工をするより、さっさと行って踏破する方が早い」
「そうかもしれないですけど、もしもはあるかもしれないですよね」
「......そんな事して家に帰れるか?」
「......無理ですね」
「だろ」

 バレた時を想像して身震いする。素直にダンジョンを踏破した方がマシだと思う。

「ほかには何かあるか?」
「特にはないですかね」
「そうか。そうだ、新しいダンジョンを踏破しようと、扉の外でパーティの勧誘があるかもだから気をつけろよ」
「わかりました。気をつけます」

 フーラさんに背を向けて扉の方へ歩いて行く。扉を開けると、部屋にいる時は一切聞こえなかった勧誘の声が聞こえてくる。
 フーラさんに言われた通り、勧誘に引っかからない様に気をつけてギルドを出ようと扉の方に向かっていると、横から面倒ごとが声を掛けてくる。



「おい、そこの下民。わしのパーティの荷物持ちになれ」

 イラッときたが、無視して通り過ぎようとすると、行く道を塞ぐ様にお腹のでた無駄に豪華な格好の貴族と、その左右に立ち剣をこちらに向ける騎士が2人、背後に媚びへつらう様について歩く冒険者の様な男が3人が立ちならび、その後ろには首輪を付けられ、かなりボロボロの服を着た12〜3歳ぐらいの少女が見える。
 少女は恐らく奴隷であろう。王国での奴隷がどの様なものなのかはわからないが、ボロい服と汚れ具合から良い待遇は受けてはいないだろう。

 この集団が立ち塞がると同時に、周りで飛び交っていた勧誘の声が小さくなる。

「おい、下民の分際でこの方を無視するとはどういう了見か」

 右に立っていた騎士が問いかけてきて、続く様に左も問いかけてくる。

「まさか、この方を知らない訳ではなかろうな」
「そのまさかです。生憎、この国の民でないもので」
「何、本当に知らないのか? この方はな、モーブ家当主、Aランク冒険者ディスズ・モーブ伯爵様だぞ。さぁ、素通りしようとした事を這いつくばって謝れ」

 ディスイズモブ、これはモブです。
 流石に吹きそうになった。

「ほれ、下民よ。わしが寛大な間に謝りたまえ。さすれば、荷物持ちをさせてやろう」
「いえ、自分より弱い人の下で雑用をするのはごめんですので」
「な、な、な、なんと無礼な。下民、名を名乗れ。一家全員を奴隷堕ちにしてやる」

 静かながらも飛び交っていた勧誘の声が消えた。そして、ほぼ全員が別の出入り口へとそろりそろりと近いて行く。ギルド職員も書類をその場に置き、ギルドマスターの部屋に近いていく。

「それは、自分の家への戦線布告ですか」
「なんだ、騎士上がりの家か? それなら数の暴力を教えてやろう。奴隷堕ちはその後だ」

 変に苛立っていた為か、勝手に口走ってしまう。

「SSランク冒険者、ルルシア・レビュート。レビュー家次男。数の暴力とは違う、本当の暴力というものを教えてあげましょう」

 すると、モブは目を見開き、あわあわしだす。そして、必死に声ひねり出す。

「おい、やってしまえ。いくらレビュートでも相手はガキ。生きて帰すな。こいつが生きればわしの首が飛ぶのだぞ」

 その声を合図に、冒険者は出入り口へ、ギルド職員はギルドマスターの部屋に我先にと走り込む。

 ワンテンポ遅れて右側な騎士が硬直から脱し、剣を振りかぶる。
 戦いの中でのワンテンポは大きく、振りかぶりる前に俺は刀を抜刀し、そのまま剣の鍔から先を斬りとばす。
 そして、刀を抜いた勢いがなくなる前に、左足を前に出し左足を軸に、未だ硬直から脱していない左側の騎士の手首に後ろ回し蹴りを放ち剣を手放させる。
 蹴り終えた足をモブの横に踏み込む様に下ろし、鼻先スレスレに刀を振り下ろしながら床に刺す。
 その間に、モブの背後で連携を取ろうとしている冒険者のリーダー格の男の横腹に、踏み込む様に下ろした右足を軸に後ろ回し蹴り。リーダー格を左に居たやつの方に蹴飛ばす。
 リーダー格とぶつかりよろめく左の奴は後回しにして、右の奴に狙いをつける。
 リーダー格を蹴飛ばしきる前に軽く足で押し、左足を右の奴のすぐ横におろし、横からくる形ではなく正面からくる形の回し蹴りを放つ。この時につま先を立てて、喉を刺す様に蹴り込む。
 復帰してきた左側の奴が殴りかかってくるので、未だに刀にびびって硬直しているモブの襟首を掴み、左の奴の拳の盾にする。拳は綺麗にモブの右頰に炸裂し、モブは気絶する。
 戸惑う左の奴の目の前に、左手を横向きにし突き出し視線を集めるのと視界を遮るのを同時に行う。そして、作った死角から脇腹にフックを叩き込み床に膝をつかせる。
 残った左の騎士に左手で掴んだ刀を突き付ける。

「こ、降参だ。その奴隷はやるから、見逃してくれ」
「.......他は連れて帰れ」
「は、はい」

 剣を斬り飛ばされた騎士と2人で、冒険者とモブを連れて、こちらの戦いに視線が釘付けの出入り口から出れなかった冒険者でごった返しの出入り口とは別の、俺が出ようとしていた出入り口から逃げる様に去っていく。
 その場には、刀を納刀するルルシアと唖然とする少女奴隷が残った。

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