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第三の街ーヨルムンロート
坑道の中を10分くらい歩いていると、外の光が見え始めた。私は嬉しくなってその光に向かって走った。いくら幻想的な光景でも、ずっと同じ景色だと見ていて飽きてしまってちょっと辛くなっていたのだ。
「う、め、目がぁぁ!」
空を見上げて背伸びしたら、数時間ぶりに外に出て浴びた太陽の眩しい輝きに当てられ、私は思わず目を瞑った。坑道の中はほとんど暗闇で、淡い光が坑道の中を照らしているだけだったので、強い光に目が慣れていなかった。思わぬこうげき受けて、目を抑えて蹲った。目を抑えながらちょっと恥ずかしいセリフを言ってしまい、辺りに人の気配がなくて助かったと思った。少ししたら目が慣れてきたため歩き出そうとした瞬間、山の反対側の方から禍々しい気配を感じ取り、思わず振り向いた。
(なんなの、この禍々しい気配は!?)
「……」
すぐに、光の粒子が空に流れていく光景と共にその気配は消え去ったが、とても嫌な予感がしてならない。一刻も早くこの場から去りたくて、私は歩みを進めた。少し歩いたところでもう一度振り返り、何も起きないことを確認すると安堵の息を漏らした。
ウルバ鉱山から下りた先は森になっていた。
ただの森ではなく、ゴツゴツした岩の上から木が直接生えている変わった岩森だった。こんなところにどうして森が?と思っていると、下にある岩が湿っていることに気づいた。よく見ると、あちこちある岩の罅割れから水がしみ出してきており、その水分で成長しているようだ。どこかに大きな水源があるのだろう。
出現するモンスターはロックウルフやロックモンキーなど、岩石系のモンスターが主だった。それらのモンスターを素早さに長けた【《獣人化》】で素早く倒しながら岩森を進んでいった。
岩森を抜けると、ようやく街の外門が見えてきた。
第三の街ーヨルムンロートーは水に覆われた街であり、建物は水に沈まないように脚を高くした作りとなっている、所謂水の都だった。ずっと目の先には、大きな噴水から水が大量に吹き出している光景が見える。
「おい、そこのお嬢さん。500Gかかるが舟は必要か?」
初めて見る街の風景を眺めていたら、不意に声を掛けられた。声の源の方に視線を向けてみると、舟に乗ったおじさんがいた。なんで舟?と思い、改めて街を見渡した。陸路は殆どなく、水路がこの街の主な移動手段らしい。向こうまでいく道がないので舟での移動しかないようだ。
(確かにこの街を移動するなら渡し舟は必要よね)
流石に泳いで移動するにもいかないし、泳いで移動するのはかなり恥ずかしいし無理がある。そのために渡し舟があるんだから。
私はお金を払って舟に乗り込んだ。
「お願いします」
「よっしゃ、まかせとけ!」
おじさんは威勢の良い掛け声とともにオールを漕ぎ始めると、舟は進み始めた。この街は水に囲まれているだけあって魚が豊富なようだ。街の様子を見ると様々な魚を売っているのが見える。この街の魚料理を食べてみたいなと思って舟に揺られていると、オールを漕ぎ続けているおじさんから声を掛けられた。
「嬢ちゃんは知ってるか?この街のヨルムンロートって名前なんだが、その名前の由来はこの街で祀っている神獣様の名前から取ったものなんだぜ。他の街はどうだか知らんが、この街はそういう風になっているんだ。神獣様のおかげでこの豊かな資源があるんだぜ」
(え!?そうだったんだ…知らなかったな。第一の街の名前って確かファーロンだったよね。第二の街はフェンハイル…。なるほど、ファフニールとフェンリルから取ってたのね。…となるとこの街の名前の由来の神獣は何だろう。ヨルムンロートだから…ん~、わからない!)
「よし、嬢ちゃん着いたぜ。またよろしくな~」
「あ、はい。ありがとうございました!」
考えているうちに向こう岸へ着いたようなので、漕手に礼の述べて舟から下りた。舟の上から眺めていた様子とは違い、舟から下りたここは職人街のようだ。あちこちから金属を叩く音などが聞こえてくる。
私はふと、腰に下げている刀を触った。
(そういえば、獣人化が出来るようになってからこの刀を使ってなかったけど、攻撃の面では【《赤熊の爪》】を纏わせた刀の方が強いんだよね。)
【《獣人化》】のスピードタイプ型か【《獣人化》】のパワータイプ型か。最近刀を使ってなかったが考えてみたら色々使い方はあると考え、刀を新調しようかと思った。が、刀を買うには今の所持金だと心もとない。素材を売って得た1万3千Gしかなかった。
(ん~、どうやって稼ごうかなぁ。あ、私にはあれがあるじゃない!)
お金を稼ぐ手段を思いついた私は、早速転送装置のある場所を見つけてファーロンまで転移した。一度フィールドに出て必要な素材を採取して街まで戻り、目的地まで歩いて行った。
(久々にファーロンの来たかも、今日家にいるかなアルバさん)
お土産に渡す薬草を大量に入手した私はポーション作りの師匠であるアルバさんの店に入っていった。
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