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ポーションを売ろう①



「アルバさーん、いますかー?」

私が下級ポーションを作れるようになって一人前と認められて、上級ポーションが必要になったらまた来るようにと言われて、必要もないのにここに来た理由は、ポーションを売りに出そうとしても、そのポーションを作る道具設備がないからだ。ポーションギルドとかそういうものは存在しなかった。ちょっと前に卒業して離れたばかりなのに、すぐに戻って来てしまったので、設備を使わせて貰うお礼としてフィールドに出てポーション作りに必要な薬草を採取して来た。
私は店に入り、店の中をキョロキョロと覗いて見たが、アルバさんの姿が見当たらず二階にいるのかな?と思い、ちょっと大きな声で呼んでみた。すると、二階の方から物音が聞こえて階段を降りる音に変わった。


「なんだい、今日はもう店仕舞いだよ…って、誰かと思ったらマチかい。あんた、今日はもう閉店だって立札見えなかったのかい?」
「あ、そういえば…」


(店に入る時、なんかドアの前に立てかけてあったような気がしなくもない…。うん、気づかなかったふりをしよう!)


「あんた、気づかないふりしようとしてるみたいだけど、そんな風に顔に出してたらバレるに決まってるじゃないさね」
「えっ!噓っ!?」


「はぁ〜」とアルバさんは呆れたように溜息を吐きながらそう告げた。隠してるつもりが顔に出ていたみたいでバレてしまった。


「ところで、マチは今回は何の用で来たんだい?」
「闘技場イベントが終わったので、またポーションを作りたくて。あ、アルバさんこれお土産です」
「ん?ないんだいこの袋は」
「薬草と上薬草の入った袋です。フィールドに出て採取してきました」
「ふーん、お前さんがそんな気の利いたことするなんて何か裏がありそうさねぇ。大方、ポーションの作る設備が無いことに気づいて、この店で作らさせてもらおうとしてここに来たんだろうさね」
「あはは…。当たりです」
「そんなことだろうとは思ったさね。まぁ、これは有難く受け取っておくさね」


(ほとんどバレてた!アルバさん何者!?…ってただの薬師だよね)


「ほら、何をしてるんだい。ポーションを作るんだろう?早く上がってくるさね!」
「あ、はい!今行きます!」


余計なことを考えてるうちに、アルバさんは二階へ上がって行っていたようで、私も急いで後に続いた。


「お前さんの闘技場での活躍見せてもらったよ。ここでポーション作りを学んでいたあたしの弟子が、まさか優勝するとは思わなかったさねぇ」
「私も優勝できるとは思いませんでしたよ」
「それに…」
「ん?」
「いや、何でもないさね。ところでマチ、卒業してからしばらく経つけど、ポーション作りの腕前は衰えてないだろうね?いや、設備もなかったんなら作ること自体が無理か。よし、まずは感が鈍ってないか確かめるさね!」





「……出来ました!どうですか?」


・Dランクポーション:体力を20回復させる。 製作者:マチ


「ふん、腕前が落ちていないならそれでいいさね。んで、売り物用のポーションを作るんだろう?ここのにある釜を使っていいから作りな」
「ありがとうございます!」


大量に採取して来た一部を乾燥させてすり潰した後、水で満たした釜の中へ入れて混ぜた。数時間後、水に溶け始めた薬草の成分を眺めながら再び混ぜる。アルバさんの方をちらっと見てみると、机を前に座っており、手に取った薬草?を観察し、紙に何かを書いていた。


「こっちを見てる暇があるならしっかりと釜の中を見な。失敗しても知らないさね」


ちらっと見ていたことがバレた私は、慌てて釜の中身と向き合った。
更に数時間が経過して、完全に薬草の成分が水に溶け出したと確認した私は、火を消して薬草を取り出して、液体の温度が下がるのを待つ。
丁度良い感じとなったら、試験管状のガラス瓶へ、出来上がったポーション液を注いだ。


「作り終わったようさね」


全て瓶の中へ注ぎ終わって、一息付いていると、アルバさんの方も作業を止めてこちらにやって来た。


「はい、助かりました。ありがとうございます、アルバさん」
「礼なんていいさね。それにマチがポーションを作るならまたすぐにここに来ることは最初っから分かっていたさね」
「えっ?!」
「お前さんが一人前になった時に渡そうと思っていたんだが、渡しそびれたものがあってね。これは、あたしが昔使っていたポーションの設備セットさね」
「頂いてもいいんですか!?」
「構わんさね。元々、もう使うつもりのなかったものさね。それに、このポーション設備はあたしがオーダーメイドで造らせた物だから、ここにしかないのは当たり前さね」


(あぁ、なるほど。だからアルバさんは、私がポーションを作ろうと思ったらここに来るってことを知っていたんだ)


「アルバさんがいらないなら有難く使わせていただきますね!」

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